三話
「そういえば、名前を聞くのを失念していた。
私の名前は、エルザ・オーバー・ハンドレッド。この世界が今後、危機的な立ち位置になる可能性がある。選ばれた貴方には私達と来てもらいたい。」
凛として背筋を伸ばし威圧感のある立ち姿で目の前のエルザと名乗る女は自己紹介を始め、同伴している長身の男に目線を流すと男が口を開いた。
「俺はデント・ボーダー・エイティー、お嬢とペアを組ませてもらってるオーダーの一人さ。」
そう答えた途端その場でダンスのステップを踏むかの如く、一回転して紳士帽を抑えながら得意げに自己紹介をした。
目の前にいる二人の雰囲気に圧倒されつつ、自分自身も姿勢を正して自己紹介をした。
「俺は後藤 敦、一体全体何が何だか分からない状況なのだが、詳しい話を教えてくれないか?」
不安げになりつつも自分の名前を語るとそうかと頷き、暫く間が空いた後にエルザとデントは説明を始めた。
「私達の世界は貴方達が言う所の魔法が使える。魔法を行使できる者をこちらの世界ではヒューメイジと呼ばれ、そして私達もその内の中の一人という訳なのだ。」
「そして…」
そう話を続けようとするエルザの言葉を遮り、デントが話し始めた。
「それで御生憎様、魔法が使えない人間たちがいるこの世界でちょっとお痛なヒューメイジの悪人が悪事を企んでるってワケなんだよなァ!」
ドヤ顔を決めてやってやったと言わんばかりの表情で腕を組み、満足気になっているデントを横目で見てエルザが軽く眉をひそめながらはぁ…と溜息をつくと、また話を続け始めた。
「デントが言った様に我々、ヒューメイジにも悪人や良識ある者も存在する。だからこそ私達の様な、悪に反抗するヒューメイジで構成された組織のリザレクションがある。
だからこそ、エルドライトを拾い上げて力を取得したこの世界の人間である貴方に協力して貰いたいのだ。」
話を聞けば聞くほど自分の頭の中に疑問が湧いてくる。何故、自分が選ばれたのか?他に自分の様な境遇の人はいるのか?一体リザレクションとは何なのか?
そう考え込んでいる隙に窓の外から何かが飛んでくるのが見えた。
けたたましい速さで飛んできて、壁や窓をぶち破り部屋にいた三人の前に 動物に似たなにか が唸り声を上げて立っていた。