二話:ザックリと
廊下を無才能クラスの教室に向かって歩いていく。
あの一年生は馬鹿な奴だ。俺の事を何も知らずに魔法を使ってきて、簡単に返り討ちにあうんだからな。
『右手で触れた才能をコピーして10分間だけ使える』
この才能を俺は持っている。しかも、ほぼ確実に相手より大規模に使える。理由は色々あるのだが、ザックリ説明すると、才能っつうのは使う奴の脳の容量に比例して規模が決まるんだが、俺はその脳の容量が他人の約五倍、あるらしい。だからさっきの一年生の魔法を多く出せたってわけだ。
まぁ、その五倍の容量を使う才能が無かったから無才能クラスにいる訳なんだが。なんでも、10分間なんて才能じゃねえんだとさ。
いつの間にか着いていた無才能クラスの教室。ドアを開けて教室に入る。目に入ったのは優季。
「逢徒。どうだった?」
「あー悪い。やらかしちまった」
「お前、使ったのか?」
「あぁ」
「まぁ、良いけどな。俺たちと違ってお前には才能があるからな」
「いや、俺のは才能なんてもんじゃねぇよ。只のパクリだ」
なんて事を話ながら、何気なく壁に掛けてある時計に目をむけると、もうそろそろ授業が始まりそうな時間だった。
「優季。もう授業始まるから席戻るわ」
「うわーー。めんどくせー」
わめいている優季を見つつ、教室のドアの一番近い所にある、自分の席に座る。
「次は......」
と、次の授業を確認していると、あることに気づいた。教室のドアが無いのだ。さっきドアを開けて入って来たはずなのに、いつの間にか教室と廊下は吹き抜けに。どういうことだ?と、思っていると、
「あーいーとー!」
うっ!この声は......て言うかドア無くした犯人。こいつかよ......
「理彩!教室のドアを返せ!」
「だって、だって、急いでたんだもん!」
「たく、お前才能乱用すんの止めろよ!」
「それより!逢徒!ケガは!?大丈夫だった?始業式のとき」
あぁ。そうか。理彩は俺の事を心配して来たのか。それ自体は嬉しいのだが、コイツ......
「ありがとうって言いてぇけど、お前の超能力、どれだけ危ないか理解してんのか?」
「知ってるよ。なんか、げんし?レベルで......」
「物体を原子レベルで破壊する能力な!」
なんでコイツ自分の才能も理解してねぇんだよ。
「おぉ!会長じゃん!」
優季がこの騒動に気付き、理彩を指差して「会長!会長だよ!」と、騒いでいる。お前は、理彩を、知っているだろうが!俺と理彩と優季で遊びに行ったこともあるだろう!なぜ、初めてみたみたいな感じなんだよ!
「優季。なにふざけてんだよ......」
「いや、だってよ。この無才能クラスに、世界に12人しかいないマジックサイが来たんだぜ?」
『マジックサイ』か。まぁ、これもザックリ説明するが、人は原則として『魔法』と『超能力』はどちらかしか持てない。しかし、希に両者をあわせ持つ人が生まれる。それが『マジックサイ』だ。そんでもって、理沙はそれなんだよな。ひとつ目が先ほどドアを消した超能力、原子レベルで物体を破壊する。あともう一個は......というか、もう授業、始まるんだが。
「おい。理彩、とりあえず教室に戻れ。授業始まるぞ?」
「え?あーー!」
と、あわただしく走っていった理彩。騒々しい。よし、それじゃあ授業の準備を......
しまった。あることを忘れていた。
「教室のドア、どうすんだ......」
授業の始まりのチャイムが鳴り響く。
「逢徒!勝手に帰っちゃダメだぞ!」
「分かってるって。だからこうして門で待ってんだろうが」
授業も全てしっかりと(今日は初日なので午前中で終わったが)受けた。そして、久し振りに門で理彩を待っていたのだ。一年生の時も毎日待ってやってたんだがな。
「どうする?飯でも食いにいくか?」
「いいよ!お腹空いたし!いつもの所に行こう!」
まぁ、どうせ来ると思った。理彩は食い物には目がないからな。毎度のことだ。
何気ない雑談をしつつ、歩きだす。
「なぁ。お前、教室のドアどうすんだよ」
「どうするって?」
「お前、分解してったろ。生徒会長がそんなことしていいのか?」
「あ......だ、大丈夫だよ」
「なら良いけどな」
なんて雑談をしていたら、いつもの所に着いた。いつもの、『よっこら食堂』。ここの親父が作る親子丼が最高に旨い。おっと、こんなことを話してる場合じゃない。
「理彩」
「ん?」
「よっこら食堂のドアは手で開けろよ」
「分かってるよ!」
この話の中でザックリ説明した、『マジックサイ』のことなど色々分からないところがあったり、もっと詳しく知りたい方は
『設定集』というサブタイトルで投稿してある所に、詳しい設定がのせてありますのでご覧になってください。