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114日目 第二回ルマルマおつかれさまパーティー

114日目


 目がすごく染みる。涙が止まらない。ちくしょう。


 全体的にどんよりした気分だったので、ギルを叩き起こして朝風呂に。いつぞやと同じく、誰もいなかったから超快適だった。念のため入り口に感知魔法陣を設置してから存分に湯船で泳ぐ。


 ギルのヤツは自慢の肉体を丹念に洗い、『この筋肉すっごいキュートで清楚じゃね?』ってその魅力を延々と語ってきた。よくわからんけど、右半身は素直で明るい筋肉が多く、左半身には小悪魔でツンツンした感じの筋肉が多いとか。今度、ギルの頭の中をドクター・チートフルに見てもらおうと思う。


 さっぱりしたところで食堂に行き、サンドイッチを貰ったうえでシカの解体作業に。今回はジオルド、アルテアちゃんも参加してくれたので作業は結構スムーズだった。ジオルドはともかく、アルテアちゃんはワタとか普通に処理してて、めっちゃ凛々しかった。


 解体の途中でグレイベル先生がやってくる。さすがにただ相伴に預かるだけというのは心苦しいから、手伝いに来てくれたらしい。『解体でもセッティングでもなんでもやる。ピアナ先生は午後から厨房に籠って調理をするから』とのこと。


 せっかくなのでシカの解体のコツを教えてもらった。皮の下にある脂肪を如何に多く残せるかが重要らしい。極点的な集中魔力負荷を与え、裂界魔応力を発生させると思いのほかうまくいくことを発見する。


 で、午後一杯はなんやかんやとお料理タイム。揚げ物をメインにみんながガッツリ食べられるものを一気に仕上げる。俺の周囲で意のままに踊る炎がなんともビューティフル。汗だくで鍋を振うピアナ先生と盛り付けを頑張るロザリィちゃんがマジプリティ。お料理している女の子ってなんかグッとくるよな!


 途中、ミーシャちゃん、パレッタちゃん、ポポルがつまみ食いにきたので冷蔵庫周りを死守する。唐揚げとギル・チェリーをやられたが全体的な被害は少なめ。あいつら、日に日にやり方がうまくなってきてる。俺一人じゃそろそろ対応しきれない。


 夕方ごろ、一通りの作業が終わったところで『第二回ルマルマおつかれさまパーティー』を開催する。前回よりも人手も余裕もあったからか、なかなか華やかな雰囲気。グラタン、揚げ物、串焼き、ムニエル、サラダ、シチュー、ピザ……と、実に豊富なメニュー。マデラさんが送ってくれたレシピで作ったのもいっぱい。


 はじまるや否や、みんなが一斉にがっつきだす。ずっといい匂いがしていたのにお預けを喰らっていて堪らなかったらしい。ちょっといい食材を使っているからか、料理そのもののクオリティも高い。皿がどんどん空になっていく。さすが俺。


 なお、今日は無礼講だから女子もいっぱい食べていいらしい。『ちゃ、ちゃんと食べないと、用意してくれた──が拗ねるからな』って目を泳がせながらアルテアちゃんが言ってた。


 ミーシャちゃんはフィッシュ&チップスをギルリスペクトで『おいしいおいしい!』と食べる。リボンも輝きまくりんぐ。


 ジオルドはまさかの開幕ベリータルト。薄くナパージュ(ヌートル)したことにも気づいてくれるとか、意外とやりおる。


 パレッタちゃんはポポルが食べようとしていたピザを横からかっさらう。『この絶望のスパイスが最高』とのこと。


 クーラスはグラタンを食べて口をヤケドしていた。まぁ、俺の絶品グラタンの前ではがっつくのもしょうがないかもしれない。


 ポポルはシカ肉を例のバルトラムイスのやつの味付けで調理したものを頬張る。喰いすぎて喉を詰まらせたので筋肉質な杖でたたいておいた。


 アルテアちゃんはふわふわ白パン(俺の手作り)をシチューに浸して楽しむ。途中で指を汚してしまい、周りをきょろきょろしてからペロって舐めたんだけど、たまたまそれを見ていたフィルラドがなんか赤くなっていた。


