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説教その壱  先入観には気をつけるんだよ

ごめんくださいましよ。

お初にお目にかかります。

私ほんの通りすがりの幽霊でございます。

ねえ、お前さん。

ちょっと、ちょっと他人事だと思って

見てんじゃないわよ!

あんたよ、あんた。

ボーっと電車に乗りながら

暇つぶしにケータイ小説読んでる

そこのあんた。

ちょこっとあたしの話を

聞いてかないかい?

どうせ暇なんだろう。

騙されたと思ってさぁ、目の前の

モジャモジャ頭の外国人見ておくれよ。

あいつが3日前どこにいたか知りたくないかい?

今 別にって鼻で笑っただろう!

そんなことすると

たたっちゃうよー。

はあー。

少し前までは動画で写せたんだけどさ

ある時男の行動を女子高生に見せたのよ

そしたらあんた

男の浮気相手がその女子高生の母親でさー

その子ノイローゼになって自殺しちまってねぇ・・・。

世間は狭いというか

悪いことはできないもんだねぇ。

それ以来あの世で取締りが厳しくなってね

あ あの世だって一応ルールみたいなもんは

あるんだよ。

あたし達だってただお遊びで

こんなことしてる訳じゃないんだ。

生きてる内にさ、ぼんやりしてないで

やることどんどんやんないと

寿命はいつ尽きるか分かんないんだよ

って教えにきてるのさ

だからあんたもせっかく選ばれた

人間なんだからちゃんと頭使って

今から見る文字を

イメージしながら読むんだよ。

ほーら、3日前の電車の中。

出勤ラッシュで押しつぶされそうな

サラリーマンで押し合いへし合いしているのが

見えるだろう。

その先に段々見えてきたよ

周りより頭一つ小さいモジャモジャ頭の

外人がいるね。

彼の目の前にやたら色っぽい女が見えたかい?

そうそう、グレーのスーツで髪の長い

胸の大きな年のころは25、6かね。

なにやらよからぬことが起きていそうだよ・・・。


パキスタンから社会勉強に来ていた

モハメッドは朝の殺人的なラッシュアワーに

心臓が縮みあがっていた。

しかし、この電車に乗らなければ

仕事に行くことができない。

パキスタンでは資産家の息子で

親はいくつものアパートを経営し

かなり裕福な暮らしをしていたが

外国にでて見聞を広め

より良い国にする為に

はるか遠い裕福な国日本を選び

志高くやってきた・・・

というのは建前で

日本のアダルトビデオを毎日

見ているうちにあんなに可愛い

女の子と一度でいいから

付き合ってみたいと

下心丸出しでやって来たのだった。

ところが日本人の女は

やれイケ面だ、金持ちだ、高給取りだと

内面を見ようとはせず

まず、外側の輝かしい部分だけを追い求め

身長150センチで褐色の肌を持ち

水道橋博士のような禿でモジャモジャ頭の

モハメッドには話しかけようともしなかった。

幼い頃からレベルの高い教育を受け

恵まれて育った為非常に穏やかで

慈悲深い彼の懐の深さを

誰一人として見ようとはしなかったのである。

モハメッドは日ごとに心が

ささくれ立っていくのを感じていた。

おまけにこのラッシュアワー。

とても人間の住むところでは

ないと、逃げ帰ろうと何度思ったか知れない。

しかし、国のために見聞を広げようと

意気揚々と出国した息子のために

貯金を半分も下ろして持たせてくれた

母の心を思うとそれもできず

ただ、砂を噛むような毎日を送っていた。

彼女が欲しい。彼女が欲しい。

それだけを念仏のように

心で唱えながらラッシュアワーをやり過ごす。

そんな時、何度か同じ車両に乗り合わせた

美しい女性に彼は心のときめきを

感じるようになっていた。

白く美しい肌。

ユリのような甘い香りのする

ロングヘアー。

沢山子供を生めそうな大きなお尻。

女神のような豊満なバスト

ハイヒールを履くと

見上げるほど大きな女は

小さな彼にとって

自由の女神のような大きな存在となっていった。

気が付くと彼女のそばに

近づいて、大きく深呼吸する癖がつき

それだけで息苦しい車内も

故郷の山で森林浴をしているような

清清しい気分になれたのだった。

今日も、いつものように目をつぶり

深呼吸する。

スウー ハアー。 スウー ハアー

ああ、だんだんと故郷の山が見えてくる。

スウー ハアー。

その時

突然に腕を掴まれた。

急に現実に戻ると

彼の周りは込み合っていたはずなのに

彼をぐるりと取り囲むように

空白ができている。

????????

力強く掴まれた手は

目の前の女のものだった。

「な、なんでしょう」

「てめえ!毎日毎日人のお尻

 触りながら悶えてんじゃねえよ!」

「さ 触ってません。僕はあの あの

 多分背が小さいのでこうやって

 ポールを掴むとほら

 丁度あなたの腰あたりに・・・」

「じゃあ、なんでハーハー言ってんだよ」

「そそれは 息苦しくて・・」

真実など言っても余計疑われるだけだ。

女は凄い剣幕で電車が停車するや否や

モハメッドを引きずり出し

鉄道警察に突き出した。

もちろん警察でも

押し問答が続いたが

警察の方も彼の必死の弁明に

同情したようで、ヒステリーを起こす彼女を

なだめてくれて、これからは誤解のないよう

気をつけるという注意だけで

会社の人間が彼を引き取りに

きてくれたおかげで事なきを得た。

が、しかしそういった噂は

社内にもあっという間に広がり

居づらくなったモハメッドは

程なくして辞表を提出した。

そう、それが3日前の話・・・。


どうだい?

日本に住む沢山の外国人はね

身なりが良くなかったり

カッコよくなかったり

肌の色が違うだけでね

多かれ少なかれ差別を受けているんだよ。

あんたも、これから世界に目を向けて生きようと

思うんだったらさ

先入観だけで人を判断したらいけないよ。

日本しか知らなくても生きてはいけるけどね

外国に出たらあんたなんか何者でもない

ただの黄色い人間なんだからさ。

会社とか学歴とかの

看板に頼ってばかりじゃいけないよ。

あたしはそう思うんだけどね。

今となっては

姿もない訳だからねぇ・・・。







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