168日目 魔法造成実習:測定機器の使用法【マギス】
168日目
ギルの背中の皮がべりべりむける。日焼けもしてないのに超不思議。とりあえず試験管にでも入れて保存しておこうっと。
ギルを起こして食堂へ。朝食はスクランブルエッグをチョイス……したのはいいんだけど、ちゃっぴぃが『きゃーっ♪』とか言って半分近く喰ってしまった。毎回毎回、なぜあいつはわざわざ俺の皿からとっていくのだろうか。
しかも、なぜか『きゃ!』って俺を尾っぽでぺしぺし叩き、『あーん』を強要してくる始末。でも、ロザリィちゃんが『めっ!』ってやる姿を見れて超ハッピー。なんでロザリィちゃんは何をしてもあんなにかわいいんだろう。
ギルはいつも通りジャガイモを『うめえうめえ!』と食っていた。ジャガイモの山にローストとグリルが頭を突っ込んで抜けなくなっていたので助けておく。そういや、なんでヒナたちはフィルラドではなくギルの皿から餌をとっていくんだろう?
今日の授業はわが女神ステラ先生による魔法造成実習。『ちゃんと全員いるかなっ?』って杖をコンコンしながら出席を取る姿がマジキュート。先生に出会えてよかったと思う瞬間だ。
内容は寸法測定について。一応、この授業は魔道具や大がかりな儀式に使う魔法陣などの陣造をメインにやっていくわけだけど、そこには完成品のステータスを確認する測定の工程が入ってくる。
当然ながら、測定は誰がやっても同じ結果が返ってこないといけない。だから、測定器の原理や構造を理解して、測定のテクニックと実力を付けましょうって話だった。俺たちはまだ陣造へのスタートラインにすら立っていないわけだ。
で、その測定機器として使うのがマギスっていうやつ。これ、魔深を測るための道具で割と手軽に扱える。魔系ならこれ使えないとモグリだって言われてもしょうがないレベル。演算魔法触媒のほうがよく使うけど。
使い方はいたって簡単。魔法陣などの測定対象にあてて、こう、ピシッとぴったり主尺と副尺の目盛りが合うところの数値を読み取るだけ。仕組みそのものは割と単純で、測定のしやすさの割に分解能(精度)も高めなのが特徴。
『さっそくみんなでやってみよう!』ってステラ先生が基準となる三円魔法陣をいくつも展開したので、みんなしてマギスをもって測定に入る。
が、これがなかなか難しい。まず、マギスはどんな形のものでも対応できるように目盛りに連動した針がいくつかついてるんだけど、そのどれを使えばいいのかわからない。
で、その針を決めて測定しようとするんだけど、なんかどれも微妙に目盛りがずれている気がしてこれ! って断言できるやつがない。
さらに、同じ場所であるはずなのに何回か測りなおすたびに微妙に違う値がはじき出される。どうなってんの?
『魔深が測れた人は教えてね!』とステラ先生がウィンク(めっちゃかわいかった!)してきたので報告するも、『ちょっと違うかな?』と言われてしまう。つーか、俺、クーラス、アルテアちゃん、パレッタちゃんでみんな数字が違ってた。
『慣れないうちは大変だけど、そのうちみんな当たり前のようにできるようになるよ!』って先生は言ってたけど、結局みんながきちんと測り終えるのにかなりの時間がかかってしまった。初歩の測定でこのザマとか、今後の展開に不安を隠せない。
そうそう、ギルは合格をもらったやつの唇の動きをトレースして正解を当てていた。『ズルはダメだよ?』とやさしく諭すステラ先生に対し、『筋肉が俺を導いてくれたんです!』って超自慢げに答えていた。ホントあいつわけわかんねえな。
あと、『どっちかなぁ。こっちかなぁ……』ってマギスを見て頭を悩ませるロザリィちゃんがめっちゃプリティでした。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。授業後、ステラ先生から『マギスの使い方と注意点、あと今日の授業の感想を自分なりにレポートにまとめて来週提出ね!』と言われてしまったので、ちょっと片づけておこうと思う。製図の課題もあるし、なかなか忙しくなってきた。
筋肉に導かれしものであるギルは今日もスヤスヤとうるさいイビキをかいている。実習室に落ちていたよくわからん試験片の破片を詰めてみた。
毎回思うが、なんでこいつはこうまでされて目覚めないのか。ちょっとうらやましい。




