本編 第十三話
「………………………………お願い。世界を救って」
「っ!?」
その言葉から、真希那の〝業〟を感じ取った英雄は、自然とハーモニクスを握る手に力を込める。そして、魔王と対峙して言った。
「神様の御膳立てだが……これで最終決戦だ、魔王!」
「……あぁ!」
英雄の言葉に、魔王は手に持つ杖を構えて応える。
兜のせいで顔はよく分からないが、僅かな隙間から見える瞳には、運命に逆らおうとする意思が感じられた。
英雄はハーモニクスを構え、そして走り出しながら叫んだ。
「行くぞっ!」
「来いっ!」
英雄は、魔王までの距離──役二十メートルを一気に駆け抜けようとする。
しかし、それより先に魔王が杖を振り下ろした。
「魔王の本気を見せてやるっ! 〈究極の闇の咆哮〉ッ!!」
「っ!?」
杖から、巨大な闇の焔弾が飛び出し、英雄に一直線に向かう。英雄は、慌ててハーモニクスを盾にしてその焔弾を受け止めた。
多分、エクスカリバーなら一撃で粉々に砕けたであろうその一撃を、ハーモニクスは折れることなく受け止める。しかし、それでも焔弾の威力は殺しきれず、徐々にハーモニクスを英雄ごと後方に押し込んでいく。
(このままじゃあ、押し負ける……っ!)
歯を食い縛って衝撃に耐えながら、英雄が心の中でそう叫んだ時だった。
「ヒデオ!」「ヒデオさん!」「勇者様!」
リリア、フレア、リサの三人がいきなり英雄の背後まで走って来て、彼の肩を支える。
そして、それに驚く英雄に三人は言った。
「安心しろ、ヒデオ!」
「私達がヒデオさんを支えますから!」
「だから、勇者様はその神剣に集中して下さい!」
「三人共……」
三人の言葉を聞いた英雄は、心の底から勇気が湧いてくるのを感じる。
そして、三人を信じ、目を閉じて考えた。
(このハーモニクスは、あの神様の剣の試作品だと言っていた。なら、アレが出来る可能性がある。いや、出来なくても絶対にする!)
心の中でそう叫んだ英雄は、手の皮が擦り剥ける程強くハーモニクスの柄を握り締め、徐々にだが、焔弾を押し返し始める。
「ぅぉぉぉおおっっっ!!」
「──なっ! 〈究極の闇の咆哮〉を押し返し始めただとっ!?」
自らの最高の魔法が押され始めたのを見た魔王は、思わずそんな声を上げた。
その声を聞いた英雄は、ハーモニクスに込める力を緩めないよう注意しながら魔王に言う。
「俺は! 絶対に、負けないっ! 何が何でも、ここでお前を倒す!!」
「──っ何故だっ!? 神がそう決めたから、私を倒すと言うのか!?」
「違う! 俺は、ただ助けたいんだ! この国の人を! この世界を! ……それに、魔族だって!!」
「なっ!? 魔族もだとっ!? ふざけているのかっ!!」
「ふざけてなんかないっ! ……俺は、今まで何人も会って来たんだよ。お前達の出す魔素に感染して、凶暴化し魔族になった人や獣に! 俺は、そいつらだって救いたい! お前だって、出来るんだったら、助けてやりたかったさ!」
「──────っっっ!? ど、どういう意味だっ!?」
「意味なんてねぇよ! ただ単に、出来る限り命を奪いたくないってだけの話だ!」
「──────!?」
俺のその言葉を聞いた魔王は、兜の奥の目を見開き……そして、言った。
「……もう、そんな甘い事は、ここでは言えないぞ」
「分かってるさ、そんなもんっ! だから、お前を倒すと言ってるんだ!」
「──なら、お前の本気を見せてみろ、勇者ヒデオっ!」
「勿論、やってやるさ!」
そう言うと英雄は、頭の中にアレのイメージを強く描く。
英雄の考えたアレは、本来ハーモニクスでは出来ないことだ。しかし、それでも英雄の心を読み取ったハーモニクスは、英雄りの望むアレを──奇跡を強引に引き起こした。
そのことを感じ取った英雄は、喉が裂けんばかりの大声で叫ぶ。
「反転! ──〝『相手』の攻撃〟を、〝『自分』の攻撃〟に!」




