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164日目 基礎魔法材料学:触媒の構造について

164日目


 何もない……と思ったら俺のローブがクッキー柄になってんだけど。どういうことなの。


 ギルをたたき起こして食堂へ。なんとなくがっつり食べたい気分だったので、カリカリに焼いたベーコンにぷりっぷりのウィンナー、そしてマルゲリータをチョイス。ベーコンの香ばしさもウィンナーのジューシーさもマジ最高。


 ちゃっぴぃがマルゲリータをじっと見ていたので一切れやったら、『きゃーっ!』って喜んで食ってた。が、あの野郎、硬い耳だけ残して俺に押し付けていきやがった。なぜ朝から夢魔のヨダレまみれの耳を喰わねばならんのか。


 もちろん、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを喰っていた。あいつの場合、ジャガイモさえあればあとは何もなくてもいいんだろう。


 今日の授業はシキラ先生の基礎魔法材料学。相変わらず人が多い。


 授業が始まるなり、シキラ先生に『クッキー柄のローブとかオシャレじゃねぇか!』と絡まれる。『なに? パティシエのプライド的なアレ?』と聞かれたので、『僕はパティシエではなくすごい宿屋です』と答えたら、『今度うちの研究室に出張して寝床を整えてくれよ~』と肩をバンバン叩かれた。


 なんでも、泊まりが多すぎて室内がヤバいことになっているらしい。冒険者用の野営具が隅に積まれ、数か月前の携帯食料が床に落ち、死にかけの生徒をクッションにしてその上で寝るやつが後を絶たないとか。場所がないのもそうだけど、魔法材料の試験片のかけらがそこらじゅうに落ちているから、うっかり直に寝ると危険なんだって。


 さて、肝心の内容だけど、今日は触媒の構造についてだった。


 まず、触媒ってのは例外を除きいくらかの魔素から成り立っている。魔素ってのは魔法的要素(魔法も魔法陣も触媒も全部含めたもの)の最小単位であり、これが規則的に配列、結合されることで魔法的要素は魔法的要素として存在することができるのだとか。


 で、たとえ同じ魔素を用いていても、その構造や配列が異なると魔強度やその他特性が変わってきたりする。逆にいうと、構造や配列を組織観察により分析したり、なんらかの分析器にかけることでその状態を調べることができれば、その触媒の強度が判明するってわけだ。


 『この手のミクロな視点での観察は意外と重要で、触媒の破壊のメカニズムはミクロスケールでの現象を用いて説明することができる。大雑把なことだけを知りたいなら触媒反応学の強度計算で十分だけど、現実的にはそれだけじゃ辻褄が合わねぇんだよな。

 難しいようだけどアレだよ。どーせ大して変わらねえだろって帳簿に小金を記入しないでいると、最終決算の時にめっちゃずれ込むだろ? アレと一緒だよ』


 ……ってシキラ先生は言ってた。少額だから帳簿に記入しないって、それ帳簿の意味がない気がする。宿屋の息子的にマジ許せない。


 とりあえず自分なりにまとめると、『魔素やその構造みたいなちっちゃい物事が重要なんだよ!』ってことだろう。まだ具体例がないからか、微妙にわかりづらかった。


 ギルは早々に理解をするのをあきらめデカパイねーちゃんの落書きをしていた。なかなか味のあるいい絵だった。俺ならもうちょっと尻をデカくしてバランスを取るけど。


 そうそう、授業後、シキラ先生に『もしかしたら今度ハゲプリンを受注するかもしれないからよろしく』と言われた。


 最初は打ち上げだけの特別なものだと思ってたらしいんだけど、キイラム経由で俺たちが普段のおやつにハゲプリンを食べていることを知ってしまい、『じゃあ俺たちも作ってもらおうぜ!』って意見が出てきているらしい。


 上級生だし金持ってそうだからふっかけようと思う。宿題の時間とかを割いてやるんだから、これくらいいいよね。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日はロザリィちゃんと全然話せなかった。最近、話せる日とそうでない日とで差が大きすぎる気がする。


 ギルは今日もバカでかい口を開けてイビキをかいている。ちょうど羽虫が飛んできたのでつぶして入れてみた。結構スカスカだけど、もうイビキを止めるのは半ばあきらめているからどうとも思わない。おやすみるく。

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