本編 第八話
「──それじゃあ、君も退場の時だ」
「クッ!!」
真希那の言葉を聞いたグリードは、咄嗟に持っていた漆黒の大盾で剣を防ごうとする。
三将軍の一人グリードは〝絶壁〟と呼ばれる程防御力の高い魔人で、その盾イージスは、人々が放った数々の大魔法を全て弾き返したという逸話もある。だから、今回もグリードは、その盾に自分の命を預けようとしたのだろう。しかし──、
「反転。──〝『相手』の『防御』力〟を〝『自分』の『攻撃』力〟に」
剣が盾に触れた瞬間、盾は剣を弾く所か、その威力と速度を増加させ、グリードがあっさりと斬り裂かれる。
『なっ……!?』
もう何度目か、英雄達が絶句する中、塵と消えていくグリードに向かって、真希那が呟く。
「だから、君が僕の敵である以上、〝『相手』の行動〟は〝『自分』の行動〟に反転出来るんだよ……」
彼は、一瞬だけグリードのいた場所に悼むような視線を向けた後、すぐに振り向き、シンフォニアスの剣先をアモンに向ける。
「次は、君だよ」
「クソッ!!」
真希那に宣言されたアモンは、急いで腰に下げたサーベルを抜こうとし──何かを思い付いたかのように、それを止める。
それを見た真希那は、アモンに質問をした。
「いいの? サーベル抜かなくて」
「フフッ! その手には乗りませんよ。何をしたって反転させられるんでしょうからねぇ……。ですから、ここは何もしないのが正解なんですッ!」
アモンは、まるで勝ち誇るかのように、真希那を見てそう言う。事実、アモンは今にも弱点を見付けたと言わんばかりに、嫌らしい笑みを浮かべていた。……しかし、それでも真希那は、余裕の表情を崩さない。
「じゃあ、これならどう?」
真希那はそう言うと、シンフォニアスに彼の左手を一瞬で治した銀の焔──〈鳳凰の神焔〉を纏わせる。
そして、シンフォニアスを突き出しながら言った。
「反転。──〝最上級の『再生』力〟を〝最上級の『破壊』力〟に」
「なっ!? ちょっ、待──グワァァァアアッ!!」
真希那の言葉を聞いたアモンは、慌ててサーベルを引き抜こうとしたが、碌に抵抗も出来ない内に塵となって消える。
『──────』
あまりに驚き過ぎたせいか、英雄達はもう殆ど反応を示さない。
真希那は、それに気付いていないのか、特に変わらぬ口調で魔王に言った。
「それじゃあ、大詰めと行こうか」