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15-ⅳ)羽ばたく〜王子の買い物

 あるじ用の部屋の前を離れ、独り廊下を歩くルークは思った。

『今年は、兄さんの知らない一面を知る機会が多いな』

 初めて兄の女の好みを知ったし、ハッサンからは兄の初恋の話も聞かされた。

『それもこれも、サクが現れてからだ』

 そして、今し方、兄とカーミル王子との会話で、スペアについての考え方やルークへの思いを知った。

 ふと、立ち止まり、腕組みするルーク。

『今まで そんな話、した事なかったな……。いや、俺が兄さんの事をけてきただけだ。出来のいい兄さんに引け目を感じて、自分から何も知ろうとはしなかった……』

 ルークの中で、そんな後悔もあった。と、その時、声をかけられた。サクだった。

「あ! ルークさん」

「やぁ、サク」

「カーミル王子、知りませんか?」

「たぶん、兄さんの所じゃないかな」

 盗み聞きしていたのを隠すように、あえて、「たぶん」と言うルーク。

「どうしたの?」

 サクから珍しくカーミル王子に用があると言う。その上、彼女の後ろには女性従業員が控えているので、何事かと思い、ルークがサクに訊ねたのだ。

「今からカーミル王子とランチを兼ねて、お買い物に行こうと思って」

「え?」

 珍しい組合せに驚き、ルークは首を傾げた。



 街の通りでは皆が「じろじろ…」とルークたちを見ている。道ゆく人もカフェで休む人々の視線も彼らに釘付けだ。

 ルークは思わず苦笑いした。

『なぁんか、かえって目立つなぁ……』

 一般庶民に扮したカーミル王子を囲むように、ローゼンやレイと共にルークも警護に当たっているのだが、

『兄さんにカーミル王子、おまけにレイさんまでいるんじゃ、目立ち過ぎだろ』

 と、思うルークの傍らで彼の顔をチラリと見遣るのは、サクの後ろを歩くカヲルだ。

『ずば抜けた美形が四人も勢揃いしてりゃ、みんな見るよな』

 と、カヲルに自分も美形のうちにカウントされているとは知らないルーク。カヲルの視線がカーミル王子の斜め前にいるローゼンに移る。

『ローゼンさんの人選、間違えてるよ……』

 と、心配しているカヲル。しかし、ローゼンは

『カーミル王子は目立つからな。木を隠すなら森の中じゃないが、レイに来てもらって正解だった』

 女性たちの視線がレイだけに集中していると勘違いしている。レイはレイでカーミル王子の隣で

『アーッ! クッソ! えッらい視線がチクチクするゥ。今日はいつもの四倍はしんどいが!』

 ずっとナーバスになっていて、心の声はすっかり訛っている。

 サクの隣を歩く女性従業員のモナはさっきから脂汗をかきっぱなしだ。

『ひぇ〜! こんな突き刺さるような視線なのに、なんでサク様は平気なの !?』

 サクはレイと顔が似ているので兄妹だと一目で分かるし、普段のローゼンとの街歩きで街の人々から勝手に恋人認定されているので、今更、嫉妬される事もない。そもそも鈍いサクは妙な視線にも気付いておらず、

『みんなとお買い物、楽し〜』

 と、ぐらいにしか思っていない。呑気なものである。

 モナやサクの前を歩くヒカルは不機嫌そうな顔だ。

『ケッ! ちょっと顔がいいからって調子こいてっと、ぜってぇバチ当たんぞ!』

 と、ローゼンたちに嫉妬しているが、四人の誰一人として調子に乗るどころではない。

 少し離れた所からはハッサンらカラヤ隊の面々がこっそり警護をしている。

『以前の忍びの護衛より、カラヤの護衛の方が多いなぁ……』

 カーミル王子、カラヤの警備態勢に驚いている。一方で、ローゼンは警備費用について考えている。

『非番の人足を動員したから、後で特別手当を出さないといけない』

 つまり、カーミル王子の為にカラヤ商店は出費がかさんだ。今は城で蔑ろにされている身とは言え、一国の王子である。預かっている以上、責任がある。

『後で、あの狸領主からキッチリ警備費用を請求してやる!』

 と、しっかり ふんだくる気でいるローゼン。彼は王族相手でも容赦しない、根っからの商人である。

 このように錚々そうそうたる顔触れと厳重警備で出かけるに至った経緯いきさつは こうだ。


 実はカーミル王子、カラヤ商店を去る前に自分の給金で子供たちへの土産におもちゃを買いたいと、サクに相談していた。しかし、未婚で子供のいないサクでは何がいいか分からないので、

