表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/368

150日目 可愛い──へ (みんなで虫取り)

150日目


 いきなりですみませんが、私たちはもう出発します。ひさしぶりに──のかわいい寝顔を見られてうれしかったです。小さいころと変わらない顔になんだか心が温かくなりました。


 そうそう、実は、私たちは日記の確認をマデラさんから頼まれていました。──なりにがんばっているのがわかりましたが、不健全すぎるきらいがあるのはちょっとどうかと思います。少しは自制するようにしようね。


 男の子だからしょうがないとはいえ、あんまりオープンだとロザリィちゃんに嫌われちゃうよ?


 それと、──が好きなお菓子をあっちから取り寄せておいたので、個人ボックスの中にこっそり入れておきました。おこづかいも入れておいたので、無駄遣いしないようにね。あと、おこづかいとお菓子のことはみんなには内緒にするように。


 まだまだ書きたいことはありますが、時間もないのでこのへんにしておきます。次に会えるのは春季長期休暇かな? 年末年始にも一度会いたいけど……。魔系は忙しいし、寂しいけど我慢することにします。


 次あった時は、また昔みたいに一緒に踊ろうね! 寝るときはちゃんと毛布をかけておなかを冷やさないように! ……あと、甘えんぼで寂しがりな──のために『また会おうねのキス』もしておいたからね! 【ミニリカ】




 かわいい子がいっぱいいてめっちゃ楽しかったぜ! ロザリィちゃんは無理でも、ステラ先生とか紹介しろよな! あと久しぶりに食ったおまえのフライドポテト、めっちゃうまかった! マデラさんのは塩の量が正確過ぎるんだよな。豪快に塩振った男のフライドポテトはお前マジで世界一だと俺は思うぜ。


 あ、それとも俺の文章、よく見えてなかったりする? 俺思うんだけど、普段スカしてるくせに、お前意外とこういうのに弱いよな。ミニリカの文章とか、ドンピシャでヤバいんじゃね?


 あと、ミニリカってなんで↑みたいに文章だと雰囲気こんなに変わるんだろうな? いつもみたいなババア口調だと恥ずかしいのか? それに、内緒にするも何もあいつが一番に書いたんだから俺らにモロバレじゃね? とうとうあのババア、ボケがはzjkdasiouda 【テッド】(本文の汚い筆跡とは違い、名前の部分だけ綺麗な整った筆跡でした。最後の文字列は解読不明なため適当です)




 あのピーピー泣いてことあるごとに漏らしていたお前が、こんなに成長しているとは正直思わなかった。まだ十年は負けないつもりだが、お前のこれからの努力次第では数年縮められそうで、うれしくもあり、怖くもある。


 言い訳するようだが、あの氷の蛇に実力で負けていたわけではない。ちょっと油断しただけだ。ナターシャも『地形が変わることを考えなければ普通に倒せていた』と言っていた。俺も周りの被害を考えなければあの程度八つ裂きにして丸焼きにして食っていた。


 今度帰るときはギルも連れて来い。あいつは魔系よりも武系のほうがあっている。テッドも誘ってのんびりと釣りでもしよう。今度こそあの日逃したヌシを釣り上げてやろうな。


 ブラジャーはお前のタンスに突っ込んでおいた。好きに使え。あと、ステラ先生の連絡先をこっそり教えてくれるとうれしい。 【ヴァルヴァレッド】




 ヴァルはお姉ちゃんがぶっ飛ばしておいた。カフェオレ余ったからやる。ハゲプリンをもっとよこせ。 【ナターシャ】










 あのばかやろうたち、かってにひとのにっきよみやがって。かってにひとのにっきにかきこみやがって。しかもあいさつせずにかってにかえりやがって。いかりでまえがよくみえないっていう。


 なんだよ、ミニリカのやつ。いつまでもこどもあつかいしやがって。しかもぜんたいてきにこっぱずかしいことばかりかきやがって。


 『またあおうねのきす』とかなんねんまえのはなしだよ。おかしこんなにくいきれないっての。おこづかいこんなにつかえないっての。なんでむかしはおねだりしてもくれなかったのに、いまになってくれるんだよ。おのぞみどおり、『やめてくれ!』っていうまでいっしょにおどりつづけてやる。


