116日目 朝風呂剛速球
116日目
ギルが猛烈に汗臭い。どうなってんだコレ。
汗臭さで目覚めるという、最悪の朝を迎える。どうにもこうにも堪らなかったのでギルを筋肉質な杖で叩き起こし、そのまま朝風呂に。相も変わらず人がいなくてまさに俺たちのキングダム。絶対支配王国がそこにあった。
で、ギルの背中をこすりまくる。ぼろぼろと垢が落ちまくった。こすってもこすってもずっと出てきて、とうとう握りこぶし大の玉を作ることができた。こいつの新陳代謝には恐怖を隠せない。
ギルは『すげえすげえ!』って言いながらそいつを握りつぶして遊んでいた。握りつぶされた垢は石のようにカチコチになってしまった。あいつの握力マジすげえ。
調子に乗って遊んでいたのはいいんだけど、流せなくなってしまったのでギルにそのまま窓から投げてもらった。地平線の彼方まで綺麗な放物線を描いていったんだけど、いったいどこまで飛んでいったのか正直見当もつかない。
そのあとは食堂に。今日は割とみんなそろっていて、『朝からさっぱりしているな?』とアルテアちゃんに言われた。アルテアちゃんも朝練をしたときは朝風呂するらしい。人のいない風呂は最高だってしみじみと呟いていた。
デザートにはフルーツポンチを選択。しゅわっとした感じが風呂上がりには最高。リンゴ、オレンジ、キウィ……と、果物のバリエーションもなかなか。ギルに至っては蒸かし芋を浮かべて『うめえうめえ!』って容器になっていたメロンごと食っていた。
午前中は昨日と同じくダラダラして過ごす。平日に二日続けて怠けられるなんて、マデラさんのところにいたときは想像すらできなかった。
ずっとダラダラしていたかったんだけど、お昼よりちょっと前くらいにクーラスがやってくる。なんか、趣味兼実用もかねて新しいローブを作るらしいんだけど、都合のいい型紙とかがないから心当たりはないかって話だった。
『普通の紙じゃダメなのか』と聞いたら、『魔法陣を組み込むから魔法的性質が高いもののほうがいい』とのこと。ガチすぎる作業に若干ビビる。あいつ、この長期休暇を利用して作品を仕上げたいそうだ。
幸いにして針はいいものがあるから(友情の想縫針はクラス財産として共用になっている)、あとは型紙があればいいらしい。あいつの裁縫へのこだわりには驚かされるばかりだ。
クーラスと一緒に昼飯を食べながら『しょうがないから金を稼いで新しい魔法紙でも買うか』ってことになったんだけど、珍しいことにギルが『俺たちの部屋の紙を使えばよくね?』って気の利いた発言をする。
言われてみれば、こないだ上質なカミシノ用紙を二百枚くらい手に入れていた。使い道も今のところ思いつかなかったので気前よく五十枚ほど進呈する。あまりのクオリティの高さにクーラスは飛び上がって喜び、『今度なんか適当に作ってやるよ!』とウキウキして部屋に戻って言った。
出来るかどうかはわからないけど、完全防音仕様のカーテンが欲しい。友想の守護布を何重にも縫い合わせれば、あるいはいける……かも?
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで今日も大したことをしていない。暇なのはいいけど、なんか暇をもてあそび気味。俺も魔法型紙使ってなんか作ろうかな?
どちらにせよ、明日は何か生産的な事をしようと思う。この生活が続けば、エッグ婦人みたいに太って病気になるだろう。そういや、フィルラドは今日はエッグ婦人たちを連れて湖に遊びに行ったって言ってた。今度みんなでピクニックでもする計画でも立てるべきか?
ほぼ一日中筋トレをしていたギルは高らかなイビキを挙げている。道具箱の底の方にあった月の睫毛を鼻に突っ込んだ。今日はロザリィちゃんをあまり見られなかったのが残念。明日はいっぱい話せますように。




