第13話
雨の日、図書室。窓を打つ雨音を聞きながら、私は一人で静かに座っていた。手元のノートには、亮太くんへの気持ちを率直に綴ったページがあった。
*私は彼の横顔を見るたびに、言葉にできない感情を抱く。それは友情とも、単なる尊敬とも違う。でも、この気持ちを認めることは、結花を裏切ることになる…*
そのページを静かに破り取った。雨音が私の小さな行為を隠してくれるように、激しさを増していた。
破いたページをどうするか迷った。捨てるべきだろうか。でも完全に手放す勇気もなく、結局は読んでいた本の間に挟んでおくことにした。心の片隅に仕舞い込むように。
図書室の扉が開く音がして、振り向くと太一が入ってきた。彼は少し驚いたような表情で私を見た。
「あれ、陽菜。こんなところにいたのか」彼の目は私の顔、そして手元の破られたノートへと移った。
「ちょっと静かな場所が欲しくて」私は平静を装って答えた。
太一は少し迷うような表情を見せた後、隣に座った。「陽菜、何か話したいことない?」
「特には…」
「そう」彼は深いため息をついた。「でも、いつでも聞くよ。約束したろ?正直に話し合うって」
太一の優しさに、私は思わず目を伏せた。本当は全て打ち明けたい。でも、その勇気が出なかった。
「ありがとう。大丈夫だから」
彼は諦めたように立ち上がった。「そう言うなら、無理には聞かないよ。でも…」彼は去り際に振り返った。「結花も最近、何か変だと思わない?」
その質問は私の胸に突き刺さった。結花の様子が変なのは、もしかしたら私のせいなのかもしれない。そう思うと、更に罪悪感が強まった。
「何とかしなきゃ」太一は小さく呟いて、図書室を後にした。
窓の外では雨がまだ降り続いていた。空と同じように、私の心も晴れない。




