132日目 愛情たっぷりロザリィちゃんドーナツ
132日目
ギルが俺を抱き枕にしていた。もう何も考えたくない。
最悪な気分のまま食堂へ。全身が痛く、なんとなくギル臭さが漂ってくる気がする。
食欲がわかなかったので、朝はさわやかハーブティーをチョイス。何かを察したクーラスが『秘密のブレンドにしてやるから、な?』って超優しい笑顔でとっておきのを作ってくれた。俺が女だったらずきゅーんってなっていたかもしれない。
なお、ギルは今日も元気に『うめえうめえ!』ってジャガイモを食ってた。あと、『今日は飛び切りよく眠れたぜ! やっぱ親友のベッドメイキングはジャガイモレベルだな!』とかぬかしやがっていた。意味が分からねえ。
おまけに、ミーシャちゃんが鼻をすんすんさせて『この年で添い寝してもらうのはちょっとどうかと思うの』なんて言ったせいでポポル、フィルラド、そしてたまたま通りがかったティキータ・ティキータのゼクトにゲラゲラ笑われた。
あとでちょっとガチめな呪いをかけておこうと思う。幸いにも、ルンルンの素材をはじめとした都合のいい触媒がたくさんあるし。
全体的にやる気がでなかったので、今日はゆっくりすることに。幸いにも子守りと魔道具のバイトで十分な収入があったから金銭的には問題なし……っていうか、先週よりも稼いでいたりする。
で、何をしようかとロッキングチェアでゆらゆらしてたらロザリィちゃんとピアナ先生がやってきた。プリティ&エンジェルな二人の登場に憂鬱な気分が一気に吹っ飛んだ。夏ルックの二人はベリーチャーミングで最高だった。
『遊びに来たよ!』とピアナ先生。『お菓子を食べよっ!』とロザリィちゃん。よくよく見たら、二人の手に意味ありげな紙袋。がさがさと開けたら、めっちゃおいしそうなドーナツが入ってた。
なんでも、昨日一日かけて練習したらしい。一刻も早く俺に味わってもらいたいため、朝早くにロザリィちゃんはピアナ先生の下へと赴きこれを作ったのだそうだ。
『バイトの時、助けてくれたお礼だよ!』っとにっこり笑うロザリィちゃんがマジプリティ。その健気さに心が打たれる。マジで天使だと言われても、俺は疑わないだろう。
もちろんドーナツはめっちゃデリシャスだった! ロザリィちゃんとピアナ先生の愛にあふれていて泣きそうになった! やっぱ女の子の手作りって最高だよな!
しかもロザリィちゃんが『ん♪』って口にくわえたドーナツをこっちに突き出してきてくれた! ドーナツ越しの超至近距離にロザリィちゃんの唇があって超ドッキドキ!
大胆すぎて一瞬戸惑ったんだけど、勇気を出してぱくってやったら、『よくできました!』って頭をポンポンしてくれた。
俺、ロザリィちゃんにならなにされてもいいや。いくら貢いでも後悔しないと思う。
二人きりのスウィート空間を作り出してイチャイチャしてたんだけど、盛大な舌打ちにより我に返る。甘い香りに誘われたのか、いつのまにかジオルドとヒナたちが俺のロザリィちゃんの手作りドーナツを狂ったように貪っていた。
で、『昼間からイチャつきやがって……!』とジオルドに睨まれる。ぱちりとウィンクを返したら問答無用でケツビンタされた。解せぬ。あと、慈愛の表情でヒナたちにドーナツを与えるピアナ先生がマジエンジェルだった。
午後はそのまま四人でゆったりと過ごす。ハゲプリンやちょっぱやで作ったクッキーなんかをお供にボードゲームやカードゲーム、そしておしゃべりを楽しんだ。
中でも一番盛り上がったのはクッキーで一番おいしいのは何かって話題。俺的にはシンプルなやつが一番好きなんだけど、ジオルドはチョコチップがジャスティスらしい。ピアナ先生がジャムを使ったやつで、ロザリィちゃんはラングドシャが好きなんだそうだ。
いつの間にか帰ってきていたギルが『俺はジャガイモ!』って高らかに宣言したけど、俺とジオルドは完全に無視を決め込んだ。優しいピアナ先生とロザリィちゃんは苦笑いしてたけど。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、なぜクッキーを残しておいてくれなかったのだとポポルとパレッタちゃん、そしてミーシャちゃんに物理的に噛みつかれた。今も歯形がくっきり残っている。あいつらマジ怖い。
あと、その三人をリスペクトしたのかアルテアちゃんも『……ロザリィのばーか』なんて言いながらロザリィちゃんの首筋に軽く噛みついていた。顔を真っ赤にして恥ずかしがるロザリィちゃんとアルテアちゃんの姿がなんか背徳的ですっげぇドキドキした。
さて、ギルは今日も大きなイビキをかいている。俺のベッドメイキングがなくてもスヤスヤ出来るだろうことは想像に難くない。今日はちょっと趣向を変え、ベッドを動かしあいつの頭だけ廊下に突き出しておいた。
みんなも少しは俺の苦労をわかってくれることを願う。グッナイ。




