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プロローグ

さく ざら、さく ざら

霧に包まれた夜の森の奥、深海に似た静けさを破るように響く己の足音。丸一日、無理矢理動かし続けた体は鉄になったように重く、また放置した体中の傷は焼け付くように痛んで血が止まらない。これはまずい、と感じるのに頭はちっとも働かず、昨晩に戻れたらなんて叶いっこない考えを繰り返すだけ。がさり、と自分以外の足音が聞こえたような気がして立ち止まった。

(大丈夫、気のせい)

「あいつら」は、まだ諦めていない。でなきゃあんな暴挙に走るわけがないのだから。遠くへ、できるだけ遠くへと焦っているのに、体が動かない。力の入れ方も忘れてしまった。あの時、食料を持ち出してくればよかった。捕まらないように、殺されないように、ということしか考えていなかった過去の自分を叱りつけたい。変なことを考えていたからだろうか、踏み出した足の力が抜けた。受け身を取る間もなく体が地面に叩きつけられる。

「いっ…」

木の根にでもぶつけたのだろうか、肋骨のあたりに強い痛みが走る。とっくに限界を迎えていた体は脳と完全に遮断されたかのように、指先を動かすことすらままならない。ついに痛みすら感じられなくなって、代わりに感じるのは強烈な寒気。瞼がゆっくりと閉じていくのに抗えない。いっそこのまま死んでしまえば楽なのではないか、という馬鹿な考えさえも、広がった闇に落ちて行って消えた。

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