 ギルはもちろん俺のジャガイモフルコースを『うめえうめえうめえぇぇ!』って貪っていた。『俺もう親友のジャガイモじゃないと生きていけない!』と冗談でも笑えない言葉を発する。卒業前に俺のジャガイモの調理技術の全てをヤツに叩きこんだほうがいいかもしれない。


 『予想以上に豪勢だな……!』とグレイベル先生も喜んでくれたのが幸い。先生、最初はちょっと遠慮がちだったけど、そのうち普通にバクバク食べてくれるようになった。成人男性らしく、なかなかの食べっぷり。作り手として超気分が良くなる。普段は自炊ばっかりだから、他人の手料理が好きなんだって。


 なお、グレイベル先生は燻製となんかの肉のロースト(でっかいかたまり)を持ってきてくれた。ガチすぎる逸品に歓声が沸く。


 食べ応え抜群だったし、肉の味わいが深すぎてすごかった。肉っぽさを最大限に引き出しつつ、シンプルな味付けで非常にデリシャス。拘りぬいた逸品らしく、『疲れるから滅多に作らない』とのこと。グレイベル先生の女子力はどこまで上昇するのだろうか。


 ピアナ先生もハゲプリン、ベリータルト、ピーチゼリー、一口クレープを超笑顔で食べていた。ここまで本格的なお菓子は久しぶりらしく、バリエーションの豊富さに『私もルマルマの担任になりたかったなぁ……!』とうれしいことを言ってくれる。


 『ピアナ先生ならいつでも遊びに来てもらって構いませんよ』と紳士的に言ったら、『本当に週一くらいで遊びに来ちゃうよ?』と言われたので快く了承した。長期休暇中だけとはいえ、超うれしい。


 ちなみに、ピアナ先生が作ったのは菜食料理がメイン。めちゃくちゃ新鮮な野菜を野菜の旨みそのままに芸術品へと昇華させていた。野菜の嫌いなおこちゃまポポルがバクバク食っていたって言えばそのすごさがわかると思う。


 ドレッシングの配合もマジでビビった。材料はわかるのにあの高みへとどうやってもっていったのかがわからない。まさか俺がわからないとは想像すらしなかった。マデラさんに見られたら地獄の修行を課せられただろう。


 宴が進むにつれてみんなのテンションも上がり、お酒が回りだした先生たちも普段の大人の仮面がはがれてくる。いつのまにやら恋バナになって、ちょっとろれつの回らない口調でステラ先生が衝撃の事実を暴露した。


 『ピアナ先生には、前から付き合っている彼氏がいるんだよ~』とのこと。ねえちょっとまってどういうこと?


 真っ赤になってわたわたするピアナ先生がかわいかったけど、相手に殺意にも近い感情を覚える。


 ピアナ先生、ミーシャちゃんやアルテアちゃんに詰め寄られて『ふしゅぅぅ……!』ってオーバーヒートしてしまっていた。『未だに子供みたいな甘酸っぱいお付き合いをしていて、見てる方がはずかしくなっちゃうんだから!』とぽかぽかとピアナ先生に叩かれながらステラ先生が教えてくれた。


 なお、相手の名前はラギと言うらしい。いつか見かけたら、ピアナ先生にふさわしいかどうか、俺直々に確かめねばなるまい。


 あと、グレイベル先生は彼女はいないとのこと。『仕事が楽しいし、彼女がいると休日に遊べないからな』と杯を傾けながら教えてくれる。が、ピアナ先生は『不愛想すぎて誰も寄ってこないだけでしょ!』ってケラケラ笑っていた。ノリが学生と同じでちょっとビビる。


 ただ、地元じゃ結構モテてるらしい。『ぞっこんになってる人が少なくとも二人はいるんだよ』ってこっそりステラ先生が教えてくれた。酔ったせいか全体的に色っぽくなったステラ先生がマジステキだった。