 テッドはなんでくうきがよめないんだよ。ちょっとはくうきよんでかんどうするひとことくらいかけよ。なんかおれがばからしいじゃないか。あと、おれのぽてとがおいしいのはあたりまえだよ。こんどあったらはちきれるまでくわせてやる。


 おっさんもおっさんだ。もらしたのなんてなんねんもまえのはなしじゃないか。おれだってせいちょうしてるんだよ。こどもあつかいしやがって。いいわけするおっさんのほうがよっぽどこどもじゃないか。しょうがないから、ぬしでもなんでもつきあってやるよ。


 ナターシャはやっぱりおおばかやろうだ。さいごのひとことがあれだけってそれはねえよ。あと、おれが『おねえちゃん』ってよんでたのなんてちいさいころだけじゃないかよ。こちとらそんなのはずかしくておもいだしたくないんだよ。


 あと、やっぱりこのかふぇおれナターシャオリジナルじゃないかよ。なんでおれがあいつのかふぇおれだいすきだったのおぼえてるんだよ。なんでちゃんとこおりがおほしさまがたになってるんだよ。いっつも『めんどくさいからやだ』っていってたじゃねーかよ。


 しかも、おまえも『またあおうねのきす』してるじゃねえかよ。おまえのりっぷくりーむにおいがとくちょうてきだからすぐわかるんだよ。いいかげんしろよちじょのくせに。はげぷりんおくりたくなっちゃうじゃないかよ。



(実際はいつもと全然違う震える筆記体で書かれていました。雰囲気を表現するためにひらがなで書いています。また、書き手の彼の名誉のためにあえて明言はしませんが、このページにだけ滴を落としたかのような円形の小さなシミがいくつかありました)




 やっべ、今更ながら俺超恥ずかしいこと書いてない? まぁ、ほかに見る人いないし別にいいか。


 朝起きたら俺の机の上に日記帳が開いていた。なぜかカフェオレ(アイス)もある。枕付近には超高次魔法要素の残滓が。いつになく快適な目覚め。


 ちょっと日記を読みつつ、カフェオレをぼうっと飲んでいたらギルが起きだしたので、慌てて顔を洗って食堂へ。ギルの野郎、こういうときだけ『ホームシックは誰でもあるもんだぜ!』とかわけのわからない気配りをしてくるから困る。


 朝食はあまり食べる気になれなかったものの、普通にスクランブルエッグをチョイス。なんか、みんなして『家族と別れるのは寂しいよなぁ……』とかしみじみと言ってきやがった。ホントなんだというのだろう。


 あと、ロザリィちゃんが『私たちも家族のつもりなんだからねっ!』って後ろからぎゅってしてくれて泣きそうになった。あの子が聖母過ぎて俺どうにかしちゃいそう。


 なんかよくわからん感動の中でもやっぱりギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを貪っていた。こういうのを日常っていうんだろう。異常な光景のはずなのに安心する自分が怖い。


 さて、今日は虫取りに行くって決めてあったので、朝食後は学生部で虫取り網を借りてみんなで森に繰り出した。パレッタちゃんの喜びようがすさまじかったことをここに記しておく。


 魔力あふれる土地だからか、それとも単純に季節がよかったのか、いろんな種類の虫がいっぱいいたのが印象的。マジックバタフライが数匹飛んでいたのはもちろん、ニジイロナナホシやゴールデンアントといった鑑賞用のもの、さらにはインビジブルスタッグやライトニングホッパーといったデンジャラス&クールなイカしてるやつらまで。


 当然のことながら、こいつら全部魔法生物。俺の中の内なる悪魔が早くすり潰せとささやいていた。


 ポポルがその手の小ささを活かして木の隙間にいたインビジブルスタッグを数匹。クーラスが『ブローチのデザイン用にほしかったんだ』とウキウキ顔でニジイロナナホシを。ジオルドが『採ったはいいが使い方がわからん』とライトニングホッパーを。フィルラドが『たまには役に立てよ?』と小人を召還しまくってゴールデンアントを捕まえていた。


