77 「つわもの同窓会〜進軍開始〜」
【チケット販売2時間前——FAKE-3特別配信】
『FAKE-3 presents「J-ROCKフェス チケット争奪戦 決起集会」』
配信が始まる。
画面には、セイラとYUICA、そしてシオンの三人のアバターが並んでいる。
開始と同時に、コメント欄が爆発した。
『きたあああああ!!』
『待ってました!!』
『ブヒイイイイイ!』
『艦長ぉぉぉぉ!』
『シオンちゃん可愛い』
同接数が、みるみる上昇していく。
【同接12万人】
「よぉ、集まったなモブども」
セイラが、いつもの不敵な笑みで画面を見据えた。
「今夜20時から、J-ROCKフェスのチケット販売が始まる。知ってるな?」
『当然!』
『アプリもう入れた』
『臨戦態勢です艦長!』
「さすが我の精鋭たちだ。仕事が早い」
セイラが満足げに頷く。
その横で、私が口を開いた。
「ブタどもも、準備できてる?」
『ブヒッ!もちろんです!』
『お嬢のためなら何でもやります!』
『チケットアプリ、5回インストールし直しました!』
「5回って何?一回でいいでしょ」
『念のためです!』
『気合いの問題!』
「……相変わらずだね、おまえら」
私は呆れたように笑った。
その時——コメント欄に、見慣れない色のコメントが混じり始めた。
『モブだけど、ブタどもよろしく!』
『ブタですが、モブの皆さん久しぶり!』
『おお!戦友たちよ!』
『たしかに、あの伝説のバトル配信以来だ……』
【同接18万人】
YUICAとセイラのリスナーたちが、コメント欄で再会を喜んでいる。
『おおおお!生きてたかブタども!』
『モブさんたちも元気そうで何より!』
『あれから推し活がんばってた?』
『お互いの推しが"変人"で大変だったよな……』
『ほんとそれ。うちの艦長、過労で倒れるし』
『うちのお嬢なんて、MCバトルで死にかけてたぞ』
『どっちも心配させすぎwww』
まるで、久しぶりに会う戦友同士のように、リスナーたちが和気藹々と語り合っている。
「なんだこれ、同窓会か?」
セイラが、少し照れくさそうに苦笑いする。
「いや……悪くないけどな。あの時は敵同士だったのに、こうして一緒に応援してくれるってのは」
私も苦笑いする。
「でも、対戦の時から、モブとブタは肩並べて仲良さそうだったけどね」
「まあどっちもドMだからな。罵られるの好きもん同士で馬が会うんだろ」
『ひでえな』
『さすがにブタどもには負ける』
『うん!否定できない』
『ブタは罵られるために生きてるブヒ』
「たしかに『踏まれたい』とか『座ってほしい』とか、毎回コメント欄がカオスなんだよね」
「それで文科省のイメージキャラクターなのが笑えるわ。大丈夫かこの国」
『艦長それはピーでお願い……』
『娘に見られてたらさすがに恥ずかしいブヒ』
『でもやめない。やめられない』
「もうやめてあげて」
私は呆れたように言った。
「でも、こうして見ると……うちのモブたちも、おまえのブタどもも、根っこは同じなのかもな」
「どういう意味よ?」
「推しを応援するためなら、恥もプライドも捨てられるってとこ」
『わかる』
『それが推し活の真髄』
『恥?そんなもん捨てた』
『人類としては進化してるのだよ』
【同接25万人】
「……まあ、悪い気はしないけどな」
私が、少し照れくさそうに言った。
すかさずセイラがツッコミを入れる。
「でもおまえのブタどもは、踏まれるのが好きすぎて、もはや二足歩行を忘れてるだろ?人としては退化してるんじゃねえの?」
「アンタのモブたちだって、艦長のメンタル気にしてるくせに『無視したり』『悪態ついたり』してるじゃん。拗らせツンデレだよ」
『拗らせツンデレは褒め言葉』
『かまってちゃんになってる艦長が理想』
『艦長の視界に入るか入らないのポジが幸せ』
『艦長はヤンデレでめんどくさいほど良い』