「カーミル王子の子供たちと同じぐらいの年の子がいる人に頼みましょうか」

 というサクの提案により、女性従業員のモナに付いて来てもらう事にしたのだ。

 ところが、サクは直前になって兄レイに猛反対されたのである。

「お兄ちゃん! カーミル王子たちと お買い物に行って来るね」

 宝石鑑定の仕事を終えてカラヤ商店に戻って来たレイにサクがそう伝えると、レイがいきなり怒った。

「はァ!? 何が一緒に買い物だ! 却ッ下だァ!!」

 美しい顔だが、レイの怒鳴り声は迫力がある。カラヤの荒い人足たちにも引けを取らない、腹からグワッと出されたようなドスの利いた声だ。

 怒鳴られて「しゅん…」とする弱いサクだが、かろうじて言い返す。

「えー、でもぉ……、約束したしぃ……」

「いいか、よく聞け」

 と言うと、レイはカーミル王子を無遠慮に指差す。彼にとっては高貴な王族なんぞよりも、か弱い妹の方が ずっと大事だ。

「城の連中がこいつに興味なくてもだ。世間にはカネ目当てに人質に取ろうかって輩もいるんだぞ。そんなのに、お前みたいなのが巻き込まれてみろ。命があるかどうか分からんだろ!」

 レイのこの発言はサクだけに聞かせているものではない。そばにいるカーミル王子にも言っているのだ。

 か弱い妹を心配するレイの指摘に、カーミル王子は

「すまない、サク。買い物は取り止めにしよう」

 引き下がるが、ローゼンがレイを説得した。

「いや。どうせなら、レイも一緒に行こう。警備の数も増やすからさ」

「そ、そこまで、お前が言うんなら、仕方ない」

 屈強なカラヤ隊率いるローゼンに言われると、レイも納得するしかない。

 実のところ、この厳重警備はカーミル王子の為だけではなかったのである。王子と行動を共にするサクやモナの身の安全の為でもあるのだ。



 買い物の前にランチを食べに行くローゼンたち。

 ローゼンはカーミル王子の身分を隠す為、彼の名前を伏せて「若様」と呼ぶ。

「若様。警備の事もありますので、昼食はカラヤのレストランにさせて頂きます」

 それに「うむ」と、答えるカーミル王子。レストランの看板にも星を二つ重ね合わせたカラヤ家の紋章『二重星ダブル・スター』が入っている。

 ローゼンたちがカラヤのレストランに入ると、支配人が丁重に出迎えた。

「お待ちしておりました。ローゼン様」

「今日は大事なお客様をお連れしているから、よろしく頼むよ?」

「はい、それはもう。先程、お使いの方から伺っております。二階の特別室をご用意させて頂いておりますので、ご案内致します」

 出かける前に、ローゼンはカラヤ商店から使いを出していたのだ。

 二階の特別室で美味しい料理に舌鼓を打つ面々。ヒカルなどは貪るように食う。

「お前、もっと、お上品に食べられないのかよ」

 と、呆れるカヲルの言葉遣いも、とても上品とは言えない。それを苦笑いで見ているモナは天堂兄弟と対面する席にいる。

 ローゼンは遠慮がちなサクやモナに

「サクもモナも遠慮なく食べてくれ」

 と、促す。

「それにしても、お前たち二人は わたしを守る気はさらさら無いのだな……」

 カーミル王子が言うのは、対面側にいるローゼンとレイの事だ。手練てだれの二人はサクの両側を陣取っている。

「当然だ」と、即答するサクの兄・レイ。

「まぁ、ルークと天堂兄弟もいるので……」

 と、サクの恋人気取りなローゼンは言葉を濁す。

「王子…じゃなかった。若様。大丈夫ですよ。中も外もウチの連中が見張ってますし……」

 カーミル王子の隣に座るルークがフォローする。

「ほら、サク。『あ〜ん』してごらん?」

「えっ!? じ、自分で食べられるよ!」

「お前……!」

