二話
自分の意識は昨晩に比べて鮮明になっている。
「なんだ、疲れて夢でも見てたのか?」
まるで昨日起こった事が夢のように感じれるほど清々しい気分で不思議と体調も良かった。
残業続きで変な夢でも見たのであろうとふぅ…と胸を撫で下ろした。
家のリビングに移動し、唯一の楽しみである、好みのドリップコーヒーをマグに淹れ、ソファーに座り込み味を楽しんでいると家の中に違和感を覚える。
「なんだこの感じ…」
まるで空気が歪んでいる様な雰囲気になっており、昨晩に経験した目眩が再発した。
その時であった、部屋の何も無いフローリングの中心でブォンと音を立てて、亜空間のようなホールが開いた。
「おいおい嘘だろ、こんなのありえないって!」
目の前の空間に現れた謎の穴に戸惑ってしまう。
そしてほんの数秒であった。
わずかに細かな稲妻がホールの周りを走ると中から人間がでてきた。
その姿は昔に見た創作の世界で描かれていたスチームパンクの住人のような女であった。
「あなたが選ばれたこの世界の人間ね?これから、この世界は崩壊するから私達に協力してくれないかしら?」
ホールから出てきた女が口走ると、その後ろから
さらに長身の人が現れた。
「お嬢それはねぇだろ?ほら、奴さんの顔を見てみろ、何も分かっちゃおらんぜこりゃ。」
特徴的な話し方をする派手な装いの男が登場し、その二人組はまるで別世界の人間のようだった。
「あんたら誰だよ!?なんで俺の家に現れたんだ!?
俺はまた夢でも見てるのか!?」
目の前で起こった事態に対して混乱を隠せなかった。
「奴さんさぁ、エルドライトって石拾わなかったかい?」
男が聞いたことが無い名前の物を口にした。
恐らく昨日拾い上げた物かと聞くと
「やっぱり奴さんがそうかぁ!その石を触るとウチらの世界の力がね、奴さんの体と共鳴して俺たちと同じくヒューメイジになるんだ。」
「ヒューメイジってなんだ?」
聞いた事が無い単語に戸惑う。
そして、黙っていた女がこの状況を見かねたように口を開く。
「あなた達の様なこの世界の人間がいわゆる魔法というものを使えるようになるのよ。そして、私達リザレクションが石を拾った選抜者を迎えに来て、仲間に引き込むって事。」
目の前にした現実と吐き出された言葉に無言で頷くしかなかった。