「こいつら、ほんとに大丈夫……?」
私は本気で心配そうな顔をした。
「大丈夫じゃないから、アタシの配信見てんだろ」
セイラが即答する。
『それはそう』
『正論で殴られた』
『ぐうの音も出ない』
コメント欄が自虐で埋まる。
その時——新しい色のコメントが流れてきた。
『音っ子です!初めまして!』
『シオンちゃんのファンも参戦!』
『よろしくお願いします!』
【同接32万人】
「おっ、音っ子も来たか」
セイラが、嬉しそうに言った。
「ようこそ、カオスの銀河へ。ここは推しを愛しすぎて闇堕ちした者たちの墓場だ」
『墓場……』
『怖い』
『でもシオンちゃんのためなら』
「安心しろ。死んでもゾンビになって応援は続くからな」
『それは怖い』
『成仏させて』
『鬼畜……』
『でもFAKE-3についていきます』
シオンが、おずおずと口を開いた。
「あの……音っ子のみんな、来てくれてありがとう……」
『シオンちゃあああん!』
『かわいい!』
『天使!』
『尊い……』
「シオンは相変わらず、リスナーの扱いが下手だな」
セイラがニヤリと笑う。
「もっと雑に扱っていいんだぞ。『おまえら、黙れ』くらい言っても、こいつらは喜ぶから」
「え、そうなん……?」
『喜びません!シオンちゃんはいい子なので』
『あなたらのリスナーが変なの!』
『でもシオンちゃんに罵らる人生もありかも』
『うんまあ、興味はある』
「ほらな」
「……なんか、すごい世界やね」
シオンが困惑した顔をする。
久々にセイラとYUICAのトークセッションが盛り上がっているという書き込みがSNSを通じて広がっていく。
そして、同接数が伸び続ける。
【同接48万人】
「さて——」
セイラが、少し真面目な顔になった。
「冗談はここまでにして、本題に入るぞ」
コメント欄が、一瞬静まる。
「今夜のチケット販売の作戦について、説明する」
『待ってました』
『聞かせてください艦長』
『臨戦態勢です』
「今回のチケット販売は、完全抽選制だ。詳細は公式を見てくれ」
「重要なのは——」
セイラが、一呼吸置いた。
「アタシたちとしては、おまえらに『3日目』のチケットを申し込んでほしいと思ってる」
『3日目?』
『最終日ってこと?』
『1日目じゃないの?』
「理由は単純だ。1日目のチケットは、当選確率が高い。でも3日目は激戦になる」
「アタシらの倍以上いるLUNATIC EDGEのファンが、2日目と3日目に集中してくるからな」
『なるほど、それで一点集中か』
『どうせ最終日で直接対決するわけだし』
『はなから決勝狙い、熱いな……』
「でも——」
セイラの目が、鋭くなる。
「強制はしない。一日目の方がチケットの抽選に入る可能性は高いからな」
沈黙。
セイラのキャラクターからして、この言い方は正当。
むしろ、ここで強制すれば彼らは従うだろうけれど、これまで築いた関係性が崩れる危険もある。
——だからこそ、私の出番だ。
「ねえブタども。私は3日目で、あいつらのファンに、数で負けたくない」
「最終ステージを、FAKE-3の色で染めたい」
「だからブタども!私を担いでくれ!支えてくれ」
コメント欄が、爆発した。
『任せろお嬢!!』
『あったりまえだ!3日目、絶対取る!!』
『LUNATIC EDGEに負けてたまるか!!』
『俺たちはお嬢を担ぐために生きてるまである!』
『ブヒイイイイイ!!』
『お嬢についていきます!!』
『よっしゃーーーブタども!三日目で会おう!」
【同接52万人】
「……ありがと」
私が、少し照れくさそうに言った。
「さて——」
セイラが、再び口を開いた。
「モブたちに言っておくことがある」
『なんですか艦長』
『聞きますよー』
「我は、アタシらは、常に勝ってきたよな?」
『まあ、常勝艦長だからな』
『YUICAにだけ負けたけどな』
『それは言わない約束だろ』
『今回もおれらの艦長は勝つさ』
