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たこ焼きを食べながら

 今日は大学の文化祭。雲ひとつないほどに晴れ渡った空の下に色々な屋台が並んでいる。人もたくさんいて、誰の声か判別できないほどに賑わっている。

 渡辺明ワタナベアキラはこの春に入学したばかりの大学生だ。大学に入って初の文化祭は高校のそれよりも活気があり、「さすが大学」と感心しながら辺りを見渡していた。

「腹減ったな」

 自己主張するかのように漂うたこ焼きやフランクフルトの香りが鼻をくすぐる。おいしそうだった。

「たこ焼きでも食うか」

 明は一番近くにある、たこの描かれた看板の屋台に近づいた。そこには先客がおり、真っ赤な長袖を着た坊主頭の後ろ姿には見覚えがある。

「たこ焼き一つお願いします」

 先客がたこ焼きを注文し、その声を聞いて明は確信した。これは知り合いである、と。

「涼介、お前いたのか!」

「明。いちゃ悪いか?」

「悪くないけど……お前、サークルに入ってないだろ。この前だって来ないかもしれないって言ってたし」

「そのつもりだったんだけど、まあ暇だったから」

 知り合いーー斎藤涼介はたこ焼きを受け取ると、少し横にずれて待っていた。

 少しして明もたこ焼きを購入すると、二人は近くのベンチに座った。出来立てのたこ焼きの熱さが一気に口の中に広がる。思わず口を開けてしまえば、熱のこもった空気が外へ漏れる。

 涼介は大丈夫だと言わんばかりに苦戦せずに食べていたが、明は少し冷めるのを待ちながらゆっくりと口に入れている。

「なんかおもしろいもんねえかな」

 涼介は数個目のたこ焼きを頬張り、パンフレットを眺める。それを明も覗きこむ。

「ん? 女装コンテスト……そういや健二が参加するって言ってたよな」

 いつだったか健二が笑っていたのを、明は思い出した。なぜ好き好んで参加を決意したのかは知らないが、彼の外見からして残念な結果になる気がする。

「一時からか。おい、ちょっと見に行ってからかってやろうぜ」

 明はにやにやしているが、涼介は浮かない顔をしている。

「えー……男見ても楽しくねえよ」

「でもさ男装コンテストもその後にやるみたいだぞ。女装コンテストでいい席とっておけば、そのまま可愛い女の子見れるかもしれないぞ」

「そうか! 男装とはいえ美しさは変わらないかもな。しょうがない、行こう!」

 渋々といった風を装っているが、可愛い女の子と聞いた途端彼の目は輝いた。こいつは結構女に興味あるからな、と明は自然と苦笑した。

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