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大長編 安楽椅子ニート 瀬能杏子とデビルウィルスアイランド

男A「おい、起きろ」

男B「やはり、この女の人に起こしてもらった方がいいんじゃないですかね?」

男A「かまいやしねぇよ、おい、起きろ」

男C「オバサン。この女、起こせない?」

女A「なんであたしが?・・・オバサンって誰よ!」

男A「お前しか、いねぇだろぁがぁ」

女A「はぁ?・・・誰がオバサンよ!」

男B「構いはしませんがね、ここは一つ冷静にってんでね」

男A「もしもーし。全然起ねぇな。もしかして死んでるのか?」

男C「息してるから、生きてるだろ?こっちの子もまったく起きる様子がないな。」

男A「・・・。」

男B「あ」

瀬能「痛ったぁぁぁっぁぁぁぁぁ!」

男A「おっ」

男C「起きたか?」

瀬能「なにすんですか?いきなり人を叩いて!・・・・って誰ですか?あなた達、誰ですか?」

男A「おい、そっちの女は起きそうか?」

瀬能「無視?・・・人を叩いておいて、無視?」

男B「いやね。誰って言われましても、ね」

瀬能「・・・あなたも誰ですか?」

男A「オバサンも手伝えよ」

オバサン「嫌よ!」

男C「おぉおい、おぉおい!」

男A「あのなぁそんな優しくやってたって起きやしねぇよ!ガツンっとやってやらねぇと。そっち行くから待っとけ!」

女B「待って!起きてるわ!起きてる!叩かないで、顔をグーで叩かないで!」

瀬能「はっ!あなた、私の顔をグーで殴ったんですか?グーで殴ったんですか?・・・グーで殴ったんですね?」

男A「あっ?お前が起きねぇからだろ!」

男C「君、起きてたの?だったら返事くらいしてくれても良かっただろ?」

女B「知らない人間が、騒いでいるのに、起きられる訳ないでしょう?・・・様子を見てたのよ。そしたらそこの男が強硬手段に・・・」

男A「お前なぁ、どこの嬢ちゃんだか知らねぇが、目ぇ覚まさねぇ奴がいたら、これで、こう、叩いていいって警察だって言ってんだよ。応急処置」

女B「警察がそんな事言う訳ないでしょう?」

男C「3・3・9度方式って奴だな・・・あんた、見かけによらず、しっかりしてるんだな。」

男A「常識だろ?」

瀬能「常識かどうか知りませんが、私はあなたを殴らないと気が済みません。殴りますからね。」

男B「宣言するったぁ肝の据わった姉さんだ」

男A「だぁかぁらぁ、お前が起きないから、起こしてやったんだよ!」

瀬能「頼んでいません!そこ、動かないでください。殴りますから。顔を。」

オバサン「そんな事より、そこのあなた!何か着なさいよ!どうしてパンツ一丁なのぉ?」

瀬能「あっ?・・・ああ。すみません。これ、普段着なもので。パンツは仕方がないとしても一応、Tシャツも着てますが。」

女B「・・・そんな普段着ないでしょう?」

瀬能「うちにいる時はいつもこの格好なので。このエアリズムTシャツっていうのが優れものでして。」

オバサン「誰も下着の機能の話なんか、してないわよ!・・・薄くってほぼほぼ全裸じゃない!」

瀬能「これ着てると暑くもなく、寒くもなく、ほんと日本の技術って凄いですね。」

男A「確かにな。俺も着てるぜ。しまむらの奴だけど。」

男B「ホンモノは高いですから、な」

オバサン「あなたねぇ、うちにいる時、それを着てるんだったら、ちゃんとカップの付いてる奴、着ないとダメでしょう!いくら若いからってすぐ垂れてくるから」

女B「あー、わかる。うちもママに言われる。」

瀬能「ああ。そうですね。次回からそうします。」

オバサン「・・・それより、何か着なさいよ?あなただけ下着じゃ、おかしいじゃない!」

男C「確かになぁ。僕は気にしないけど。」

男A「俺も他人の格好なんざ、気にしないけどな。」

オバサン「あんた達が気にしなくてもあたしが気にするのよ!」

瀬能「私、何も持ってない、みたいで?すみません。」

男C「なあ、あんた。それ、一番、上に羽織ってる奴、貸してやれよ?そういうのって何枚も着こんでるんだろ?」

男B「アタシですか?ええ。まあ。困るものじゃないんで。ただ、これ、仕事着なんで。なるべく人様に貸したくはないんですがねぇ。」

男A「緊急事態だよ、緊急事態」

オバサン「目のやり場に困るんだからぁ、いいでしょう?」

男B「貸したくないって訳じゃないんですがねぇ、汚されるのが嫌なんですよ?貸しますけど、後でちゃんと返して下さいよ。仕事着なもんで。」

瀬能「ああ。じゃあいいです、恩を着せられてまで着たくないんで。」

男C「あ、うまいね」

男B「・・・いいですよ、いいですよ、着て下さい。どうぞ着て下さい。うまい事、言われた日にゃぁ貸さねぇ訳にいかねぇ。座布団一枚、松崎君~ん!」

瀬能「誰ですか?松崎君って・・・じゃあ、まあ、遠慮なく。あの、それより、私の電マ、見ませんでしたか?見当たらないんです!まだ買ったばっかりなのに。」

男A「・・・知らねぇよ、それよりなんだよ?電マって?」

瀬能「電動マン・・・何、言わせるんですか?新手の変態ですか?乙女のたしなみですよ!」

男A「・・・お前、何もかも間違ってるぞ?」

ピー!ガーー

スピーカー「はい、皆さん。お目覚めでしょうか。」

男A「あ!」

男B「ええ?」

男C「・・・。」

オバサン「・・・なに?」

女B「どこから聞こえるの?」

瀬能「今気づきましたけど、ここ何処なんですか?あなた達、誰ですか?」

男C「えーっ、今更?」

スピーカー「ご静粛に、ご静粛に。」

女B「・・・聞こえてんの?」

男A「おいっ!ここから出せ!バカヤロー!」

オバサン「あたしもよ、まだ仕事が残ってるのよ!こんな所で油を売っている暇がないのよ!返しなさいよ!」

男C「まあ僕は息抜きをしたいから遊びに付き合うのは構わないが、僕を拉致した所で、君達の役には立たないと思うが?」

女A「えっ?これ、拉致なの?」

男C「拉致でしょう。どうみても事件でしょう?」

女B「ちょっと待って。あたしと、まー、えっと、あの子は、まぁ、分かるとして、こんなオバサン誘拐して何の得があるのよ?」

オバサン「だから、オバサンじゃないわよ!」

男C「・・・まぁ、いろんな趣味の人がいるから、な。熟女好きも市民権を得ているのは確かだ。」

女A「あんただってオッサンじゃない!オッサン誘拐するバカがいると思うの?」

男B「アタシは師匠のお駄賃で生活しているもんですから、アタシを誘拐するなら師匠を誘拐した方が早いと思います、けど?」

瀬能「あ、私も働いてない。ニートだから。」

男A「なんだよ、お前、働いてねぇのかよ!働けよ!」

男C「“も”って、なんだよ、“も”って。なんにも引っかかってないよ。」

男A「お前、ニートのくせに態度デカかったじゃねぇか?おい!」

瀬能「働いていない事と殴られた事は別案件です!私、殴られた事、忘れていませんから。ぜったい、殴り返しますからね!」

男A「上等じゃねぇか、おい!」

瀬能「私、失うものがないんで、怖いものがないんです!あなたと違って働いていませんからぁ!」

女B「・・・そこ、強調しなくていいから!むしろ、ちょっと恥ずかしい事だからぁ!」

スピーカー「はいはいはいはいはいはいはいははい。よろしいですか?お話の途中、よろしいですか?」

男A「っなんだよ、うっせぇなぁ!」

オバサン「聞こえない!黙って!シャラップ!」

スピーカー「はい。ではですね。早速、本題に入らさせていただきます。今回、皆さんはデビルウィルス法に基づき、お集まりいただきました。」

女B「・・・・なになになに?」

男B「デビ・・・・えっ?」

スピーカー「デビルウィルス法です。旧即死病維持法が近年、改まりまして、デビルウィルス法となりました。」

女B「なにそれ?聞いた事ないわよ!そんな法律」

男C「・・・僕は聞いた事、あるような、ないような、」

女B「あるわけないでしょ?そんなアホみたいな法律!」

男A「・・・俺は無い!」

スピーカー「デビルウィルス法は、遡ること、聖徳太子の時代まで遡る、由緒正しい、法律というか、政策でございまして、とにかく歴史が古いのが特徴でございます。

このデビルウィルス、旧名、即死病は、文字通り、かかると即死してしまう大変やっかいな病気でございまして、その為、多くの国民の皆さんに知られていない現状がございます。これにつきましては、我々政府広報の今後の課題と位置づけして、」

