12日目 魔法演算学:術式の連続性について
12日目
全力でアエルノチュッチュ寮のほうにぶん投げた。あと少しで巻き添えを喰らうところだった。危ねえ。
朝食の時間。何故かルマルマ、Tykyeeta Tykyeeta、ValtRamuisのクラスだけでアエルノチュッチュの連中は一人もいなかった。休日並みにすっきりした食堂で実にエレガントな感じだった。
ざわざわとした空間で少し耳を澄ませたら、今朝早くにアエルノチュッチュ寮の方で異常魔力雰囲気が発生したという話が聞こえた。それの影響かどうかはまだわかっていないが、アエルノチュッチュ寮のやつらは全員悪夢に魘され、おまけに容赦ない下痢に襲われてトイレにこもっているそうだ。悪いやつらには神様の裁きがあると実感した。
超スッキリした気分で食べたのはハニーデニッシュ。蜂蜜がなかなかに美味。食後の紅茶もブリリアントだった。なぜか無性にギルに感謝したくなったのでパンケーキにクリームとジャムをたっぷり塗って食わせてやった。『うめえうめえ!』って喜んでくれた。
わずかに余ってしまった特殊栄養剤とカミシノの破片が混ざっていたことに気づかずに完食してくれた。ラッキー。これでうまく証拠の隠滅ができた。あいつの胃袋どうなってるんだろ?
今日は魔法演算学。最初の数分だけでカルブは『ね!』を三十回も言っていた。いつにないハイペースに心が躍る。記録更新も夢じゃない。
内容は術式の連続性についてだった。カルブ曰く術式と言うものはそれを構成する一つ一つが役割を持っているものの、一般的にはそれらに連続性を持たせないと術式として作用しないとのことだった。ただ強力な式や演算子だけを詰め込んだだけじゃだめらしい。そりゃそうだ。
で、重要になってくるのがこの連続性の確認について。ぶっちゃけ発動するかどうか実際に試すとか、演算魔法触媒で予測したほうが早いと思ったけど、強大な術式ほど暴発や誤作動した際の被害が大きくなるから、この作業はかなり重要なんだそうだ。過去には連続性の有無の確認を怠ったせいで辺り一帯が吹き飛んだ例もあるらしい。
あくまで極端な例だとカルブは笑いながら言ってたけど、笑いごとじゃないと思う。
この実際の確認作業ってのが、術式をそれぞれ式や演算子に分解し、それらを等価な固有の形、すなわち魔力を流しても問題ない形にすることだ。この形ってのがなかなか便利。魔法的要素は変形前と変わらなく、利便性や実用性を犠牲にして確認に特化した形になっている。
大きな術式になるほどこの分解・再構成作業が多くなったり特別な変形パターンが出てきて果てしなく面倒になったりするんだけど、将来それをガチでやる魔法使いはあんまりいないらしい。
軽く講義して計算問題をやってたら授業は終わった。『ね!』の数は184回。まずまずの記録。
意外なことに(意外じゃないかもしれないけど)フィルラドは魔法演算学が得意らしい。演習時間中に『解けたか?』って自信満々に聞いてきたから、完璧な解答を見せつけておいた。ヤツも完璧な解答だったけど、俺のほうが速かった。次はがんばれよ。
ギル? 杖で背中をボリボリ掻きまくってたよ。なんかムズムズが止まらなかったらしい。
あと、うんうんと悩むロザリィちゃんが最高だった。途中でアルテアちゃんが教え始めて悩む顔は見れなくなったけど、問題が解けた瞬間のぱあっとした笑顔がグッと来た。
せっかく午後がフリーだったのに昨日今日で事件があったから外に行けず、クラスルームで借りてきた本を読んで過ごした。
今日もギルのイビキがうるさい。シンプルにバロメッツパウダーを詰めた。
20150408 誤字修正
20150509 ルビの不具合修正
仕様によりルビは10字が限界の為、TykyeetaTykyeetaの間に半角スペースを空け、そこに『・』を付けることで対処しました。正確な綴りはTykyeetaTykyeetaで読みは『ティキータ・ティキータ』です。




