157日目 基礎魔法材料学:概要
157日目
ギルに襲われる悪夢を見た。魘されて目覚めたら天井にひっかき傷を発見。新学期早々最悪だ。
ちょっと強めにギルを叩き起し、そのまま食堂へ。記念すべき後期一発目の授業なのでちょっと贅沢にスペシャルサンドなるものを食す。野菜や肉が惜しげもなく使われていてマジデリシャス。途中に挟まっているピクルスのアクセントもいい感じ。
もちろん、ギルはいつものじゃがいもの大皿を『うめえうめえ!』とうまそうに平らげていた。おばちゃんが『最近ジャガイモの大袋を運ぶようになったせいか、腰が痛くてねぇ……』とつぶやいていたので、今度特製の湿布でも送っておこう。
あと、ミーシャちゃんはピクルスが嫌いらしく、ローストに食わせていた。最近、ヒナたちの扱いが全体的にぞんざいになってきている気がする。
で、授業。ワクワクしながらみんなで教室に行ったら、すでに何人も……っていうか、明らかに上級生っぽい人がたくさんいた。それも、ルマルマの全員と同じくらいもいる。
『どうなってんだこれ……?』とつぶやくクーラス。『こんなに人がいるとちょっと恥ずかしいな!』と上を脱いでポージングを決めるギル。新学期早々キレキレだ。
驚くべきその授業は基礎魔法材料学。『よーっす、待たせたなぁ!』とちょっと遅れてシキラ先生がやってきた。が、入ってきた瞬間、『えっ、多くね?』と唖然とする。
『んだよんだよ。なんでこんなにいるんだよ。これじゃサボれねぇじゃん。出席とるの面倒じゃん』と悪戯っぽく笑いながら雑談タイムが始まる。『あんだけ補正効かせたのに再履がこんなにいるんだもんなぁ?』と一番前の席に座っていた上級生に絡みだした。
どうやら、この教室の俺たち以外は全員再履の上級生らしい。いっこ上はともかく、二個うえ、三個うえの人もいるとか。
『毎年言ってるけど、再履に人権はねぇから! 死ぬ気でついて来いよ! 多分死なないから!』の一言で授業が始まった。シキラ先生、出席採るのがめっちゃ早かった。
内容は基礎魔法材料学についての軽い概要的なやつ。魔法材料ってのは触媒になったり魔道具の材料になったり、魔法学的にいろんな用途に扱われ、そして魔系にとってはまさに身近で知っていなきゃモグリだって言われるレベルで重要なものらしい。
魔法材料って一口に言っても生物由来のもの、鉱石などに由来するもの、それら以外の魔法的現象に由来するものなどさまざまな種類がある。さらにその中でも機能材料として扱われるもの、構造材料として扱われるものなど、細かく分類されていくそうだ。
一応、この授業の究極的な目的は各魔法材料の特性と破壊のメカニズムを知ることにあるらしい。『どんな特性があるのか、いつ、どんな風にぶっ壊れるかがわかってなきゃおちおち使ってられねぇからな!』ってシキラ先生は言ってた。
とりあえず、『一応やっとかねぇと学生部がうるせぇからとりあえずノート写しとけ』と言いながら板書してた部分をここに書いておく。
『魔法使いは魔法を開発し、研究することが仕事の一つと言える。また、その魔法、あるいは魔道具を使用するのも広義での魔法使いの役割と言えよう。「こういう目的のため、こういう魔法が作れないか」と提案されれば、材料を選定し、術式の設計を行ってクライアントのオーダーに答えなくてはならない。
しかし、魔法の設計が行えたとしても加工や構築が可能でなければ意味がない。また、コンセプト通りにその性能が発揮でき、十分に使用に耐えられる材料で作らなければならない。
当然のことながら、材料によってその特性は異なる。したがって、魔法の性能は材料によって限界が決まるといっても過言ではない。そのため、用途ごとに沿った魔法材料の選定、すなわち、設計段階から魔法材料の特性を理解した「正しい材料選択」は非常に重要であるといえる』
ここでいう魔法ってのは広義での魔法で、普通の魔法や魔法陣など、魔法要素が絡んでいるもの全部を指しているらしい。『どーせ大して意味ないから深く考えなくてよろしい』ってシキラ先生は言ってた。要は、『魔法材料ってすっごく大事だよ!』ということが分かればいいそうな。つかみだしこんなもんか。
そうそう、『あまりにも単位落とすやつが多すぎて授業ちゃんとやってないんじゃないか疑惑があるんだよ。落とすやつに限ってノートとらねえバカタレが多くてよぉ……。それ俺悪く無くね?』ってシキラ先生がグチグチつぶやいてた。先生も大変なんだと実感する。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。単位取得率がヤバいって聞いた割にはそんな難しくなさそう。板書こそ教科書丸写しだったけど、雑談も多くていい感じの授業だったし、『最初はポーズとしてやっただけで、次回から口頭メインでポイントだけ書いていくスタイルになる』ってぶっちゃけてくれた。いい意味でも悪い意味でも人間味があると思った。
ギルは今日もアホ面晒してイビキをかいている。今日はロザリィちゃんと全然話せなくて超悲しい。
なんとなくヒナたちに与える用の餌を詰めてみた。おやすみんと。