男A「かかると死ぬ病気なんてあるのか?」

オバサン「バカね!いっぱいあるに決まってるでしょ!映画にもなったでしょ?サイコブレイク」

女B「・・・アウトブレイクでしょ?」

オバサン「あと、ゾンビになっちゃう奴とか」

男B「・・・ゾンビになって腐乱れたー、なんつって。」

瀬能「私、ゾンビはつつましくゾンビでいるのが望ましいと思うんですが、最近のゾンビは攻撃的ですよね?」

女B「・・・もしかして、さっきのダジャレ、スルーした?」

スピーカー「えーっ、ですから、デビルウィルスっていうのがございまして、先程、申し上げました通り、わが国では聖徳太子の時代からのお付き合いでして、過去、優れた医師や科学者がどうにか無毒化することが出来ないか、挑戦して参りましたが、結論から申し上げると、無理だという事が分かりまして。無理ならば軍事転用してしまおうと、過去の有力権力者達は考えたようでございます。」

男C「まぁ、そう考えるわな。」

女B「わかんないものを軍事転用すべきじゃないのよ、」

スピーカー「このデビルウィルス。人間にしか感染いたしません。他のあらゆる生物を媒介にしないとてもクリーンで効率の良いウィルスであり、宿主の人間だけを殺し、その優れた汚染性から命名された、と言われております。それ故、軍事転用にもってこいだったと言われております。そして、ここが重要なポイントでございますが、このデビルウィルス、他国で発見されておりません!わが国だけの固有のウィルスであり、これまでも、そしてこれからも秘匿に全力を尽くしていく所存でございます。

皆さん、このウィルスの重要性をご理解していただけましたでしょうか?」

男A「・・・なに言ってんだ?日本語しゃべってたか?」

オバサン「まあなるほど。人にしか感染しないのであれば環境汚染にならないし、核兵器と違って、放射能汚染もない。非人道的であることはさておいて。環境問題を取り扱う投資家やアナリストは飛びつきそうな案件ね。」

男A「わかってんのか、本当に?」

女B「・・・核だって他国から買う時代なのよ。国産の細菌兵器があれば、他国から買う必要もないし、そりゃ軍事転用するわよね。」

男C「おまけにワクチンも作れない。どうしようもない殺人ウィルスだ。」

スピーカー「皆さんが、ここに集められた理由でございますが、それは先程来、説明しております通り、デビルウィルスは人間にしか感染いたしません。このデビルウィルス、ウィルス株として保存容器に入れておくと何故か死滅してしまいます。ウィルスとして常に人間に寄生していないと生きていけないウィルスなのです。この為、過去、デビルウィルス感染者が死亡した時、二十四時間以内に新しい宿主を探して、感染させる、という命のバトンを受け渡して参りました。デビルウィルスの命ですが。

ここからが本題になる訳ですが、直近のデビルウィルス感染者が死亡してしまった為、皆さんが集められた、という次第であります。」

男A「はっ?」

男B「しかし、まぁ、アレだ、勝手が過ぎないかね、ええ?」

女B「まったく、まったく、どういう事よぉ!」

スピーカー「これまで旧即死病維持法では、全国民から無作為に選ばれた一名が、無条件で、感染者になっていただいておりましたが、近年、法律改訂にあたり、人道的ではないとの声から、全国から無作為に集められた六名の中から、話し合いで、一名、感染者になっていただく、という事になりました。もちろん残りの五名の皆さんは助かりますのでご安心いただきたいと思います。」

女B「あ、あんた、やってよ!」

男B「今、会ったばっかの人に言われるのは酷ってもんだと思いますがぁ?どうです?」

スピーカー「ちなみにではございますが、二十四時間以内に一人、選定されなかった場合、全員、死亡となります。」

オバサン「えっ?どういう事よ!」

男A「一人殺すも、全員殺すも一緒って事だろ?」

スピーカー「デビルウィルス法の趣旨をご理解いただいたと思いますので、現時点から二十四時間以内に、お答えを頂戴したく存じます。」

ガー!ピーー

オバサン「ど、どうすんのよ、コレェ!」

男C「どうしようもないだろ?」

男A「俺はまっぴらごめんだぞ!」

女B「そんなの、あたしだってそうよ!」

男C「こういうの聞いたことあるよ。デスゲームって奴だ。」

オバサン「な、なによ、デスゲームって?」

瀬能「死のゲームですよ、カイジとか読んだことありませんか?」

男A「じゃんけんしたり、鉄棒渡ったりするんだよ。」

男C「じゃんけんで負けると死ぬ。鉄棒から落ちたら死ぬ。」

オバサン「・・・じゃんけんで死ぬの?」

瀬能「じゃんけんで死にます」

男C「・・・語弊があるけど、だいたい死ぬな。ま、こっちの場合、じゃんけんよりタチ悪いぜ。なんせ強制連行だからな。拉致、誘拐だぜ?」

男A「そんな法律、許されるのか?」

男B「雲の上の人達が勝手に作りますからな、きっと自由なんでしょう、生かすも殺すも。」

オバサン「あんた達、おかしいと思わないの?こんな現実!だってそうでしょう?こんなシェルターみたいな所に人を集めて。ドッキリじゃなかったら、頭のおかしい人間の犯罪か、」

瀬能「頭がおかしいのは確かでしょうね。」

男B「頭の良過ぎる人と紙一重っていいますからなぁ。」

瀬能「おまけに、自分達で法律作りたい放題だもの、RPGツクールか?って話ですよ。」

女B「・・・アレはダメよ。あれで完成したゲームなんて見たことないわ。」

男C「まあ、待て待て待て。これがデスゲームだったら、僕達のターンで、各々の隠された特殊能力を発揮して助かるんだ。映画、見たことないかい?」

女B「・・・あるわ。まず、助かるのはあたし。死ぬのは、オバサンとヤンキー!」

オバサン「ど、どういうことよ!」

ヤンキー「あ?ヤンキーってなんだよ?俺のことか」

男B「・・・ああ、納得ぅ」

ヤンキー「俺はヤンキーじゃなくて、気合が入ってるだけ、気合で仕事してるんだよ!」

女B「キャラが立ってる奴はみんな死ぬのよ。特にオバサンとヤンキーはキャラが立ってるから死ぬの。あと、あんたは映画冒頭で死ぬわ。ひょうきんな奴はだいたい視聴者に対するチュートリアルで死ぬのよ。」

ひょうきん「・・・ひょうきん者は安易に殺していいっていうのが、世界の共通事項です、けれども。納得いきませんなぁ」

女B「頭のおかしい奴は助かるから、あんたは助かるでしょう。」

瀬能「私ですか?」

女B「明らかに頭がおかしい格好してるじゃない?はんてん?にパンツって?フロリダじゃ精神病院送りよ?犯して下さいって言ってるような格好じゃない、わりとまじで。」

瀬能「ですから、普段着なんですって。・・・シガニー・ウィーバーみたいんじゃないですか?」

男C「エイリアン2のな。」

オバサン「シガニーでもブルースでもいいから、助けにきてよ、ほんとに。」

瀬能「サンドラ・ブロックは通りすがり程度で、破壊の限りを尽くしますけどね。」

男C「まあ。待て待て。まだ時間はある。とりあえず我々が何者なのか知る必要がある。もしかしたら、この中の誰かの秘密の能力で助かる可能性だってあるだろ?」

オバサン「・・・ないわよ」

女B「この中に、私はウルヴァリンですぅって人がいたらすぐ解決しちゃうのに・・・」

男C「ウルヴァリンじゃダメだろ?・・・マグニートーだろ?」

瀬能「私、あの手の磁気能力者が高い戦闘力を持っている事に前々から疑問を持っていまして。卑怯だと思うんですよね。」

男C「あんたは磁力が使えないただのニートなんだろ?・・・タダニートー」

瀬能「・・・タダニートーです。」

男C「で、あんたは?気合の入った土木作業員?」

ヤンキー「俺か?俺は電気工事士だ。朝、一件、ケーブル繋いで、次の家に行く途中で、記憶がない。たぶんそこで拉致られたな。だから仕事、待たせてるんだよ。俺は個人でやってるから信用が一番大切なんだ。こんなんでスッポかしたら、仕事を回してもらえなくなるんだよぉ!わかるか?

