「知らない」
「こんなあたしにも
心は、あるんでぇ、
ちょっと、いーかげんにして」
ていう寝言を聴いた
えっ、起きてんの?
と勘違いしたけど
ホントにただの寝言だったよ
えーっ?
そんな想いさせてるの、ダレ?
ま、まさか私じゃないよね?
でも、
そんな寝言を云うわりに
そのあとはとてもしあわせそうに
スースーと寝息を立てて寝てる
なに、それ?
わけわからん
わからないこともいっぱいあるけれども
でも、一緒にいる理由?
それは
「知らない」
あの年
真夏の花壇に咲いていたのは
なんの花だっただろう?
図書館へ向かうすこし好きな感じの家の
花壇に咲く可憐で真っ白な花
花の名前には疎くって
私はその花の名前を知らなくって
あゝ、こんなとき
彼女がいてくれたらなぁ
って想ったのをよく憶えている
彼女はなんでも知ってるけど
私はホントに、なんにも知らないから
あまりになんにも知らないから
まぁ、少しは
知恵と知識を得たくて
図書館へ向かっていたわけだが
あんな真夏の真っ昼間に日傘差しながら
図書館へ向かわなくても
エアコンの効いた部屋へ戻り
スマホで撮った画像をみせて
彼女に尋ねればいいんだというのは
知っていたよ
でも
それでもさ
そのときはただひたすらに
とても静かで清潔で白い感じのする
徒歩5分の図書館へ
行きたかったんだ
なぜかは
「知らない」