 ローゼン、サク、レイの遣り取りを見て、「ぷっ……」と、カーミル王子が吹き出す。

「なんです?」

 怪訝な顔のローゼンにカーミル王子が笑いをこらえながら答える。

「いや…。あの時、城から帰る時に父上を脅した男とは思えない言動だな、と思ってな……」

 カーミル王子の父親である西南の領主をローゼンが


「ああ! 千騎は地味だったなァ〜。せめてばん……いやいや、50万にしておけば良かった! ハッハッハッ!」


 と、脅した時の事を思い出す一同。部屋の中を警備するカラヤ隊からも一瞬、失笑が漏れる。

 子供のように “むくれっ面” をしたローゼンが

「俺だって普通の人間ですよ!」

 サクに拒否されて仕方なく、ご飯が乗ったスプーンを自分の口に運んだ。

 

 それをじっと眺めているのは警備のカラヤ隊ではなかった。対面する建物の二階の窓から、こっそり覗くのはサクとレイの元姉妹である三羽烏だ。

「高級レストランの二階席なんて、羨ましい〜。しかも、ローゼンに『あ〜ん』してもらえるだなんて……」

 と、サクを羨む華夜。

「四人の美形と同席で嬉しそうだな。あの女」

 輝夜が言う「あの女」とはモナの事だ。しかも、ヒカルと対面する席にいる事が、輝夜には気に入らない。ただし、ヒカルは美形ではないので、モナの眼中には無いのだが。

「軽く挨拶してやろうか?」

 と、意地悪い笑みを浮かべて手裏剣を出す美夜を華夜が制止する。

「やめなさい。外には大勢のカラヤ隊がいるのよ? 雑魚ざことは訳が違う。こっちはひとまりもないわ。それに ──」

 と、華夜が視線をレイに移す。

「兄さんは勘が鋭いから、すぐに気付かれてしまうでしょうね」

 華夜に指摘されて、美夜と輝夜がレイに対して

「チッ!」

 と舌打ちした一瞬、殺気立つ。

 殺気に気付いたレイがこちらを見た。

『ヤバッ!』とっさに窓の下に身を隠す三人。

美夜『こ、怖ッ……!』

輝夜『し、心臓に悪し……』

「ほら! 言わんこっちゃない」

 と、小声の華夜も心の臓がバクバクしている。悪い事をしようとするからである。

「仕方ない。とっとと、ずらかるか……」

 美夜に続いて華夜も輝夜も息を殺して、その場を離れた。


 急に外へ視線を向けたレイ。彼の気が一瞬にして変わった事に気付いたローゼンが訊く。

「どうした? レイ」

「いや…、一瞬、殺気を感じたんだが、たぶん、二人だ。すぐに失せたな……」

 ローゼンが部屋の中で控えているカラヤ隊に指示を出す。

「窓を閉めろ!」

 窓が閉められ、給仕係がキャンドルに火をともす。

「探して捕らえますか?」

「いや。持ち場を離れない方がいい」

 指示を仰ぐカラヤ隊にそう答えるローゼン。カーミル王子は恐怖による緊張から手にしたスプーンを握り締めている。が、狙われたのは彼ではない。

「お、お兄ちゃん……」

 レイの袖をつかんで不安がるサクのせなに、ローゼンが手を当てて声をかける。

「心配ないよ、サク。念の為だから」

「ああ。たぶん、大丈夫だ。向こうも俺に気付いたんだろう。すぐに殺気を消したぐらいだからな。当分は襲って来ないさ」

「う、うん……」

 兄に言われて、ひとまず安心したサクは袖から手を放した。と、そこへローゼンが不意打ちを掛ける。

「ほら、サク。あ〜ん」

「あ〜……んん?」

 思わず、ローゼンが差し出したフォークの先を口にしてしまったサク。

『子供っぽい罠にハマってしもうたァ……! うぇ〜ん、情けなァ〜ッ!!』

 口を「もぐもぐ」させながら拳を握り締めて悔しがるサクと、「ニンマリ」と笑うローゼンに呆れるレイたちだったが、お蔭でみんなの緊張が解けた。サクも先程の恐怖を忘れて、口にした料理を味わう。

