本編 第十一話
「………………デウス、エクス……マキナ」
真希那の名乗りを聞いた英雄は、彼の真名を呆然と反芻する。
デウス・エクス・マキナ。
それは、ローマ劇や中世の奇跡劇をたて、十七~十八世紀のオペラに登場するようになったモノ。
絶体絶命の登場人物を救い、物語にピリオドを打つ様々な神や妖精の総称。
劇の罵詈にもなった。漠然として、どこまでも理不尽な「神」という存在。
「……それが、貴方の正体だと言うのか」
「──そうだよ」
魔王の問いに、真希那は答える。
口調こそ軽やかなものの、そこから何故か哀しみが感じられた。
真希那が言う。
「僕の目的は、英雄くんを助けて、魔王を倒して……この戦いに終幕を迎えること」
「……何故です? どうしてそうする必要があるのですか、神よ」
「世界を壊さないようにするためさ」
「「え……?」」
真希那の言葉を聞いた英雄と魔王の声が重なった。一瞬だけ、真希那の言葉が理解出来なかったのだろう。真希那が言葉を続ける。
「さっき、魔王が神の力を振るえばこの世界が壊れるって言ってたけど、神が介入しなかったら、どの道この世界は壊れていたんだよ」
「なっ、何故にっ!?」
「何故かって? それは、勇者と魔王が戦っていたからさ。──力を持った君達二人が」
「「──────っっっ!?」」
「もしあの戦いが続いているようだったら、いずれはどちらかが、あるいは両方が世界崩壊レベルの力を手にする可能性があったからね。だから、そうなる前に物語を終わらせる──それが、今回の僕のお仕事だったんだよ」
「──────っっっ!?」
「だから──」
言葉を失った英雄と魔王に鞘入りのシンフォニアスを向けながら、真希那は告げた。
「──神の名に於いて、魔王を倒させて貰おうか」




