第5話
「ふーん、そういう企画なんだ」
学校の中庭、桜の木の下でのこと。結花は私の説明を聞き終え、少し考え込むような表情をした。初夏の日差しが彼女の茶色い髪を明るく照らしている。
「亮太くんと一緒に作業するんだね…」彼女の声には、わずかな羨望が混じっているように感じられた。
「あくまで部活の企画だから」私は急いで付け加えた。「それに、これで結花と亮太くんの接点も作れるかもしれないよ」
結花は顔を輝かせた。「そうだね!私もなんか手伝えることあるかな?」
「もちろん」私は微笑んだ。「実は美術部の作品に合わせて短編を書く予定だから、アイデアを聞かせてほしいな」
「任せて!」結花は拳を握り、決意に満ちた表情を見せた。「それより、私からもいいニュースがあるの。クラスの課題で亮太くんとペアになれたんだ!」
「えっ、本当に?」
「うん!歴史の調べ学習。二人一組でテーマを決めて発表するの」彼女は嬉しさをかみしめるように目を閉じた。「作戦通りだよ!」
私は心から笑顔で答えた。「おめでとう。チャンスだね」
だが、その言葉を口にしながら、古本屋での雨宿り、そして先ほどの会議での亮太くんとの会話が頭をよぎった。彼と言葉を交わす時間が増えることへの期待と、結花への罪悪感が入り混じる奇妙な感覚。
*私は本当に結花を応援できているのだろうか。*
その自問を振り払うように、私は話題を変えた。「そういえば、太一見なかった?」
「ああ、放送部の準備で忙しいって。文化祭のドキュメンタリー作るんだって」
二人で学校内の活気について話しながら、私の心の中に小さな波紋が広がっていった。