『ほんでも、この照り焼き、美味し〜ぃ♡』

 サクが嬉しそうに ほっぺに手を当てる様を見て微笑んだ後、ローゼンがレイに向かって言う。

「それにしても、よく気付いたな。レイ」

 ローゼンの一言の後に驚嘆の声が続く。

ルーク「ホント、凄いよ。数まで分かるなんて」

カヲル「なんで分かったんです?」

ヒカル「人間か? テメェは」

 カーミル王子やモナは驚きのあまり無言で「こくこく」うなずく。サクには兄レイの凄さはいつもの事なので、驚かない。

 レイは目を丸くしてローゼンの方を見る。

「えっ? お前は気付かなかったのか、ローゼン」

「いや、今のは俺は分からなかったよ」

「意外だな」

「たぶん、大した事ないから分からなかったのかもしれない。いつも “ここぞ” という時は、大概は分かるから」

 ローゼン、自慢げなく、それを事も無げに言う。

「……なんか、そっちの方が凄くないか?」

 と言って、『上には上がおるもんやな』と思うレイだったが、

『どっちも化け物だ』

 ローゼンとレイを除いた、この部屋にいた全員にそう思われていた。が、そんな事も知らず、嫌がるサクにしつこく食べさそうとするローゼンを「ええかげんにせえ!」と、たしなめるレイ。この二人には『化け物』としての自覚が全く無いのだった。



 レストランの代金も後で領主に請求される事に。

「請求書は領主様宛てに書いて、後でカラヤ商店に送っておいてくれ。俺が直接、城へ取り立てに行くから」

「かしこまりした」

 支配人に言い付けた後、ローゼンは皆を従えてレストランを出る。表はすでにカラヤ隊によって不審者がいないかチェック済みだ。

 一行はそのまま玩具おもちゃへ向かう。

 道すがら、ローゼンがレイに言う。

「逃げたかな?」

「そうだな。相変わらず、視線はチクチクするけど、殺気はないな」

 玩具屋までは何も起きずに済んだ。チクチクする視線は女性たちからの好意と嫉妬の視線なのだが、鈍いレイには その視線の理由が分からない。



 訪れた玩具屋は西南の都でも一二を争う大型店で品揃えが豊富だ。

「若様。これなど いかがでしょう?」

 ルークが薦めたのはドールハウスだ。手の込んだ作りに「ほう…」と感心するカーミル王子だったが、ローゼンが値札を見て言う。

「それは30万リルもする高級品だな」

「── て、事は、純正金貨1枚、混ぜ物金貨30枚分ですか !?」

 と、カヲル。ヒカルも「た、ッけぇ……。子供のおもちゃのくせに」と驚く。

 ローゼンが肩をすくめて言う。

「雑用係の少ない給金では買えない代物です」

「そうか……。それは残念だな」

 肩を落とすカーミル王子にレイが

「後でお城へ請求してもらえばいいんじゃないのか?」

 そのように言うが、カーミル王子は

「いや。自分で稼いだ分で買いたいのだ。これが今の自分の実力でもあるし、自分の力で子供たちにしてあげたいのだ」

 殊勝な事を言うので、レイも「へー」と、感心する。

「それでいいと思いますよ?」

 モナがカーミル王子を慰める。

「何も高い物だからと言って、子供が気に入るとは限らないし、女の子だからと言って、女の子らしい物を好むとも限りませんしね。結構、難しいんですよ? おもちゃ選びって」

