135日目 裏切りと拉致
135日目
ギルのうなじがセクシーに。どう反応したらいいのかわからない。
ちょっと早い時間だったものの、ギルをたたき起こして食堂へ。すでに早起きが習慣づいたポポルとフィルラド、そして元から生活習慣の正しいジオルドとクーラスがサンドイッチを食べながら話してた。
いつもならこの時間にいるはずのアルテアちゃんもロザリィちゃんもいない。どうやら思った以上に熟睡しているらしい。宿屋の息子として超うれしい。
で、話に混ぜてもらおうとやつらの机に座ったところ、椅子に仕込まれていたらしきクーラスの罠魔法が発動し動けなくなった。さすがにビビる。
しかも『黙ってついてきてもらうぞ!』とジオルドが具現魔法で戒めの茨鎖を具現して俺を拘束してきやがった。さらに、ポポルが『スペシャルジャガイモやるから──を担げ!』とギルに命令する。
あの野郎、『うめえうめえ!』なんて言いながら俺を盗賊担ぎしやがった。
わけもわからず外に連れ出される。すでに馬車が用意されており、フィルラドがマイティホースを召還して手綱を握る。ジオルドたちはそのまま荷台に乗り込み、俺も拉致同然に乗せられた。
奴らの無駄に巧みなコンビネーションと、あっさり裏切って向こうについたギルに驚きを隠せない。
そのまま馬車は出発。どんどん人気のないほうへと向かっていく。お婿に行けなくなるのではないかと、尻穴を必死に死守した。
いつのまにかついてきていたエッグ夫人と六匹のヒナは、俺が動けないことをいいことに俺の尻を執拗につつきまくっていた。いつか丸焼きにしてやろうと思う。
俺の不安は的中し、やつらは森のど真ん中で俺を放り出して拘束を解いた。不敵な笑みを浮かべる四人。ギルは無駄にセクシーなうなじを晒しながらじらすようにポージングを決めている。本格的に貞操の危機を感じた。
もはやこれまでかと思ったら、『材木とるのを手伝え』とのこぎりを渡された。どうやら、ジオルドは材木伐採のための人手がほしかったらしい。『普通に誘ったんじゃついてきてくれそうにないからな』と腹を抱えて笑われる。
とりあえず、驚かせた罰として纏魔のケツビンタを食らわせておいた。あと、捨てておこうともってきておいたギルの使用済み靴下(洗濯出し忘れ)を顔面にたたきつけておいた。どうなろうと俺のしったこっちゃない。
ともあれ、仕事をしないと帰れそうにないのでさっさとやることに。狙っているのはペダッコ材木ってやつで、ジオルド曰く、
『物理的、魔法的強度に優れ、乾燥後の劣化や変形もほとんどない。朱色にも似た鮮やかな発色が特徴的で、魔素雰囲気の接触がなければ目立った退色もない。一度乾燥させてさえしまえば安定性も抜群で腐食、摩耗も考えなくていい。虫食いだけはノーセンキュー(ただし表面処理したものを除く)』
……そんな特性を持った高級材木だそうだ。
で、『どこにそいつはあるのか?』とのこぎりをコンコン(ステラ先生リスペクト)しながらジオルドに聞いたら、『目の前にあるじゃないか』とオーガ三人分くらいの長さの大木を指さされる。めっちゃ大樹でビビる。
どうやらジオルドは数日かけてこいつのありかを見つけたらしい。ほかにも生えている場所はあったらしいけど、ここまで立派なのはなかったそうだ。
『人手がほしいっていっただろ?』とジオルドはのこぎりを構えて気合を入れた。『こういうのは苦手なんだがな』とクーラスも戦闘態勢に。『みんなでかかればなんとかなるだろ』とフィルラド。『ぶっちゃけ俺意味なくね?』と木登りを始めるポポル。
もちろん、俺も地獄のまき割りで鍛えたのこぎりテクニックを見せつけようと腕をまくる。が、次の瞬間にギルが『すげえすげえ!』とか言ってペダッコを根元から蹴り折ってしまった。
丈夫なはずの、伐採するのに半日はかかりそうなペダッコが、綺麗な裂界破面を示していた。打ち付けた足をゆっくりとおろしてポーズを決めるギル。お仕事これでオシマイ。
微妙な沈黙に包まれる中、無駄に昂ぶった気持ちを抑えるために枝払いに精を出す。見事なペダッコを入手することができた。
帰りはマイティホースにペダッコを引っ張らせた。遊び足りないギルが『軽い軽い!』とか言いながらペダッコを後ろから押してたけど、だれも突っ込もうともしなかった。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ペダッコはあまりにも大きかったため、簡易の天幕を張って外に置いてある。近いうちにちゃんとした雨よけを作り、乾燥してから切り出しに入るってジオルドが言ってた。
なんか微妙にギルのイビキが不規則だ。あれだけやったのにまだ遊び足りないんだろう。ローブのフードに名前もわからん虫の死骸が入っていたのでギルの鼻に詰め込んでおいた。明日はロザリィちゃんとたくさんおしゃべりできますように。
※明日はみんな大好き燃えるゴミの日。魔法廃棄物はまた来週だゾ☆




