155日目 ナイトメア・チェア
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155日目
ギルの眉毛がスネ毛になっている。何を言ってるかわからないだろうが、俺にもわからない。
いつも通りにギルを起こして食堂へ。すでに朝食のジャムパンをほおばっていたミーシャちゃんが『なんかいつもとちがう……の?』とギルの顔を見て首をかしげていた。もちろん、ギルはいつも通りに『うめえうめえ!』とジャガイモを貪っていた。
さて、なんだかんだで今日は事実上の夏休み最終日。明日は授業こそないけどオリエンテーションでガイダンス的なことがある。つまり、ゆったりするのは今日が最後ってこと。
当然バイトに行く気にもならなかったため、午前中は栽培スペースの水やりと採取だけ済ませてダラダラと過ごす。『暇なら一緒に筋トレやろうぜ!』とギルに誘われたけど丁重に断っておいた。
だってあいつ、『最近ようやく脳筋を鍛える方法が分かったぜ!』とか言いながらジャガイモの大袋を頭の上に乗っけてたんだもん。鍛えるべきなのはお前の脳みその中身のほうだと何度つっこみたくなったことか。
午後、マイフェイバリットな俺専用ロッキングチェアーでゆらゆらしていたところ、ジオルドに『……約束は約束だからな』となんか手招きされた。不審に思いつつも奴のそばまで近寄ると、なんと、いつぞや約束した『ちょうど二人が仲良く座れるサイズ』のロッキングチェアがそこにあった。
どうやら、ジオルドがこの夏休みをかけて作っていたのはこいつらしい。カミシノとペダッコが使われているし、発色もなかなかエレガント。どことなくクラシカルでおしゃれなデザインで、かなりガチな彫刻が模様としていたるところにある。
なによりすごいのはそのサイズ。さっそくロザリィちゃんを呼び、一緒に座ってみる。
『ちょっときつい……かも?』ってロザリィちゃんは俺と密着する。すげえ。ぎゅうぎゅうすぎないし、それでいて十分に接触しているっていう絶妙なぴったり具合。ジオルドの職人芸に惜しみない拍手を送りたくなった。
二人で仲良く揺られていたら、ちゃっぴぃが『きゅ!』とか言って間に入り込もうとよじ登ってきた。が、ぎゅうぎゅうに詰めてもさすがに無理。途端に拗ねだしたのでロザリィちゃんがお膝にのせて頭を撫でていた。そんな様子がマジプリティだった。
なお、この『ちょうど二人が仲良く座れるサイズ』のロッキングチェアはなぜか盛大に舌打ちをしまくるクラスメイト達によって『夢魔さえ拗ねるバカップルの怨念てんこ盛りデラックス椅子~夏の終わりの悪夢~』と名付けられていた。長いから夢魔椅子て……いや、悪夢椅子にしておこう。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。一応明日から後期だから今日はこの辺にしておこう。あと、悪夢椅子はギルとミーシャちゃんではギルがデカすぎてぎりぎりサイズが合わなかったけど、ギルがミーシャちゃんを膝に乗っけることで事なきを得た。
ギルは『筋トレには使えそうにねえなぁ……』って残念そうだったけど、ミーシャちゃんは幸せそうだったから別にいだろう。今度、ぜひともステラ先生を誘って座りたい。
ギルは今日も耳障りなイビキをたててスヤスヤしている。とりあえず栽培スペースでとってきたリンゴの枝を詰めておいた。
案外長いようで短い夏休みだった。終わるのも意外とあっけない……って思ったけど、後半に怒涛のイベントラッシュがあった気がする。密度の濃さが違うのだろう。
ロザリィちゃんとのキスとか、一生の思い出になりそうなことがいっぱいあった。この思い出を胸にまた明日も頑張っていこうと思う。おやすみ。