 モナは高級なドールハウスから “ままごと” のおもちゃに視線を移して、それを手に取って、見る。

「子供が気に入るかどうかは別として、親があれこれ悩んで買ってあげるのだって無駄ではありませんよ」

 そう言って、モナは微笑んだ。

「そうか……」と、カーミル。

「若様。これは?」

 サクがぬいぐるみを手に取って、カーミル王子に差し出す。が、

「それは お前の好みじゃないのか?」

「もう!」

 兄レイが茶々を入れるので、サクがほほをふくらませて怒る。

「ぬいぐるみは、すでに乳母が買い与えているな」

「そうなんだ……」

 すまなさそうに答えるカーミル王子と、「しゅん…」とするサクを見たモナが言う。

「別にかぶってもいいのでは?」

「え?」と、カーミル。

「他人が買い与えた物より、お父さんが買い与えた物の方が特別ですよ」

「そう言えば、わたしも、おばあちゃんから お人形を幾つもお土産にもらった事あるけど、嬉しかったよ?」

 モナとサクの助言で気が変わったカーミル王子が決める。

「そうなのか……。では、ぬいぐるみにしよう」

 王子はモナやサクと共に

「くまがいいかしら?」

「うさぎはどうだ?」

「この猫、可愛い〜♡」

「大きさは どうしたらいい?」

「肌触りも大事ですよ?」

 などと、ぬいぐるみを吟味し始めた。

 ぬいぐるみを手に取って選ぶカーミル王子にヒカルが訊ねる。

「ところで、子供って、何人いんだよ?」

「三人だ。全て女児で、側室との間に出来た子でな。8歳と、5歳と、3歳だ」

「三人もいるんですか……」

 と、目を見開いて驚くカヲル。

「わたしは17歳で最初に側室を持ったからな。まぁ、男なら、大体 二十歳はたち前後で結婚する者が多いから、わたしぐらいの年齢としで妻が三人いれば、子供が四、五人いるのが普通だな。わたしなどは少ない方だ」

 というカーミル王子(26歳)の話を聞いたカヲルがローゼン(25歳)、ルーク(23歳)、レイ(25歳)の顔を順に見る。彼らは美形であるにもかかわらず、全員、未だに独身だ。

「なんだよ」

 と、レイに詰め寄られて、カヲルが言いにくそうにする。

「いやぁ……。確か、皆さん、若様と そうお年齢としが違わなかったようなぁ、と思って……」

「まだ独身か。えらい違いだな」

 と、バカにして、ほくそ笑むヒカル。

レイ「余計なお世話だ!」

ローゼン「フンッ! ヒカルは隠し子でもいそうだな」

ルーク「そうだよな。そのうち、認知しろって現れるんじゃないか?」

 などと、ヒカルに仕返しする三人。

モナ「不潔ですね」

サク「ですね」

 と、女性たちもヒカルを軽蔑の目で見るので、ヒカルがローゼンやルークに向かって怒りをぶつける。

「おめぇらだって金持ちなんだから、どうせ、妾の二人も三人も持つんだろうが!」

「は? そんな相続争いの種になるような事、御免だな」

「そうそう」

 ヒカルに言い返すローゼンにルークがうなずく。

「へー。ルークも同じ考えとは意外だな」

 と、レイが驚くのも無理はない。ルークはかつて踊り子の華夜、美夜、輝夜に「三人まとめて俺と付き合って下さい!」と欲をかいた事があるからだ。

「まぁ、あれは若気の至りだよ……」

 バツ悪げに頭をかくルーク、

「恋人欲しさに焦ってたのもあるかな」

『ホントは兄さんに勝ちたかっただけなんだけど……。昔の俺って小さい』

 と、兄への劣等感からとは恥ずかしくて言えないので、適当な理由を言った後、家族の事を話す。

「実のところ、うちは父さんも、じじ様も伴侶は一人だけだから、そっちが当たり前って感覚なんだよ。父さんたちが浮気したって話も、結婚前に女遊びしてたなんて話も聞いた事ないし」

「もし、浮気なんてしてたら、未だに『恨み節』を言われてる事だろうよ。女の恨みは怖いからな。ハハハハ」

 と、ローゼンも呑気に笑うあたり、平穏な家庭であるらしい。

レイ「なーんだ。うちと一緒じゃないか」

サク「みぃんな、真面目……」

モナ「うん、うん。それがいいです」

カヲル「お前の常識、ローゼンさんたちには通用しないな」

ヒカル「うるせー!」

カーミル「ふむ。庶民の常識とは色々なのだな」


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