お前はなんなの?昭和のコスプレか何かか?」

ひょうきん「せめて江戸か明治大正と言ってもらいたいですなぁ。アタシはですな、噺家で。まだ売れてませんが、そのうち売れると思うんで今のうちに顔を覚えておいていただけたらと、思うわけですな。」

ヤンキー「はなしか?・・・芸人か?」

ひょうきん「左様でございまして。芸名は、夾竹亭驚楽と申しますもんで、以後、お見知りおきを、賜りたいと、え、思うわけですな。」

ヤンキー「話が長げぇよ!」

ひょうきん「あ、名前、覚えていただけたら、よろしいかと。ええ。」

オバサン「その、落語家さん?あんた何が出来るの?」

瀬能「面白い小噺で私達の緊張を解いてくれることでしょう。期待してますよ、笑福亭さん?」

ひょうきん「・・・夾竹亭です」

男C「・・・やめなよ?敷居高くするの?」

瀬能「デスゲームとかけましてぇ」

ひょうきん「・・・え?」

瀬能「デスゲームとかけましてぇ」

ひょうきん「・・・やるんですか?・・・デスゲームとかけまして、新婚夫婦の初夜と解く、」

女B「乙女の前でいやらしい事を言ったら、殺すからね?」

瀬能「デスゲームとかけまして、新婚夫婦の初夜と解く、そのこころは?」

ひょうきん「死体したい死体したい

ヤンキー「・・・お前は死体決定。」

男C「それで、オバサンは何者なんだい?」

オバサン「あたしより、あなたは何者なのよ?」

医者「俺は医者だ。」

オバサン「ま、何かあったら頼りには、なるわけよね?医者だもの。」

医者「産婦人科医だけどね。」

オバサン「・・・産気づいて困ってる女がいないわよ!」

医者「オバサンねぇ、産婦人科医は少ないの。希少価値があるの。僕達がいなけりゃ子供、産めないのよ?少子化減少に貢献してるのよ?」

オバサン「少子化減少に貢献しているのは女!・・・女が産まなきゃ子供は生まれない。そうでしょ?」

女B「・・・その前に、医者だからって何もなけりゃどうする事もできないでしょう?薬も消毒もないし。」

ヤンキー「偉そうなお前は何者なんだよ?」

オバサン「・・・弁護士よ。」

ヤンキー「弁護士かぁ、昔、世話になった事あるぜ!」

医者「あんた、見た目過ぎるな。・・・悪い意味じゃなく、見たまんまっていうか。」

オバサン「あたしだって、クライアントと打ち合わせする予定があるのに、こんな所に連れて来られて迷惑してるのよ!」

女B「オバサン、弁護士なら、その変な法律、聞いたことないの?」

オバサン「オバサン、オバサン言うな!あんただってオバサンに足、入れてるじゃない?あんた、見た目程、若くはないわね?」

女B「まだ大学生よ、まだ。それで、そのなんとかウィルス法、聞いた事あんの?」

オバサン「だから聞いた事ないわよ。・・・だいたい法律勉強したからって全部の法律を覚えている訳ないでしょう?」

ヤンキー「でもよ?普通に考えて、勝手に人を誘拐したり拉致するのは犯罪じゃないのか?」

瀬能「・・・人を拘束して良いのは警察だけですよ。それも限定的に。」

ヤンキー「だよな?じゃあ何か、警察より上の組織、なのか?」

ひょうきん「ここでアタシ達が話していても埒が明かないですよ、拉致だけに。」

電気工事士「・・・そうだよな。」

女B「スルー?まさかのスルー?」

ヤンキー「じゃあ、お前は誰なんだよ?」

女B「あたしは大学生って言ってるでしょ?」

医者「・・・ちゃんと学校行ってる格好には見えないんだけど?パパ活?援助交際?してない?」

大学生「あなた、親じゃないんだから、心配してくれなくて結構。服装も化粧も自由でしょ?それを規制する法律はないわ。それに今、休みだから帰国してるだけだし。」

オバサン「帰国?外国の大学なの?」

大学生「MITよ。」

オバサン「はっ?」

大学生「オバサン、弁護士ならわかるでしょ?」

オバサン「嘘でしょ?あんたみたいな頭悪そうなギャルがMIT?・・・世も末だわ。」

ヤンキー「なんだよ、その、エムアイテーって?」

医者「マサ、チューセッツ、、、、アメリカの大学さ。世界で一番、頭のいい。・・・嘘か本当か知らなけど。」

ギャル「ギャルは関係ないでしょう。日本のギャル文化は世界のトレンドなのよ。世界で売れている音楽も日本のギャルトレンドを取り入れているくらいだし。」

ヤンキー「・・・そうなのか?」

医者「はっ!頭も良くて見た目も良くて、将来は外資系か省庁入省、人生ぬるくて、敵わないな~」

ヤンキー「じゃあよぉ、その頭の良さを生かして、ここから脱出する方法を考えてくれよ?お前等、みんな頭いいんだろ?」

オバサン「・・・ほら、将来の官僚先生?ご教授願えないかしら?あなた、頭いいんでしょう?おまけに若いし。・・・ギャルだし」

ギャル「えっ?ちょっと!こんな何にもない状況で、どうにもならないじゃない!・・・何か、何か、手がかりとか、何かないの?ちょっとは考えなさいよ!」

ヤンキー「何かって言ってもなぁ、道具も何もないしなぁ。っていうか、俺の道具、返してくれるのかなぁ。」

医者「返してくれないんじゃないか?拉致してくるくらいだし。もう一回、買うしかないよ。」

瀬能「・・・私のバイブも返して欲しいです。」

ギャル「あんた、電マって言ってたじゃない?電動マッサージ機じゃないの?」

瀬能「・・・。バイブレーションの事ですよ。バイブレーションの。バイブ・・・」

ギャル「もう、絶対、嘘じゃない!なに赤くなってるのよ!恥ずかしいなら言うな!」

瀬能「あなたは道具がなくても関係ない仕事だからいいですね。」

ひょうきん「アナタねぇ、アタシが羽織、貸してるの、お忘れですか?・・・それに噺家には扇子があれば何でも表現できる、ってもんですな、これが。」

ギャル「・・・あんたは働いてもいないじゃない?」

瀬能「あなたも働いてないのは一緒じゃないですか?」

ギャル「・・・ちゃんと、今後、働きますぅ。いくら、ニートだからってズボンくらい履いた方がいいと思うけど?」

瀬能「いや、べつに。困らないんで。」

ギャル「なんでよ!おかしいでしょ!」

瀬能「私は普段着だから仕方がないと思いますが、ギャルのあなたは、自分の意志で、半分パンツを見せている訳ですよね?そっちの方がおかしいと思いますが。」

ギャル「あの、これ、ファッションだから!あと、これ、見せて良い用のパンツだからぁ!」

瀬能「・・・だからギャルの思考は理解できないんです。パンツに、見せる用も見せない用もないと思うんですけど。」

ギャル「だから!ファッション用のパンティーなのぉぉぉぉ!あんたが見せてるのはただのエアリズムのパンティーでしょうがぁ!」

瀬能「何度も言ってますが、これは普段着であって、好きで見せている訳ではないので、誤解がないようにお願いしたいと思うんですけど。ギャルのあなたは、見せたくてパンツを見せている訳ですよね?」

ギャル「見せてるんじゃなくて、見えちゃってるの!見えちゃうから可愛いパンティーを履いてるの?・・・このロジックわかる?わっかんないかなぁ!・・・なに?不思議そうな顔してんのよ!」

