第14話
夏休みが始まって間もない日、美術部の特別活動に招かれた。合同企画を進めるため、文芸部からは私一人が参加していた。
美術室には数人の部員がいて、それぞれ熱心に制作に取り組んでいた。亮太くんは窓際で風景画を描いていた。
彼の絵を遠目に見ていると、美月先輩が優雅に近づいてきた。
「紅林さん、北野君の絵、どう思う?」彼女は静かな声で尋ねた。
「素敵です。特に光の表現が…」
「そうね」美月先輩は納得するように頷いた。「でも、最近彼の絵には別の特徴も現れてきているわ」
「別の特徴?」
「ほら、見てごらん」彼女は亮太くんの最近の作品を何枚か見せてくれた。「これらには共通するモチーフがある」
私は絵を丁寧に見た。確かに何か共通点がある。本の形、特定の色彩、そして…窓辺に座る少女のシルエット。
「これは…」
「気づいてないの?」美月先輩は意味ありげな微笑みを浮かべた。「彼の絵には、あなたを思わせるモチーフが増えているのよ」
その言葉に、私は思わず息を飲んだ。亮太くんの絵の中に、私の存在が?そんなはずは…
「勘違いじゃないですか」私は慌てて否定した。「それに、亮太くんは…」
「結花さんのことは知っているわ」美月先輩は静かに言った。「けれど、心は制御できないもの。彼自身も気づいていないのかもしれないわね」
美月先輩は亮太くんの方へ歩み寄り、何か話しかけた。彼は最初驚いたような表情をしたが、次第に真剣な面持ちで先輩の言葉に耳を傾けていった。
美月先輩が立ち去った後、亮太くんはしばらく絵筆を止め、考え込むように窓の外を見つめていた。そして、ふと私の方を見た。
私たちの視線が交差したとき、何かが変わった気がした。彼の目には、これまでとは違う複雑な感情が浮かんでいたように思えた。