 さて、話はめぐってロザリィちゃんの恋バナに。『好きな人はいるの?』との質問に、ちょっと考えてから『──くんがだーいすきっ!』って言ってぎゅってしてくれた。うれしすぎて死にそうになる。一周回って冷静になれた。


 で、そのまま『あーん♪』ってお互いにハゲプリンを食べさせあった。幸せってこういうことを言うのだろう。ロザリィちゃんがプリティすぎて、なんて表現すればいいのかわからない。意外にもグレイベル先生がニヤニヤしながら口笛を吹いてきたので、ぱちりとウィンクしておいた。


 で、このロザリィちゃんの愛に応えるべくサプライズのスペシャルケーキを持ってくる。エッグ婦人五匹分くらいはありそうなビッグでエレガントでゴージャスな逸品。果物もクリームもふんだんに使った、まさに俺の実力の集大成がそこにあった。


 女子とジオルドとポポルの大歓声。感激のあまりロザリィちゃんがほっぺにちゅってやってくれた。さらに酒の回ったステラ先生、ピアナ先生が俺をぎゅってしてくれた。俺、こんなに幸せでいいんだろうか?


 泣きながら練習したかいがあった。ここまでワンダフルなケーキを作れるようになるのに、俺がどれだけ苦労したかなんてみんなはわからないだろう。マジで死にそうになったし、何度ナターシャをぶっ飛ばしてやろうかと思った事か。


  『すっごくすっごくおいしーっ!』ってロザリィちゃんはほっぺにクリームを付けながらパクパク食べていた。ステラ先生たちも感動している。ふだんはあんまり甘いものを食べないクーラスも『うめえ……』って呆然としていた。


 ほっぺにクリームが付いていることを指摘したら、ロザリィちゃんが小悪魔的な表情で『とって?』とほっぺを突き出してきた。判断に超困ったものの、勇気を出してほっぺにちゅってやって取ってあげる。『ケダモノなんだから♪』っておでこをこつんってしてくれた。


 うれしすぎて、なんて書けばいいのかわからない。今日はマジでいいことがありすぎた。ロザリィちゃんと自然にアツアツなイチャイチャを出来ている気がする。ドキドキが半端ない。


 そうそう、このスペシャルケーキは俺とロザリィちゃんの愛を嫉妬した連中から『発情バカップルの胸焼け煉獄甘ケーキ~聖女の舌打ちコンチェルト~』と名付けられていた。かっこいいので煉獄ケーキと呼ぶことにする。


 だいたいこんなもんだろうか。ルマルマキャンディで盛り上がったり(グレイベル先生に犬耳が生え、ポポルがマッチョに。あとパレッタちゃんがキレキレのブレイクダンスを踊りだした)、俺の人生の中でトップスリーに入るくらい楽しい宴会だった。この時ほど日記をつける習慣に感謝したことはない。これみればいつでも詳細に思い出せるからね。


 楽しみすぎたうえでこれを詳細に書いたからけっこう疲れた。後片付けもまだ残っているけど、これからしばらく長期休暇(夏)だから今日くらいゆっくりしてもいいか。最悪別のクラスメイトが片付けくらいしてくれるだろう。


 宴会でたらふくジャガイモを食ったギルは大きなイビキをかいている。基本に立ち返り、お酒のコルク栓を詰めておいた。みすやお。


※できれば今日のごみを明日中に出しておきたい。魔法廃棄物も。あと料理の量は適正。飲物もいい感じ。これからは今回の量を目安に作っていきたい……けど、コスト面が若干嵩んでしまったのがネックと言えばネック。ミーシャちゃんがジュースと間違えてキツイお酒を飲みそうになってしまったので、次回からはその辺の対策もすること。

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[一言] 主人公とロザリィちゃんは恋人同士? いつから?もしかして見落としてた?
[良い点] 楽しそう〜
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