瀬能「・・・私はギャルを理解できません。できますか?」

ヤンキー「まあ、俺は、自分の好きな格好するっていうのは、一本、筋が通ってて好きだぜ。・・・パンツは見せない方がいいけどな!」

ギャル「お前等、全員、死ねぇ!」

瀬能「それはそうと、あのドアは何なんですか?さっきから気になっているんですが。」

ギャル「おい!ニート女、無視すんな!」

医者「あ、あれ。バイオハザードって書いてあるから、入ったらアウトな部屋だと思うよ?」

瀬能「中は暗くて、良く、見えませんねぇ?」

オバサン「その、なんとかって、ウィルスが入っている部屋なんじゃないの?」

ギャル「デビルウィルスよ。」

医者「頭の悪そうな名前だよな。」

オバサン「名前なんてなんだっていいのよ。細菌兵器っていうのは致死性が高くて、不活性が低いものが好まれるんだから。」

ヤンキー「オバサン、詳しそうだな。」

弁護士「オバサン、オバサン、うるさい!まだ三十代よ」

医者「・・・見えないね。随分、何か、やってる?」

ヤンキー「なんだよ、クスリやってんのか?」

医者「バカだなぁ。合法的な若返り施術だよ。金さえ持ってれば体なんていじくりたい放題さ、サイボーグなんて当たり前だよ、幾らだって若返られる!」

オバサン「やってるわよ!当然でしょ?リフトアップとか吸引とか。・・・若い方が客受けがいいんだから当然じゃない」

医者「僕の知り合いも美容系やってて随分、儲けてるよ。シワ取ったり、クスミ消したり、ありゃぁ手品だね。真っ白さ。」

ヤンキー「自分の儲けで好きな事やってるんだから、いいじゃねぇかよな?」

医者「別に悪いとは言ってないけどさ。」

オバサン「・・・あんた、単純でいいわ。」

ヤンキー「なんだ?バカにしてるのか?」

オバサン「違うわよ、褒めてるのよ!そういう真っすぐな所が、だんだん無くなっちゃったって思って、自分の事だけど。」

ヤンキー「褒めてるなら、褒めてるって、言えよ。」

瀬能「私、こういう所、見た事あるんですが、」

ギャル「・・・どこで?」

瀬能「アニメで。」

ギャル「・・・アニメかい!」

瀬能「松本零士先生が多い印象ですが、こういうのって大概、ぶっ壊したり、水かけたりして、システムをダウンさせれば逃げ出せません?」

ギャル「・・・松本零士は、ネジとかボルトがむき出しのメカだからなぁ、意味のないメーターばっかだし。」

医者「ぶっ壊すって言っても、この壁じゃなぁ」

ヤンキー「水も、、、、水はあるわ」

ギャル「水、あるの?」

ヤンキー「あるぞ」

オバサン「どこにあんのよ!」

ヤンキー「待てよ、待てよ、焦んなって。危険ドアの反対側、そう、そっち。窪んでるだろ?」

オバサン「何か、書いてある。・・・トイレ?トイレェェェェ!」

ヤンキー「トイレだよ。押してみ、開くから。」

オバサン「ここね。押すわよ。

・・・くっさぁぁっぁぁぁ!オエェェ!くっさぁぁぁ!ボゲェゲェ!なんこれ、臭いんだけどぉぉぉぉ!」

瀬能「これは異臭兵器ですね。」

医者「閉めろ!閉めろ!こっちまで臭いがくるからぁぁ!」

ヤンキー「悪りぃ悪りぃ、ウンコしたからさ。」

オバサン「あんた、頭おかしいんじゃないの!拉致されて連れて来られて、知らない所でウンコなんか出来る訳ないでしょうぉぉぉぉぉぉぉ!バカじゃないの!」

ヤンキー「・・・ウンコすると落ち着くじゃん。」

瀬能「・・・分かる気がする。」

オバサン「あんたみたいな男が、新築で買った家のトイレを、家人より早く使って、賠償問題に発展させるのよぉぉぉぉぉ!」

ギャル「・・・オッサンのウンコって兵器だわ」

ヤンキー「ま、怒んなって。」

ギャル「・・・換気扇まわした?」

ヤンキー「こういうユニットバス系のやつは、二十四時間オート換気だから、そのうち、臭いもなくなるだろ?」

医者「水はあったけど、水を入れる物もないし、水をかけるような機械もないし、どうしようもないな。」

ギャル「換気扇から逃げられないの?」

ヤンキー「バカ言うなよ?お前がハムスターなら逃げられるかもしれねぇが、人間が入れる隙間はねぇよ」

ひょうきん「換気扇とかけまして、逃げられると思ったら逃げられなかったと解く、そのこころは、歓喜せん!」

瀬能「えーっ、そのこころは?って自分で言っちゃう系ですか?」

ギャル「・・・えっ?そこのスピーチボーイは何を言ってるの?」

瀬能「アメリカには落語って文化は無いんですか?イッツ、シット、ダウン、コメディ!」

医者「・・・落語ってのはアメリカ圏では受けないけど、フランス圏だと受けるらしいぞ。」

ギャル「それにしても、何もない。映画なら、幾つもドアがあったり、意味不明な数字が書かれていたり、謎を解く鍵があるのに。」

オバサン「なんとかウィルスにさせることが目的だから、逃げ場がない方が正解なのよ」

医者「そもそも、どうやって僕達はここに閉じ込められたんだ?閉じ込めたんだから、その入り口があるはずだ。」

ギャル「・・・確かに。」

ヤンキー「言われてみれば、確かにそうだな。・・・秘密の抜け穴があるんだろうな、きっと。」

オバサン「ほら、頭のいい美人先生?こういうの考えるのが得意なんでしょう?」

ギャル「・・・ずっと考えてるわよ。だいたいこの建物、シェルター?っていうの?柱がないじゃない?っていうことは、構造的に壁だけで空間を支えている、って所までは分かるんだけど。」

ヤンキー「・・・柱がある場合、それを倒せば、構造的に、もろくなるのは当然だわな。」

ギャル「・・・お手上げね。」

医者「これだけ雁首そろえてもダメか?名案だと思ったんだけどな。」

ガチャ

ヤンキー「お!」

男D「あ」

ギャル「えっ、誰?」

男D「あ、えーっ!えっ?」

医者「あんた、誰よ?」

ギャル「・・・また、入っちゃったわよ。」

オバサン「・・・出てきた」

男D「あれっ?えーっ?は?これは、どうなって?」

瀬能「新しいお仲間さんじゃないですか?」

ヤンキー「ま、そうなるよな。おい!」

男D「は、はい?」

ヤンキー「お前、どこの誰だ?いや、だから、お前だよ?お前!」

男D「私、ですか?」

オバサン「あんた以外にいないでしょ?」

男D「あ?ははははっははは。ははははは。申し遅れました。私、内閣府の高槻と申します。先程の放送、あれ、私です。」

医者「政府のお役人さんもここに連れてこられちゃったのかい?」

官僚「いえ。私は、デビルウィルス法のアナウンスをするように上の者に言われて、それで伺っただけのはずなんですが。」

オバサン「・・・どこに帰るの?」

官僚「ですから、アナウンスが終わったらこっちのドアから出るように、と。あれ?あれれれれ?おかしいですよね?」

ギャル「・・・ダマされたんだわ。」

ひょうきん「・・・アナタ騙されたんです。シシシ、ご愁傷様で、ええ。」

医者「あんた、政府のお役人さんだろ?・・・秘密の抜け道とかないのかい?黙っててあげるから一緒に逃げないかい?」

官僚「ははははははははは。いや、私。・・・仮にそんなものを知っていたとしても教えるわけにはいかないと思うのですが」

ギャル「こりゃダメよ。知らない顔してるもの。ダマされたクチよ。」

オバサン「・・・あんた気の良さそうな顔してるもの、騙されやすそうだもんね?」

ヤンキー「ま、いいじゃねぇか。な。二十四時間後には一緒に死ぬんだし、な?」

瀬能「・・・その設定、すっかり忘れてました。」

官僚「ど、ど、どうにかならないんですか?この状況!聞いてないですよ!早くなんとかしないと!」

医者「どうにもならないのよ、これが。」

ヤンキー「生け贄が一人増えたってだけの話だろ?なんにも話が進んでねぇぜ?」

オバサン「官僚の人が入ってた部屋、何か、出てこない?」

官僚「か、勝手に入らないで下さい!」

ヤンキー「とりあえず調べてみるか」

官僚「だから、勝手に」

ヤンキー「うるせぇえ!殺すぞ!」

ギャル「・・・なんにも出てこないと思うわよ。」

瀬能「マイクしか置いてないじゃないですか。・・・あなた、もっと使える物をどうして持ってこなかったんですか?・・・使えない。」

官僚「・・・え?」

ギャル「だって、平公務員でしょ?・・・見るからに使えなさそうじゃない。」

医者「ギャル子ちゃん、辛辣だなぁ。」

ギャル「誰がギャル子だ?」

オバサン「あんた、ほんとに、何も知らないわけ?」

平公務員「・・・ええ。すみません。その、デビルウィルス法を伝えてくるだけと聞いていたので。」

ギャル子「そんなの嘘に決まってるでしょう?なんで疑わなかったのよ?・・・ほんと、使えない。」

平公務員「すみません。ああ。もう。私もどうしてこんなことになったのか。」

オバサン「ま、仕方がない。あんたは、諦めるしかないわね。」

ヤンキー「おい、出口ねぇな。」

オバサン「そうでしょうね。この人の様子を見ればわかるわ。」

医者「あ~あ、揃って明日にはお陀仏かぁ。」

ヤンキー「だいたい誰のせいで、こんな事になってると思ってんだよぉ!クソ政府のクソ役人どもがぁ!」

オバサン「あんたねぇ、呑気にそんな事言ってないで、助かる方法を少しは考えなさいよ!」

ヤンキー「もう腹くくるしかねぇんじゃねぇのか」

ギャル子「拉致された時点で積んでたわけかぁ。」

瀬能「皆さん、このデスゲーム、普通のデスゲームではない事に気づきませんか?」

オバサン「えっ?なに?」

平公務員「・・・デビルウィルス法です。」

医者「こんなのデスゲームだろ?」

瀬能「一般的にデスゲームでは、複数人の参加者がいて、最後まで生き残れば、その一人が勝ちとなります。バトルロワイヤルでも韓国のアレでも最後まで生き残れば勝ちでした。例外的に、主催者を殺すというのもありますが主人公補正がない限り、そんなのは無理です。今回のデスゲームが違う所は、」