 ギル? あいつはその筋肉を巧みに使ってマジックバタフライを乱獲してたよ。『おまえがカレル、おまえがシュナイダー、おまえがカレルで、おまえがリチャード。で、おまえが……よろしくな、ヒョードル!』って一匹一匹に名前付けてたけど、名前がダブっていることになぜ気づかないのか。


 カレルが二匹はいるし、ルマルマ寮にはリチャードが少なくとも三匹はいたはずだ。しかも、こいつら全部メスじゃね?


 なお、アルテアちゃんとミーシャちゃんは虫取りを男子に任せ、顔面蒼白でフラフラと歩いている(俺にぎゅってしがみついていた! めっちゃぬくやわこかった!)虫の苦手なロザリィちゃんを介護していた。


 途中、ちゃっぴぃが超自慢げに『きゃきゃ!』って地面から穿り出したカッチュウムカデをロザリィちゃんに渡そうとしたんだけど、ロザリィちゃんは『ひゃぁぁぁぁぁんっ!』って涙を流しながら俺に抱き付いてしまい、ちゃっぴぃはすごく悲しそうな顔をしていた。


 しょうがないから俺が代わりに『よーし、せっかくだから俺本気出して接着剤にしちゃうぞー!』って頭を撫でてやったら、『ふーッ!』って手をかまれた。あいつ、マジで一回躾をちゃんとしたほうが良いかもしれない。接着剤の良さがわからないとかどうなってんだ。


 なお、ちゃっぴぃはその後カッチュウムカデをロザリィちゃんの前で『きゅーっ♪』っとバリバリむさぼりだした。超うまそう。もちろんロザリィちゃんは気絶寸前。マジで顔が固まったままふらって倒れかけてた。


 が、なんともすごいことに、ロザリィちゃんは冷や汗だらだら&目の焦点があってない状態なのに、『そそそ、そんな変なもの食べちゃダメですっ!』ってさっきまでカッチュウムカデだったヌルグチョグロテスクなそれを取り上げ、ちゃっぴぃの口を指で拭ってあげていた。


 虫取りに夢中になってたパレッタちゃんさえ、びっくりしてロザリィちゃんを見ていた。黄緑色の内臓とかがぐちゃぐちゃになってるのを素手で触るって、相当勇気を出したんだろう。ロザリィちゃんの健気さに惚れ直す。そんなところもマジプリティ。


 『明日は雨が降るな……』、『雨で済めばいいほうなの。今日は杖を握って寝るべきなの』、『ヴィヴィディナにあの葛藤を捧げたかった!』と女子三人。女子の中でのロザリィちゃんってどうなってんだろう?


 最終的にかなりの量の虫が採れたので(大半はパレッタちゃん。『ヴィヴィディナに捧げなきゃ♪』とのこと)、種別ごとに分けて虫かごにぶち込んでおいた。


 クーラスたちは『観賞用だからな! こいつらは観賞用だからな!』ってやたらうるさかったけど、魔法生物だしいずれ死ぬんだから活きのいいうちにすり潰して接着剤にしておこうと思う。


 こんなレアものの虫をまとめて接着剤にできるなんてまたとないチャンス。肥料にしてもいいかもしれない。すり潰す組み合わせを試すってのも面白そう。


 やべえ、今からワクワクが止まらない。なんか手が疼くんだけど。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。森でたくさん見つけたファットウォームはお土産としてエッグ婦人と六匹のヒナたちに与えておいた。あいつら、ケツをふりふりして喜んで食べてた。ちゃっぴぃといい関係を築いてくれるといいなぁ。


 今日もギルは耳障りな大きなイビキをかいている。インビジブルスタッグのもげた角(正確には顎かな?)を鼻に詰めた。パッと見なんも詰まってないように見えてちょっとスリルがある。度胸試しによさそう。おやすみっくすじゅーす。

20150902 誤字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