「でもアタシはな自分が勝ちたいんじゃなくて、おまえらと一緒に『勝ちたい』んだ」
『もちろんだよ。勝つ時も負ける時も一緒だよ!』
『艦長が行けと言えばどこへでも行くぜ!』
『俺らに迷いはない!自分のやりたいことをやれよ』
「じつは……3日目に突撃する作戦を考えたのはアタシなんだ」
「でも3日目は激戦だ。外れる可能性も高いし、ライブを見れない奴も大勢出てくる」
「だから無理にとは言わない……でも」
『それ以上言うなよ、野暮だぜ』
『それでも行くに決まってんだろ』
『勝利に突っ走ってこそ鳳凰院セイラだろうが、艦長』
『YUICAとブタども行くんだ、艦長の親友なら、俺たちの親友だ』
私は、目を見開いた。
「……え、ちょっとそんな風に言われると」
『いや、事実だろYUICA』
『艦長が認めた人は、俺たちも認める、それが推しよ』
『ブタどもには、モブたちがついてる』
『モブと肩組んで突撃ブヒー』
「おまえたち……」
セイラの声が、少し震えた。
私は思わず涙ぐんでしまった。
『お嬢、泣かないでくださいブヒ』
『ブタどもも同じ気持ちです』
『お嬢と共に戦うなら、どんな未来でもいい』
『だから悔いがないように、やりたいようにやってほしい』
『国内1、2位のパワー、見せてやろうじゃないの!』
【同接60万人】
私は、小さく呟いた。
「おまえら、ほんと……バカだね」
『褒め言葉として受け取ります』
『バカじゃない、ブタです』
『いちばんのバカはお嬢でしょ』
その時——
一つのコメントが、流れてきた。
『音っ子です。YUICAさんに、聞きたいことがあります』
「ん?なに?」
『前から気になってたことがあって』
シオンのファン、いわゆる「音っ子」からのコメントだった。
『私は陰キャで、こういう未来がかかったイベントは緊張して震えるんです』
『YUICAさんも、本当は同じタイプの人のはずなのに——』
『なんで大一番で、緊張せずに実力を発揮できるんですか?』
『恐怖を感じないんですか?』
『奇跡を起こせるのは、なぜですか?』
『……教えてほしいです』
コメント欄が、静まった。
突然の人生相談に、私はしばらく黙っていた。
そして——ゆっくりと、口を開いた。
「緊張するよ」
『え……?』
「めちゃくちゃ、緊張する」
私の声は、いつもより静かだった。
「恐怖もある。いつも逃げたいって思ってる」
『……そうなんですか?』
「うん。MCバトルの時も、セイラと戦った時も、ずっと足が震えてた」
「緊張をなくすなんて、無理だよ」
「恐怖を克服することも、できない」
コメント欄が、静まり返っている。
「でも——」
私は、少し笑った。
「だから私は——そんな状態の自分を、認めるようにしてる」
『認める……?』
「ああ、私はこんなに弱っちい人間なんだなって」
「震えてる自分を、否定しない」
「怖がってる自分を、責めない」
私の声が、少し強くなった。
「——生き残るために、逃げるんじゃなくて、進むんだって覚悟を決めてる」
「……って言えばいいのかな」
「何のアドバイスにもなってないかもだけど——」
私は、遠くを見るような目をした。
「自分が弱いって理解してる人間は、生き残るために必死になる」
「それが、人の"強さ"なんじゃないかな」
沈黙。
そして——コメント欄が、ゆっくりと動き始めた。
『……泣いた』
『お嬢……』
『なんかすごく、救われた』
『私も弱いまま、進んでいいんだ』
『ありがとうございます……』
【同接68万人】
「なんだよ、しんみりさせちゃってんじゃねえよYUICA」
セイラが、少し照れくさそうに言った。
「っていうかおまえ、相変わらず人の心に突き刺すのが上手いよな」
「べつに、狙ってないけど……」
「それが厄介なんだよ。天然でやってるから、余計に刺さる」
『わかる』
『天然人たらし』
『計算じゃないから効く』
