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144日目 夏季特別講座:ナターシャ 複合魔法の先端とその可能性

144日目


 俺のローブが埃にまみれていた。なにもかもアエルノチュッチュのせいだ。


 ギルを起こして食堂へ……行く前にナターシャのところへ。よく考えてみれば今日はあいつの授業。何をしでかすかわかったもんじゃなく、足取りがすごく重い。


 すでにアルテアちゃんは起きていて、『例のブツはそこに置いてあると』と廊下の端っこにある異臭のするバケツを指さした。なんか、今朝方早くにナターシャが『これ外に出しといてくれる?』と渡してきたそうだ。


 その肝心のナターシャだけど、食堂にもいなかった。不安に思いつつもミックスジュースを飲む。フレッシュでトロピカルなフレーバーがマジデリシャス。贅沢にいろんな果物を使っているのだろう。


 ギルはジャガイモを握り潰し、ジュースに溶いて『うめえうめえ!』と飲んでいた。ある意味効率的な摂取方法なのかもしれない。


 で、授業。ナターシャのやつ、朝から資料の整理をしていたらしく、なんか両手にいっぱい触媒だの書類だのをもってやってきた。痴女染みた格好をしているからか、本性を知らない男子生徒どもが手伝おうと鼻の下を伸ばしながら群がっていたのが印象的。


 内容は『複合魔法の先端とその可能性について』ってやつ。いわゆる二種類上の魔法要素を使用した魔法(火&風とか、水&光とか)の最先端の研究を披露するとともに、どれだけの発展性があるのか議論しましょうってかんじのやつ。


 ひどく恐ろしいことに、この講義内容も全部ナターシャが考えたらしい。あいつ、完全にぶりっこかまし、普段の痴態なぞみじんも感じさせず、まるで本当にできる魔法使いのおねーさんかのように講義をはじめやがった。


 ある程度理論の話をした後は、『じゃあ、実際やってみよっか♪』とか言って杖をふるった。水の中なのに燃える炎、あたりを暗く照らす光……といった普通じゃまずお目にかかれない魔法を事もなげに披露する。


 火&風みたいな、割と相性のいい奴ならそんな難しくないけど、水&炎とか、光&闇とか、そういう反属性のってめちゃくちゃ難しい……というか、できる人なんて数えるほどしかいない。悔しいけれど、魔法に関してはナターシャは天才的だ。


 その後、ミニリカを意識してか、ナターシャは反魔法要素のみで構築された魔法体をランプちっくに加工し(裂造の応用っぽい。流形魔塵がめっちゃきれいだった)、幻想的な空間を作り上げる。


 『これらの魔法要素をしかるべき場所に設置し、互いの反発力と共鳴性をうまく利用することで通常では想定できない高密度、高次元魔法要素の結界が構築できて、大きな魔法をバカスカ撃てるぞー!』とか言ってポーズを決めてたけど、それ、俺がこないだやった《レプリカ:浮気デストロイ》に他ならない。


 結局、触れると凍り付く炎や形を作ることができる風、流体として扱える土(ぶっちゃけただの泥)なんかをみんなで作って遊んで終了。トラブルが起こるどころか、普通に楽しい授業だった。


 ギルに至っては、ナターシャを見てしばらくぶりのトロールみたいな笑顔をしていてたいそう気持ち悪かった。あいつ、あれでけっこうムッツリだと思う。ミーシャちゃんが手の甲を思いっきり噛んでもまるで気づいていなかったし。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、弾む水をぷにぷにして遊ぶロザリィちゃんに見とれてしまった。俺もロザリィちゃんのほっぺをぷにぷにしたい。


 ギルは相変わらず耳障りなイビキをかいている。が、これでようやく夏季特別講座が終わったのだと思うと気分が軽い。このまま何事もなく帰ってほしいものだ。


 とりあえず、ギルの鼻には燃え広がる暗黒を凝固させたものを詰め込んだ。消音効果は結構いい感じ。月夜に似合うなかなかのサイレント。おやすみなさい。

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