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第8話
「ねえ、このシーンどう?」
放送部の編集室で、太一はモニターに映る映像を私に見せていた。梅雨の雨音が窓を打つ中、彼の撮影した学校生活のドキュメンタリーが展開されていく。
「さすが太一、角度がいいね」私は感心して言った。
「でしょ?カメラは嘘をつかないんだ」太一は得意げに胸を張った。「ところで…」
彼は少し言いにくそうに続けた。「最近、結花と一緒にいる時間減ってない?」
その質問に、私は思わず目を逸らした。「そんなことないよ。お互い忙しいだけだよ」
「そっか…」太一は納得したようでいて、どこか懐疑的な目で私を見た。「でも俺のカメラは見ていたんだ。結花が亮太に話しかけるのを見守る陽菜の表情を」
「何言ってるの」私は笑って取り繕った。「結花を応援してるに決まってるじゃない」
太一はしばらく黙って編集作業を続けた後、ぽつりと言った。「陽菜、昔みたいに正直じゃなくなったね」
その言葉は、まるで雨のように私の心に染み入った。そうだ、私は正直ではなくなっていた。結花にも、太一にも、そして自分自身にも。