平公務員「・・・デビルウィルス法です。」

瀬能「自分以外の全員を殺した所で、勝ちにならない所です。」

ギャル子「反対だものね。死ぬ人間を一人、選べっていうルールだから。」

瀬能「だから、行動に移せなかったと思うんです。自分以外の人間を殺すっていうのであれば、そういう行動を取れる人もいたでしょう。」

医者「自分だけ確実に助かるんなら、そういう行動も取れるだろうなぁ。倫理観、正義感は別にして。」

瀬能「では、公平に死ぬ相手を決める方法として、多数決があります。今現在、狙ったように、多数決が行いやすい環境になりました。」

オバサン「あ。今までは六人だったのが、七人になったものね。票が割れないわ。」

ヤンキー「お、いいんじゃね?多数決!」

医者「こう言っちゃなんだけど、こういうさ、善良な市民を誘拐して、拉致して、そういう非道な事を行える政府の人間って、僕はいかがなものかと思うけどね?」

平公務員「・・・えっ?」

ギャル子「公務員って、国民の為に奉仕するのが仕事なんでしょ?・・・今、やる時じゃない?いつやるの?」

平公務員「え、いやいやいやいやいやいやいや。そんな雑なフリでやらないですよ。やらないですよ。」

ひょうきん「公務員とかけまして、刺された人と解く、そのこころは?」

瀬能「そのこころは?」

ひょうきん「咆哮(奉公)する」

オバサン「その、刺された人っていうのが嫌なんだけど。」

平公務員「待って下さい、待って下さい。お願いします。お願いします。何でもします。何でもしますから、命だけは助けて下さい!命だけは勘弁してくださいぃぃぃぃ!」

ヤンキー「・・・お前さぁ、都合良すぎない?俺達、知らないうちに拉致されて連れてこられたんだぜ?」

ギャル子「おまけに死ねって言われてる訳よ、いきなり連れてこられて。・・・わかる?」

医者「潔く、デビルウィルス?に感染して、死んだ方がいいよ?・・・悪い事、言わないから。」

オバサン「あんた、運がなかったのよ?じゃ、早速、死んでちょうだい。あたし、忙しいのよ。」

ヤンキー「まあ、俺も客、待たしてるしなぁ。」

医者「なあ、あんた、」

平公務員「・・・はい?」

医者「こういうのって給料っていうか、報酬でるの?」

ヤンキー「どういうことだよ?」

オバサン「ああ。裁判員裁判とかで、陪審員に選ばれると、時間で拘束されるでしょ?その保証が出るのよ。少ないけどね。」

医者「これだって、れっきとした国の仕事だろ?報酬が出てもおかしくないだろ?」

ギャル子「で、どうなのよ?」

平公務員「・・・知りませんよ、そんな事ぉ!」

ギャル子「泣いてどうすんのよ、あんた。泣きたいのはこっちの方よ。」

瀬能「皆さん、お取込み中、申し訳ないんですけど、私、その病気、感染したいと思います。」

ギャル子「は?なに言ってんの?・・・ほんとに頭、おかしい子なの?」

医者「ニートちゃん、マジ?」

平公務員「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、」

瀬能「勝手に話が進んでしまったので言い出しにくかったのですが、その何とかウィルス、興味あるんで。」

平公務員「デビルウィルスですぅ」

瀬能「今日の占いでも、法律がラッキーアイテムだったんで。」

オバサン「・・・法律ってラッキーアイテムなの?」

医者「・・・別に止めやしないけど、僕以外だったら誰でも良かったし。」

ヤンキー「ああ、ああ。ちょ、ちょっと驚いたけど、気合が入ってんな、お前!・・・死ぬの怖くねぇのかよ?」

瀬能「私、皆さんと違って働いていませんし、生にそれほど固着していませんので。どうせ、家の中で、無縁仏で後から発見されるくらいでしょうから、珍しい死に方は気になってはいたんです。でも、死ぬのってだいたい決まってるじゃないですか?他人に迷惑かけるし。」

オバサン「・・・まあね。電車、自動車への飛び込みは、正直言って、本人は死ねるけど、残された人間が大変なのよ。ひいた人間は一生、トラウマだからね。ダイヤだって乱れるし、社会全体に迷惑かけるからね。死ぬなら大人しく死んで欲しいわけよ。」

医者「・・・あれ、検死も大変なんだぜ?肉片、骨片、集めたりするの。」

ギャル子「いや、そんな生々しい話、聞きたくない!」

ヤンキー「俺も聞いたんだけど、感電で死ねればいいけど、電圧が強かったりすると肉が燃えたり、体の一部が吹き飛んだり。お前、人間の焼けた肉の臭い、嗅いだことあるか?」

ギャル子「・・・そんなんないわよ!」

瀬能「そういう訳で、どうせなら人と違う死に方を希望しますので、今回、それをお受けします。日本古来の伝統殺人ウィルス、もの凄くワクワクします!」

ヤンキー「ま、短い付き合いだったけど、達者で死ねよ?」

ギャル子「あたし、あんたの事、ニートってバカにしてたけど、バカ過ぎて感心したわ!」

医者「・・・僕はニートに対する価値観が変わったよ。ありがとう。」

オバサン「あたし、引き籠もりってコミュニケーションもろくにとれないクソ野郎ばっかりだと思ってたけど、あんたみたいなのもいるのね。初めて知ったわ。」

ひょうきん「ニートとかけまして、自宅で死んだ人と解く、そのこころは?」

瀬能「そのこころは?」

ひょうきん「家に遺体(居たい)・・・」

医者「家に遺体は、警察が死体解剖しないといけないからなぁ。めんどうなんだよ、どうせなら家以外で死んでくれ。病院とかな。」

瀬能「じゃ、そゆことで、名残惜しいですが失礼します!」

平公務員「あなた、いいですか?この減圧室には」

医者「・・・減圧室なのかよ?・・・本格的だな」

平公務員「亡くなったデビルウィルス感染者の遺体が保管されています。デビルウィルスは空気感染するとても強力なウィルスなので、同室に数分もいれば、確実に感染するでしょう。感染しても、発症するまでは個体差があるので断定はできませんが、デビルウィルスが発症した後、政府機関があなたの体、いえ、デビルウィルス株を回収しに参ります。政府が必要としているのは、あなたの体ではなく、デビルウィルス株なのです。」

ヤンキー「なに偉そうに言ってんだ、今なら、お前が代われ!」

ギャル子「そうよ!」

ひょうきん「弱った体とかけて、自殺志願者と解く、そのこころは?死にたい?(死に体?)」

平公務員「いや、だからですね、あの、説明しないと!ね、わかりますでしょ?ね、私の言いたい事?」

瀬能「最後まで面白い経験が出来て良かったです。こんな事でもない限り、家から出る事もなかったでしょうから。」

医者「こんな事って誘拐のことかい?・・・普通、ないよ。あっちゃいけない事だからね?」

瀬能「・・・あと、お腹がすくと困るので、何か食べるものはありますか?」

平公務員「えーっと、減圧室の中に、冷蔵庫があって、パックご飯、レトルトカレー、カップラーメン、あとチョコレートが入っているハズです。」

オバサン「・・・役所で期限が切れた防災食が、安く売られてるけど、もしかして、それ?」

瀬能「ま、良しとしましょう。」

ギャル子「あ、行っちゃった。」

ヤンキー「騒がしい奴だったなぁ・・・」

医者「・・・ずっとパンツ見せてたな。パンツの印象が強すぎるよ。」

オバサン「・・・ねぇ?」

平公務員「・・・はい?」

オバサン「良い話風にまとめてるけど、まだ、これ、終わっちゃいないのよ!そのなんとかウィルスの件は決着がついたけど、あたし達、いつ、家に帰れるの?」

平公務員「・・・デビルウィルス法です。」

オバサン「なんだっていいのよ、早く、家に帰しなさいよ!」

医者「・・・人身御供って、言っちゃなんだけど、ニートちゃんが犠牲になってくれたおかげで、余計な揉め事がなくなった訳だしな。だからさ、もう、帰ろうぜ?」

ヤンキー「俺も仕事、溜まってるんだよ!」

平公務員「私も詳しくは知らないのですが、デビルウィルスが感染次第、助けが来ると思うんですけど。法律にうたっている訳ですから。」

ギャル子「・・・これで誰も助けに来なかったら、どうすんのよ!あの子、死に損じゃん!こっちもピンチだけど!」

バンバンバンバンバン!ガチャガチャガチャ!

医者「え?あっ!おい、ニートちゃんがドア開けようとしてるぞ!」

ヤンキー「開けたらどうなるんだ?」

平公務員「も、もちろん、デビルウィルスがこっちの部屋に充満してくるに決まってるじゃないですか!空気感染しますからぁぁぁぁ!」

オバサン「と、止めないさいよ!」

ヤンキー「止めろ!止めろ!止めろ!」

医者「ドアを開けさせるな!押し返せ!」

ひょうきん「何か、話してますけどねぇ?」

瀬能「こっちに出口がある!出口!出口がありますよ!」

医者「で、出口?ニートちゃん、そのバイオハザードの部屋から外に出られるの?」

瀬能「ええ。そうです。出口発見です!」

ヤンキー「ちょちょちょちょちょ、ちょっと、一旦、落ち着こうか。おい、クソニート女!ここ、開けたら殺すからな!」

瀬能「はあ!こっちは親切で出口の場所を教えてあげてるのに、その言い方はなんですか?私、まだあなたの事を殴っていませんからね?忘れていませんからね。」

ヤンキー「お前さ、もう、死ぬ病気に感染してる訳じゃん!それで俺を殴ったら俺も死ぬじゃん!・・・考えてから物を言えよ、コラァ!」

瀬能「は?ふざけてるのはどっちですか?私、ウィルスに感染してるんです!もう何も怖くないですからぁぁぁぁぁぁ!」

医者「こ、こいつ、やばいぞ!本物だぞ!」

ギャル子「・・・頭がおかしい女だとは思ってたけど、本当に頭がおかしい奴だったのよ!」

バン!バンバン!バン!