「うるさいな、おまえら」
私は、少し赤くなった。
その時——時計が、19時30分を指した。
「さて——」
セイラが、立ち上がった。
「販売開始まで、あと30分」
「みんな、準備はいいか?——強制はしないけど、FAKE-3のチケット争奪作戦は、伝えた通りだ」
『おうよ、準備完了!!』
『私は3日目、絶対取る!!』
『艦長!YUICA!シオンちゃん!待っててね!!』
【同接75万人】
そして時刻は20:00を指した。
「よし——チケット争奪戦にむけて……」
セイラが、拳を握った。
「進軍開始!」
三人の声が、重なった。
『うおおおおおお!!!』
『いくぞおおおお!!!』
『3日目で会おう!!!!!』
コメント欄が、歓声で埋め尽くされる。
画面の向こうで、数十万人のリスナーたちが、スマホを握りしめる。
【20:00——チケット販売開始】
時計が20時を指した瞬間、画面が切り替わる。
J-ROCKフェス公式サイトに、リアルタイムの申込状況が表示され始めた。
『J-ROCKフェス2025 チケット申込状況【LIVE】』
今回のフェスチケットは、購入の際に二つの項目を入力する仕組みになっている。
一つ目は「何日目か」。
二つ目は「どのアーティストを応援したいか」。
そしてその集計結果が、チケットアプリとWEBサイトにリアルタイムで表示される。
つまり——いま、どのアーティストのファンがどれくらいチケットを獲得できそうか、誰でも把握できるのだ。
しかも座席配置は、同じアーティストのファン同士が固まるよう配慮される。
上位のアーティストのファンほど、正面アリーナの良席を獲得できる仕組み。
それゆえに——
J-ROCKフェスの戦いは、チケット争奪戦から始まっていると言われている。
「よし、始まったぞ!」
セイラが、画面を食い入るように見つめる。
申込数が、リアルタイムで更新されていく。
『1日目 申込状況』
『2日目 申込状況』
『3日目 申込状況』
三つのタブが並び、それぞれの数字が刻々と変化していく。
【同接82万人】
『うおおおお!始まった!』
『3日目申し込んだぞ!』
『俺も!』
『ブタども、突撃開始だ!』
コメント欄が、歓声で埋め尽くされる。
私たちは、固唾を呑んで数字の推移を見守った。
◆
【20:30——申込開始から30分】
セイラが、画面を確認する。
「よし……3日目の状況を見るぞ」
画面に、3日目の申込ランキングが表示された。
『3日目 申込状況【20:30時点】』
1位 LUNATIC EDGE 55万人
2位 FAKE-3 53万人
3位 DEAD OR ALIVE 12万人
4位 SONIC BLAST 9万人
5位 HANGOUT 7万人
「……っ!」
セイラの目が、大きく見開かれた。
「ほぼ互角……!」
『うおおおおお!!』
『55万vs53万!!』
『2万差しかない!!』
『いけるぞこれ!!』
コメント欄が、爆発する。
「よし!この時点でほぼ互角なら、作戦は成功だ!」
セイラがガッツポーズを決める。
私も、思わず拳を握りしめた。
「すごい……本当に、みんなが3日目に集中してくれたんだ……」
『当然だろ!』
『お嬢のためならなんでもやる!』
『モブとブタの連合軍、なめんな!』
【同接85万人】
「次は——1日目だ」
セイラが、タブを切り替える。
「動員を使わなかった1日目……どうなってる?」
画面が、切り替わった。
『1日目 申込状況【20:30時点】』
1位 HANGOUT 10万人
2位 FAKE-3 8.3万人
3位 KING JOKER 7.2万人
4位 HEAVY SMILE 6.6万人
5位 YOKONORI 6.4万人
「——2位!」
セイラの声が、弾んだ。
「動員なしで2位につけてる!」
『マジか!!』
『実力だけで2位!!』
『さすがFAKE-3!!』
