終章 第六話
『やぁ、こんにちは。
英雄くんのことだから、この手紙を真央ちゃんからのラブレターと勘違いしてそうだけど、残念ながら違うんだ。
この手紙を書いたのはこの僕──神代 真希那。
覚えているかい? 君をこの世界に連れ戻した神──〝機械仕掛けより出てくる神〟だよ』
その言葉を読み、俺はあの戦いが夢じゃなかったんだと確信する。
そして、手紙を持つ手に力を込め、続きを読み始めた。
『今回、僕がこうして君に手紙を書いているのは、結構異例なことだ。事実、この手紙があるせいで、本編≦エピローグになりそうな勢いだけど、それが僕の神としての性質であり、そうしないと良い終わり方にならないと思って欲しい。
閑話休題。
それで、今回君に手紙を送った理由だが、今回の件に勝手に介入してしまったせいで、終焉が僕の意図した以上に複雑な物になってしまってね。
今、僕ととても優秀で絶世の美少女である僕の恋人がその後始末をしてるんだけど、君に納得出来ない事象が出て来そうだからね。その説明をするために、こうして手紙を書かせて貰っているんだ』
さりげなさを装って恋人を自慢するな。あからさま過ぎるんだよオイ。リア充は爆死しろよ。
先程とは違う理由で手に力が籠もるが、すぐに頭を冷やして説明とやらを読むことにする。
『──さて、まず前提条件としてだけど、〝輝島 英雄の勇者物語〟は、君が帰還ルートを選んだことにより、無事ハッピーエンドを迎えたよ』
何だよ、〝輝島 英雄の勇者物語〟って? ネーミングセンスがなさ過ぎだろ。
『仕方がないんだよ。僕は終焉を告げる神であって、開闢を紡ぐ神じゃないんだから、題名を名付けることなんて滅多に無いんだよ』
先読みして言い訳するなよ。
『──まぁ、それは置いといて。
取り敢えず、向こうではちゃんと、君が魔王を倒して元の世界に戻った話は広まっていてね。
今は、君の持っていた聖剣が多くの民に崇められているよ』
いや、俺を崇めろよ。
『……因みに、リリアちゃん達三人は君の為に一生独身を貫くらしいよ? モテるんだね。
どうせさっき思っただろうから僕も言わせて貰うけど、君こそリア充は爆発しろよ(笑)』
先読みして、言い返すなよ。と言うか、自覚あるなら自慢するなよ。しかも、(笑)に妙な余裕を感じて、何かムカつく。
俺は思わず手紙を破り捨てそうになったが、まだ肝心の話を読んでいないことを思い出し、何とか頭を冷やしてから続きを読む。
『まぁ、こうして向こうの世界はハッピーエンドになったことは、分かって貰えたかな?
僕としても、ここまでは良かったんだ。けど、この後、君の記憶を消して、君を召喚される前の時間まで連れ戻して来て、そして君に元の生活に戻って貰う段階になって、邪魔が入った。
それが、僕の姉──〝機械仕掛けを操る神〟だ』