ヤンキー「叩くな、バカ!」

医者「本当にどうかしている奴に、この世で一番、渡してはいけない武器を渡してしまったな・・・ジーザス!」

オバサン「だから、あの時、あんたが死んでればこんな事にはならなかったのよ!」

平公務員「えーっ?私のせいですか?」

医者「わかった、わかった、ニートちゃん!君の望みはなんだい?君の要求を聞こうじゃないか?とりあえず落ち着いて、な!」

ひょうきん「押す力が弱くなりました、ねぇ」

ヤンキー「こいつ、ニートだから体力ないぞ。もうバテてやがる!」

瀬能「ハー、ハー、ヒー」

ギャル子「・・・あんた、たまには運動しないと、こういう時、動けないわよ?」

瀬能「ヒー、フー、フー」

医者「僕達の最終防衛ラインはこの扉だ。この扉をやぶられたら全員、デビルウィルス病にかかり、死ぬ。だから絶対にこの扉を死守しなければならない!」

ひょうきん「死守とかけまして、腐った臭いと解く、そのこころは?死臭~」

ギャル子「えっ?どういうこと?なんにもかかってないんですけどぉ!」

瀬能「別にいいんですよ?私だけ逃げても。でも、皆さんに出口の場所を教えてあげようと思って。フヒ~」

医者「ありがとう、ありがとう。ニートちゃんの優しさに感謝するよ。でも、僕達は君がそこにいる限り、ここから出られないんだよ?」

瀬能「あ、そうですね。」

ヤンキー「こいつ、想像以上のバカだぞ」

瀬能「はぁ?」

バンバンバンバンバンバン!ガチャガチャガチャ!

ヤンキー「わかった、わかった、わかったから叩くなバカ!」

医者「冷静に考えよう。出口の場所が分かった。ただ、最悪の場所だ。」

オバサン「あんた、出入り口の場所、知らなかったの?」

平公務員「私も連れて来られたもんですから。」

ギャル子「出口の場所はいいわ。でも、そこにウィルスの元があるわけでしょ?感染源が。」

医者「トラップだよ、トラップ。簡単なトラップさ。出口があると分かって、出口に誘導されようものなら、全員、ウィルスに感染し、お陀仏って寸法さ。」

オバサン「・・・じゃ、なによ、どのみち、逃げられないじゃない?出口がわかった所で状況は変わらないじゃない?」

ギャル子「そうね。法律が施行されて助けが来るまで逃げられないのは同じだものね。」

オバサン「・・・部屋の中、随分大人しくなったわね。外に出たのかしら。」

医者「・・・もうそのまま帰って来なくていいんだけどな。」

バン!バンバン!