「1位のHANGOUTとは1.7万人差……でも3位以下とは1万人以上の差がある」
セイラが、冷静に分析する。
「このまま行けば、1日目も安泰だ。セイラの作戦、完璧じゃん!」
私が、興奮気味に言った。
「ああ。曲の力と、これまでの実績が——」
セイラが、満足げに頷きかけた。
その時——
『え、待って』
『1日目のランキング、動いてない?』
『なんか数字が……』
コメント欄に、異変を知らせる声が流れ始めた。
「——ん?」
セイラが、画面を凝視する。
1日目のランキングが——動いていた。
しかも、尋常ではない速度で。
◆
【20:40——申込開始から40分】
『1日目 申込状況【20:40時点】』
1位 HANGOUT 25万人
2位 KING JOKER 19万人
3位 YOKONORI 17万人
4位 FAKE-3 8.8万人
5位 HEAVY SMILE 6.9万人
「——は?」
私の声が、裏返った。
「え? なに? さっきまで2位だったのに——」
「4位に落ちてる……!」
シオンが、青ざめた顔で呟く。
『えええええ!?』
『なんで!?』
『……』
『これって……』
『嘘だろ』
コメント欄が、混乱で埋め尽くされる。
【同接88万人】
「待て……」
セイラの目が、素早く左右に泳いだ。
これは——彼女が頭をフル回転させている時の癖だ。
「急上昇したのは……HANGOUT、KING JOKER、YOKONORI……」
セイラが、呟く。
「全部、30分過ぎから動きを合わせたように跳ね上がってる……」
そして——彼女の目が、何かに気づいたように見開かれた。
「……この3組、全部グローバルミュージックのアーティストだ」
「え?」
私は、すぐには意味がわからなかった。
「え?グローバルミュージックだからって……」
「おそらく水面下で、ファンを動員された」
セイラが、スマホを取り出した。
素早くSNSを検索する。
「——あった」
セイラの声が、低くなった。
画面に、あるツイートが表示された。
『【緊急】HANGOUTファンクラブより
J-ROCKフェス1日目のチケットを申し込んでゲットした方全員に、
HANGOUTライブ年間優先パスをプレゼント!
今すぐ申し込もう! #JROCK2025』
「なっ……!」
私は、絶句した。
『え、マジ?』
『あファンクラブからさっきメール来てた!』
『年間優先パスって、普通に買ったら5万円するやつだぞ』
『そりゃ申し込むわ……』
他のアーティストも、同様だった。
『KING JOKERもファンクラブ特典発表してる!』
『YOKONORIも!』
『グローバルミュージック系、全部だ……』
「しまった……」
セイラが、唇を噛んだ。
「まさか1日目を狙われるとは……」
「え? どういうこと? 行動が読まれてたの?」
私は、混乱していた。
「おそらく——」
セイラの声が、苦々しい。
「こんな事が出来るのは鬼頭麗香だ。あの策士、最初からこれを準備してたんだ」
「くっそ!3日目に集中する作戦を読んで、1日目で足を掬う算段だったってことか……」
「でも——これ、どうなるん?」
シオンが、不安そうに聞いた。
セイラの表情が、険しくなる。
「このままチケット争奪戦で負けると——」
一呼吸、置いた。
「最悪の場合、1日目の投票で3位以内に入れない」
「つまり——」
セイラの声が、震えた。
「最終日に、進めなくなる」
沈黙。
コメント欄も、静まり返った。
『え……』
『嘘だろ……』
『そんな……』
【同接92万人】
画面の数字は、無慈悲に動き続けている。
1位 HANGOUT 28万人
2位 KING JOKER 22万人
3位 YOKONORI 20万人
4位 FAKE-3 9.1万人
5位 HEAVY SMILE 7.2万人
差は、開く一方だった。
私たちは——
完全に、出し抜かれていた。
(つづく)




