158日目 発展魔法生物学:概要的なアレ(ドッキリパックンチョ)
158日目
ギルがヒナ臭い。ギル臭いよりかはいいか。
いつも通りに起きて食堂へ。今日は朝から優雅にトロピカルジュースを飲む。いつぞやのロザリィちゃんとのデートを思い出して超いい気分。まさか朝からあんなに幸せな気分になれるとは。
あと、同じようにトロピカルジュースを飲みながら『またデートに行こうねっ!』って微笑んでくれたロザリィちゃんがエクセレントプリティで最高だった。見とれていたら机の下から俺の膝に乗ってきたちゃっぴぃに『きゃーっ♪』ってジュース全部飲み干されたけど。
今日の授業は発展魔法生物学。名前から想像できる通り、担当は前回に引き続きピアナ先生とグレイベル先生。後期もこの二人にあえて超ハッピー。再履の人もいなくて超すっきり。『無事に夏休みを過ごせたいみたいだね!』、『…早めに休み気分を切り替えておけよ』といつも通りな感じで授業が始まった。
今日の授業は発展魔法生物学の概要について。基本的には前期の魔法生物学と一緒なんだけど、より専門的で高度なものについて扱っていくらしい。当然のことながら、植物にしろ生物にしろ危険なものが増え、ちょっと油断しただけで容赦なく保健室送りになるとか。
というか、ぶっちゃけると魔系でしか対処できないような危険生物がほとんどらしい。一応、これまで習った生物は必ずしも魔系じゃなくても対処できそうなやつがほとんどだったけど、これからは魔法的要素がかなり色濃く出てくる生物がほとんどだそうだ。
『これ、脅しじゃなくて本当だから。ちょっとこれ触ってみてくれる?』とピアナ先生がギルの手のひらほどの大きさの黄色い花が咲いた鉢植えを取り出した。『普通の花じゃね?』ってポポルがその花びらに触れると、なんかバクンッ! って花弁が手に食いついた。
周りの女子が悲鳴を上げるも、ポポルは『なんかちょっとぺたぺたする』と問題なさそげ。どうやらピアナ先生のちょっとしたイタズラらしい。そんなところがマジ小悪魔でステキだと思った。
が、ここでグレイベル先生がにやりと笑って『…それ、取れるか?』とつぶやいた。とたんにさっと青くなるポポル。思いっきり引っ張ってもとれない。花弁を千切ろうとしてもだめ。
『で、でも取れないだけで問題ないんですよね!?』と涙目で問うと、『…ああ、三日後くらいには問題なくなる』との回答。ポポルはあからさまにほっとしたけど、『…手、そのものが溶けてなくなるからな』とステキな追撃が。
そこからはもう大変だった。ガチ泣き一歩手前で慌てるポポルを必死で抑え、クラス総がかりでその花(ドッキリパックンチョというらしい。なめてんのかって思った)を引っぺがしにかかる。
火魔法も通じないし、呪は通らないし、おまけに力づくでもダメ。ちゃっぴぃが全力でひっかき、エッグ婦人とヒナたちが全力で突くも傷一つつかない。ポポルが食われたほうの手で連射魔法を使っても、なんか全部吸収されたらしく効果なし。
しょうがないから鉢植えごとぶっ壊したら、なんか根っこが超リアルな人型で気持ち悪かった。ロザリィちゃんが『うぇ……っ』って倒れかけたのでやさしく肩を抱いておいた。柔らかくて超気持ちよかった。もちろん、鉢植えがぶっ壊れてもドッキリパックンチョはポポルの手を離そうとしなかった。
もはやあとは腕一本を捨てるつもりでギルによる力づくを敢行するしかない……と相談していたところで、グレイベル先生がなんかよくわからんフェロモン(?)的なものを吹き付け、ドッキリパックンチョを引っぺがした。
ひっぺがされたドッキリパックンチョ、根っこがうねうねモジモジしていてめっちゃ気持ち悪かった。『…特殊な魔法水に魅惑の魔法要素を含んだものを吹き付けたから、リラックスして離したんだ』とはグレイベル先生の談。リラックスっていうか発情してね?
全部が終わった後、試しにギルに花弁を思いっきり引っ張ってもらったら、ドッキリパックンチョは悲鳴を上げながらずたずたになってしまった。『俺これくらいなら百枚くらい重なってても余裕だし?』ってギルはちょっと自慢気だった。
『やっぱ最初からギルにやらせればよかったか』ってつぶやいたら、『俺の腕をぶっ壊す気か!?』ってポポルにケツビンタされた。解せぬ。
グレイベル先生とピアナ先生はぐちゃぐちゃになったドッキリパックンチョとポージングを決めるギルを見て唖然としてたけど、『こ、こんな風にすっごく危ないのが多いから気を引き締めるように!』って言って授業を締めくくった。
ちなみに、あのドッキリパックンチョは接着剤、ガチな呪の触媒、毒薬、あと欠損再生の秘薬に使えるのだとか。汎用性と効果の高さだけはすごいと思った。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。風呂の時、ポポルが執拗に右手を洗っていたのが印象的。あいつ、見た目通りにビビりだと思う。
筋肉ですべてを解決してしまいそうなギルは今日もうるせえイビキをかいている。いつまでたってもこの騒音にはなれそうにない。
こっそりちょろまかしてきたドッキリパックンチョの花弁(ずたずた)を鼻に詰めておいた。詰めるとき、うっかり鼻毛を触ってしまって超ショック。なんだかんだで今まで触ったことなかったのに。