オバサン「・・・なにぃ?今度はなにぃ?」

瀬能「ここ!島です。島になってます!」

ギャル子「・・・島?ここ島なの?」

平公務員「いや、私、分からないです。」

瀬能「島です。ビーチになってます!白い浜辺です!とってもいい所ですよ!」

医者「・・・僕達にとっては地獄だけどな。」

ヤンキー「たぶん、あれだろ?物騒な化学兵器は隔離した所で作ったりするんだろ?ここが島かどうかは分かんねぇけど、きっと都市部からは離れた所にあるんだろうなぁ。」

オバサン「あんた、たまにはまとまな事、考えるのね?」

ヤンキー「バカにすんなよ?だいたい病院や製薬会社っていうのは郊外へ郊外へ作られるんだ。おまけに専門の浄化システムなんかを入れるから仕事の単価が高いんだよ。」

ギャル子「・・・そういえば、キューブで最後まで残ってた人、工員だったわよね。何を作らされてるか分からなかったけど、砂漠の真ん中で大きな構造物を作ってたって。」

ヤンキー「俺はこんな核シェルターなんか受注した覚えないからな。言っておくけど。」

医者「核シェルターにしちゃ、雑だけどね。分かりやすい出口があるんだから。・・・出られないけど。」

オバサン「それであなた?これからどうするのよ?・・・イカダでも作って帰るつもり?」

瀬能「あ、私。肌が弱いんで。ニートですから。砂浜の直射日光に弱いんですよ。ですから、今日はここで休みます。」

ギャル子「・・・まぁ、分からなくはない。直射日光は天敵よね。」

ヤンキー「おい!だからって、ここ、開けるなよ!絶対開けるなよ!」

瀬能「え?それはフリと考えていいんですか?」

ヤンキー「フリじゃねぇよ!バカ!本気で言ってるんだよ!」

医者「・・・まぁ、ここはニートちゃんを信じるしかないよね。見張りは立てておくけども。」

瀬能「あのぉ、くれぐれも、私、伝説の病気の感染者なんですから、いたわって下さいね。・・・もう寝ますけど。」

医者「・・・はいはい。」

ヤンキー「うるせぇ、バカ、早く死ね!」

医者「ヤンキー君、あんまりニートちゃんを刺激させないでよ。」

ヤンキー「ああ?俺か。・・・悪りぃ悪りぃ。最初、同情しちまったのが恥ずかしいぜ。まったく。」

オバサン「えらく元気な病原体の宿主よねぇ?・・・すぐ死ぬ病気じゃなかったの?」

医者「そこら辺は個体差があるって言ってたし。」

平公務員「私はわかりませ~ん!」

ギャル子「でも、考えてもみなさいよ?すぐ宿主に感染して死んじゃったら、またすぐ違う宿主を探さないといけなくなるじゃない?そんな非効率なこと、する?」

医者「デビルウィルス法っていうのを僕が知らないから断言は出来ないが、致死性が高くて、他国と戦う兵器として考えているなら、株は一つじゃないだろうな。」

オバサン「同時に幾つもオブジェクトが進行しているって事ね。」

ギャル子「ここまで来たら、その法律だって怪しいじゃない?国は本当にそれを履行してくれる保証はないでしょう?」

ヤンキー「そりゃそうだ、自分の子分を手駒にして捨てるような奴らだ。どこまで本当かわからねぇな。」

医者「ただし、こういう秘密基地を作ったり、拉致、誘拐、監禁が行える機関だ。僕達、一般人じゃ相手にならないよ。」

ギャル子「あんた、もっとさぁ、しっかりしなさいよ!」

平公務員「申し訳ないです。はい。」

ガチャ

ヤンキー「ん?」

ギャル子「え?」

医者「・・・あんた、誰?」

シェフ「あ。どうも。料理担当の山野辺と言います。定時になったら食事を提供するように言われてまして。」

ヤンキー「めし?」

オバサン「・・・こういう所が、なんていうか、だらしないっていうか、日本的っていうか、どうしてご飯が出るのよ?あたし達、拉致されてるんでしょ?」

ギャル子「ま、ちょっと、緊張感にかけるよね?」

オバサン「台無しよ。明日もしかしたら、全員死ぬかも知れないのよ?それなのに、ご飯が出るって、なに?」

医者「オバサン、オバサン、まあまあまあ。腹が減ったら戦は出来ないっていうじゃない?腹ごしらえは出来る時にしといた方がいいと思うよ?」

ヤンキー「イケメン先生の言う通りだぜ、食える時に食っておかないと、いざっていう時に食えないからな。」

シェフ「今回はハヤシライスです。デザートや付け合わせ、その他、ご用意してありますので、どうぞ、ゆっくり召し上がって下さい。」

ギャル子「ハヤシライスって滅多に食べないわよね?・・・美味しいけど。」

ヤンキー「多少、胃にもたれるけど、腹には溜まるからな。」

オバサン「死ぬかも知れない日には、食べないかもね。・・・私は作らないから、食べないけど。」

イケメン「・・・やっぱりさ、腹がいっぱいになるとまた冷静に物事を考えられるな。・・・カレーの方が良かったかな。」

ギャル子「ちょちょちょちょちちょ」

シェフ「はい?なんでしょうか?」

ギャル子「あなた、そこの部屋で料理、作ってるの?」

シェフ「ええ。奥がキッチンですが。」

ギャル子「ちょちょちょちょちょ、ちょっと、そのキッチン、見せてもらえない?」

シェフ「?ええ。どうぞ。構いませんが。・・・デザートのおかわりもございますけど。」

ヤンキー「もらう、もらう、もらう。これ、うまいな。」

シェフ「こちらがキッチンで、冷蔵庫、奥に食糧庫があります。数日分、材料を置いてありますがね。」

ギャル子「ここから、外に出られるの?」

シェフ「ええ。食材を搬入したり、あと、上の人には内緒にしておいて欲しいんですけど、」

ギャル子「・・・ええ。」

シェフ「こういう政府の機関でタバコはご法度なのは承知の上なんですけど、隠れて、ちょっと、一服してるんで、それはちょっと内緒にしておいて、いただけると。」

ギャル子「タバコ吸ってんの!」

シェフ「ちょ!ちょ、声が大きい!聞かれたらまずいんですって!契約上、ダメな事になってるんですから。」

ヤンキー「お、あんた、タバコ持ってるの?」

シェフ「あちゃー。バレちゃった。もう。もう、どうしてくれるんですか?」

ヤンキー「今さ、俺、切らしちゃっててさ、一本、もらえない?なんでもいいからさ。」

シェフ「あなた、ここ、政府の建物ですよ?」

ヤンキー「・・・知ってるよ」

シェフ「こんな所で喫煙がバレたら大変ですよ?いいんですか?」

ヤンキー「別に怖かねぇよ!・・・とにかくヤニ切れでさ、一本、めぐんでくれよ!な?」

シェフ「・・・じゃ、一緒に、行きますか?」

ヤンキー「いいね。」

シェフ「・・・これ、どうぞ。」

ヤンキー「今度、買ったら、返すよ?タバコの恩はタバコで返すぜ?ああああああああ。久しぶりのニコチン!うめぇ!」

シェフ「・・・私も仕事終わりの一服が至福の一服でしてね。ああああ。生き返る!」

ギャル子「ちょっと、ちょっと、あんた達!外、出られるわよ!」

イケメン「え?」

オバサン「・・・ん?どゆこと?」

ギャル子「だから、ヤンキーオッサンと料理人のオッサンが外でタバコ吸ってるのよ。・・・外に出られるのよ。」

イケメン「なんだよ、それ?」

オバサン「ちょっと!あなた達!」

ヤンキー「また、うるせぇオバサンが来た!」

オバサン「・・・あたしにも一本、もらえる?ニコチンが切れてるの。」

シェフ「どうぞ、どうぞ。これで良かったら。」

オバサン「助かるわ、あああああああああ!ああああ、うまい!うまいわ!」

ヤンキー「ずっと我慢してたから余計に染みるな!」

オバサン「それは同意するわ。」

平公務員「あのぉ、大変、申し上げにくいんですが、この敷地は政府管轄の敷地でして、敷地内の喫煙はご遠慮いただいているんですが?」

ヤンキー「うっせぇ、バカ!知るか!」

オバサン「あんた達が勝手に連れてきたんでしょう?タバコぐらい自由に吸わせなさいよ!一日、我慢してたんだから!」

シェフ「あ、私、すぐ、仕事に戻りますんで。これ、良かったら、残り、全部、差し上げますから。」

ヤンキー「おっ、悪りぃなぁ。ごっつあぁんです!」

ギャル子「これで、外に出られたんだけど、脱出、成功?」

イケメン「・・・こんな、あっさりと。ま、成功ちゃ成功だけど、ここがどこか分からないし、どこに逃げればいいか分からないし、ちょっとどうしようもないね。」

グギャギャギャガギャギャギャギャヤー!

ギギーギギギギギギーギギギギ!!!

バキャキャキャキャバキャキャバキャバキャバキャキャキャキャカーキャキャカキャー!!

ギャル子「なに?この音!鳴き声?」

イケメン「何か、動物の鳴き声だろ?こんな島だもの、なにがいたって不思議じゃ、ない。それより食って、寝て、島からの脱出を考えよう。」

ヤンキー「今日は、解散か?」

ドン!

ヤンキー「・・・地震か?」

オバサン「退散、退散、一服したら退散!」

ブオッホ!ボッホ!バボボボボボボボボボボボオボ!

ギャル子「・・・!」

ブボ!

イケメン「・・・。」

平公務員「ギャヤァヤャャャャァァァァァヤャァヤャ!」

ガリガリガリガリガリガリガガガガガガガガガガ

ベギボベ!ヒボヒオビボヒボヒボ!ギギボヒヒ!ボビビギギギギギ!

イケメン「喰われた!喰われた!喰われた!」

ヤンキー「・・・・。」

オバサン「・・・・。」

ガガギャギャギャガアギャガガガガヤギャギャガギャヤヤ!

ヤンキー「・・・おい!」

オバサン「・・・足が・・・足・・・あ・・・・」

ギャル子「な!なんなのあれ!なに!あれ!なになになに!」

イケメン「知るか!閉めろ!閉めろ!閉めろ!」

ギャル子「・・・・まだ!ヤンキーのオッサンとオバサンが外にいるでしょぉぉぉぉぉぉぉ!」

イケメン「とにかく閉めろぉぉぉぉぉ!」

ドン!ドンドンドンドン!

ヤンキー「おい!開けろ!バカ!開けろ!」

ギャル子「開けてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

ダン!

バン!

ヤンキー「お前等ぁ!ふざけんな!バカヤロゥ!ハァハァハァ ハァハハハァ」

オバサン「ハァ ハ ァァァ ハァ ァァァ」

ギャル子「なにあれ?・・・なんなのアレ?」

ヤンキー「知るか!バカ ・・・食われたぞ!あいつ!」

ギャル子「見てたわよ、あたしだって。」

オバサン「ここ、鍵、かかるの?ドア、大丈夫なの?」

シェフ「どうしたんですか?大声出して?」

イケメン「化け物だ、化け物!化け物が出たんだ!」

シェフ「・・・化け物って?島ですから、ヘビやトカゲくらい出ますよ。」

ヤンキー「おい!」

シェフ「ちょちょちょちょちょちょ」

ヤンキー「今、あの公務員野郎が食われたんだ!冗談で済む話か?」

シェフ「たんま、たんま、たんま、わかりました、わかりました、わかりましたから離して下さい、わかりましたから

人間が食われるなんて、滅多な事じゃないですよ?」

イケメン「・・・滅多じゃない事が起きてるんだ」

オバサン「ハ ァ ア ハァ ア ァァァ アハ ほんと、なんなの、ここ?拉致されるわ、変な病気で殺されそうになるわ、今度はなに?熊?ゴリラ?猿?なんなのアレ?」

イケメン「・・・熊、ゴリラが人間を頭から丸飲みするか?・・・人の背丈の2倍3倍はあったぞ?・・・化け物だ」

オバサン「ここ、ここ、大丈夫なんでしょうね?」

ヤンキー「そんな事、俺が知るか!」

ギャル子「・・・少なくても、今の時間まで大丈夫だったんだから、建物の強度はあるんじゃない?」

ヤンキー「夜行性だって考えられるぞ?夜になったから出てきた可能性だってな」

シェフ「まさか、そんな、大きな熊、いないでしょ?」

イケメン「・・・ロシアの人食い熊のグリズリー種は、確か、体長3メートル近くあるはずだ。」

ギャル子「あれ、熊なの?」

イケメン「熊だったらの話だ。熊かどうかも分かったもんじゃない」

オバサン「なんでロシアの熊が日本にいるのよ!」

イケメン「・・・だから知らないって言ってるだろ!」

ヤンキー「政府の秘密基地なんだろ?あやしい病原菌つくってる位だから化け物がいても不思議じゃないと思うぜ?」

オバサン「もう嫌よぉ!・・・家に返してぇ!」

ヤンキー「とりあえず、今は大人しくしているしかねぇ。あのバケモンだって人間の肉、食えば少しは腹が満たされるはずだ」

ギャル子「・・・あれが一匹だったら、ね?」

ヤンキー「あ?」

オバサン「ちょっと待ってよ!・・・あんなのが他にもいるって言うの?」

ギャル子「あの化け物が来る前、周りが騒がしかったのよ。あたし達を囲むようにギャーギャーギャーギャーわめいてたわ!」

イケメン「何かの野生生物の鳴き声だとは思うけど、」

オバサン「何かって何よ!」

イケメン「だから、知るか!僕の方が聞きたいくらいだよ!」

ギャル子「今だって鳴いてるじゃない?ギャギャギャギャギャギャギャ」

オバサン「やめてよ!聞きたくない!」

ギャル子「オバサンさぁ、泣き言ばっか言ってないで、何か、助かる方法、考えなさいよ!」

オバサン「わかる訳ないでしょ?・・・あんた、頭、いいんでしょ?考えなさいよ!・・・助かる方法」

イケメン「・・・なぁシェフ?」

シェフ「な、なんでしょう?」

イケメン「あんた、材料が搬入されるって言ってたよな?いつ、搬入されるんだ?」

シェフ「3日に1回、食材が搬入されます。・・・次は明後日。」

ヤンキー「おい!」

イケメン「ヤンキー君、ちょっと黙っててくれ」

ヤンキー「なんだとぉテメェ」

イケメン「こっちから連絡する手段はあるのかい?」

シェフ「・・・それが、・・・。」

イケメン「・・・ないのかい?」

シェフ「今、考えると、ないです!」

ヤンキー「おい!おい!どういう事だよ!お前、コックだろ?メニュー考えて、食料、発注するんじゃねぇのかよ?」

シェフ「いえ、それが。・・・勝手に食材が送られてきて、それで、私が、考えて作るんです。だいたい何でも揃っているので思いつく料理は作れちゃうんですよ。」

イケメン「・・・やられたな。逃げ場ゼロだ。」

ギャル子「政府っていうのも、案外、抜け目がないのね。・・・怖い、怖い。」

ヤンキー「それで、材料はどうやって送られてくるんだよ?まさかコンテナだけ送られてくるって事はないよなぁ?」

シェフ「ええ。そうです。ヘリコプターが浜辺に段ボールを降ろしていくんです。・・・私はそれを取りにいくだけ。」

オバサン「・・・徹底してるわね。」

イケメン「そりゃそうだ。三下の官僚を簡単に切るくらいだ、当然だろ?」

オバサン「ハハハハハハッハハハ。そうね。あんた、給料、どれ位もらってるの?」

シェフ「えーっ、っと、ですね。」

オバサン「どうせ、破格中の破格でしょ?政府管轄の施設で、調理師募集。単身赴任で手当ても厚い。山小屋とか遠洋漁業の料理人がしばらく帰って来られないのと同じつもりでいたんでしょ?とんでもない仕事場に来ちゃったわねぇ?同情するわ。」

シェフ「ちょと、ちょっと、ちょっと、待って下さい!ど、どう、どいう事ですか?」

ヤンキー「お前、死ぬんだよ?」

シェフ「え?ど・・・え?」

ヤンキー「何度も言わせんなよ、お前、このままだと死ぬんだよ?」

シェフ「ど、ど、ど、ど、ど、」

イケメン「・・・どうにもなる訳ないだろ?僕達だって、どうなるか分からないのに。」

オバサン「・・・良かったじゃない?さっきの政府の高官みたいに、何も知らされずに喰われて死ぬより、状況がわかって。」

シェフ「じょ、じょ、冗談じゃないですよ?私だってねぇ、好きでこんな所に来たんじゃないんだ!金の為だ、」

イケメン「はいはいはいはいはいはいはい。別にあんたの身の上話なんざ聞きたくはないよ。」

ギャル子「みんな状況は同じなのよ、どうにか生き残る方法をあんたも考えなさいよ!」

オバサン「ほんとバカバカしいわ。これなら変なウィルスで死んだ方がマシだったわよ。」

ヤンキー「・・・。」

ギャル子「・・・、もしかして、そういう事なんじゃないの?」

イケメン「そういう事って?」

ギャル子「だから、あたし達を最初から生かしておくつもりが無いって事よ。逃げ場がないんじゃ死ぬしかないじゃない?最終的に、全員、デビルウィルスに感染させようって魂胆なんじゃないの?」

ヤンキー「・・・まぁ、それなら、確かに辻褄は合うな。夜になっても助けに来ないっていうのは、助けるつもりが最初から無い訳で、全員、病気にかかっちまえば、それはそれで政府の野郎にゃ都合の良い話だからな。」

オバサン「むかつく。・・・勝手に連れてきて、死ぬ病気に感染させて、あの国の拉致よりタチが悪いじゃないのぉ!・・・タバコ!」

ヤンキー「あ?」

オバサン「はやく!タバコ吸うの!吸いたいの!・・・早く!」

ヤンキー「ああ。」

シェフ「あの、この中で、吸うのはちょっと・・・」

オバサン「うるさいわねぇ!・・・もう、文句いう人間が喰われていないでしょ?どこで吸ったっていいでしょ?」

イケメン「君、お酒はあるかい?」

シェフ「・・・ええ。ええ。あ、どうぞ。こちらです。」

イケメン「僕は喫煙はしない主義でね。向こうで一杯やってるよ。おお。いいブランデーがあるじゃないか!もらってくよ」

オバサン「あんたも吸う?頭のいいかわい子ちゃん。」

ギャル子「・・・あたしも吸わない主義なの。ねぇ、ドぎづいコーラある?」

シェフ「ええ。コーラはこれくらいしか。」

ギャル子「ええ?これ?まぁいっか。氷もちょうだい。キンキンに冷えて炭酸で頭やられるくらいのコーラが好きなの。・・・頭が冴えてくるじゃない?」

ヤンキー「変なクスリでもやってんのか?向こうの国で。」

ギャル子「バカね?コーラはもともと漢方薬なのよ?砂糖の甘さとウコンの苦みで頭の血管がチリチリになるの!ま、コーラは常習性が高いから、クスリと変わらないけどね。」

オバサン「ねえ、あんた」

ヤンキー「・・・ん?」

オバサン「さっき言ったでしょう。ウィルスにかかって死ねば良かったって。」

ヤンキー「ああ。」

オバサン「一人決めるんじゃなくて、全員でウィルスにかかるのが正解だったんじゃないかって今、思うのよね。そしたら、今更、変な化け物に怯える必要もなかったし、政府のクソ野郎共に腹たてることもなかったんじゃないかしらってね。そう思うわけよ。」

ヤンキー「オバサンよぉ。だからって死ねねぇぜ?簡単には。」

オバサン「・・・」

ヤンキー「オバサンが死にたいなら止めやしねぇが、俺はくたばるつもりは無ぇ。どうにかして生き抜くつもりだ。」

オバサン「・・・あんた、肝座ってんのねぇ。見直したわ。」

ヤンキー「最初からだって言ってんだろがよぉ?」

ガッッチャ

シェフ「あ」

ひょうきん「あ、どうも」

シェフ「あなた、まだ、召し上がっていらしたんですか?」

噺家「ええ。どうも。滅多にハヤシライスが食べられないものでしてね。」

シェフ「どうぞ、どうぞ、好きなだけ召し上がって下さい。私もあなたもいつ死ぬかわかりませんからね。」

噺家「ん゛ん゛ん゛?」

ドンドン!ドンドン!

ギャル子「おーい!あんた起きてるぅ!」

瀬能「・・・ん?なんですか?」

ギャル子「あんたまだ死んでなかったの?あれから何時間過ぎてんのよ?」

瀬能「いやぁ・・・そうですね。私に聞かれても困るんですけど。まだ、生きてます。」

ギャル子「なにか死にそうな症状ないの?苦しいとか?痛いとか?」

瀬能「そういうの無いですね。至って良好です。私、普段から不摂生な生活を送っていますから致死性の高いウィルスに感染した事で、体が活性化してしまったのかも知れません。」

ギャル子「・・・まぁ、あんた、よく分からない子だもんね。」

瀬能「現在、体に起きた異変といえば、鼻毛が異様に伸びたんですよ。」

ギャル子「鼻毛?」

瀬能「ええ。鼻毛です。一本だけ太い鼻毛が生えて、抜いても抜いてもすぐ、生えてくるんです。・・・呪いでしょうか?」

ギャル子「・・・。呪いじゃないでしょ?・・・ウィルスでしょ?」

瀬能「ええ!ええええええええええ!死ぬのはいいですよ、覚悟してますから。でも、鼻毛が伸びるのは嫌です!聞いてないです!」

ギャル子「諦めなよ、もう、ウィルスに感染してるんだから。鼻毛が伸びて死ぬんだよ。」

瀬能「嫌ですよ!私、女子ですよ!女の子ですよ!こう見えて女の子ですよ!鼻毛が伸びたまま死ぬのなんてまっぴらごめんです!」

ギャル子「あんたねぇ?女の子だったらパンツ一枚でふらふら歩いてんじゃないわよ!女子ならパンツ隠しなさいよ!」

瀬能「だから、話してるじゃないですか?これは普段着であって、外に出る時はスカートとかズボンを履きますよ!まさか家にいて拉致させるなんて思わないじゃないですか?」

ギャル子「ま、それはあんたに同情するわ。パンツ一枚の時に誘拐されるなんて思わないものね。・・・ばか、ちがうわよ!」

瀬能「は?なんですか?急になんですか?」

ギャル子「パンツの話をしにきたんじゃないわよ!あのね、あんたに話があってきたの。ここ、化け物が出るの!この島、化け物が出るから死ぬかもしれないの!」

瀬能「・・・なに言ってるんですか?化け物ってなんですか?あのぅ、まったく意味がわかりませんが。」

ギャル子「あたしだって訳わかんないわよ!あんたがこのまま訳わかんないまま、化け物に喰われて死ぬと可哀そうだから、教えてに来てあげたの!感謝しなさいよ!」

瀬能「・・・喰われる?化け物に喰われる?・・・まったく思考が追いつきません。何を言っているんですか?ギャルは頭がおかしいんですか?」

ギャル子「ギャル、バカにすんな!あと、今、話したことは真実。トゥル~よ。トゥルゥ~。政府の奴が喰われたわ。」

瀬能「喰われた?・・・何に喰われたんですか?サメとか、そういう奴ですか?」

ギャル子「ノンノンノンノンノン、ゴリラだか熊だか、そういう奴だったわ。3メートルくらいの大きさで、人間をバリバリ喰ってたわ。外にいるよりこのシェルターの方が安全っぽそうだったから逃げてきたけど、ここが安全って保障もないわけ。助けも来なさそう。もう、どうにもならないわ。」

瀬能「ああ。そうですか。・・・ねぇ。お困りですね。まあ、確かに。」

ギャル子「あんたはほら、あたし達と違って、デビルウィルスに感染してるし、いつ死んでもおかしくないから、死ぬ事に関して、化け物に喰われようがそんなに関係ないと思うけど。」

瀬能「まあ。確かに。私と皆さんとでは置かれている状況は違いますよね。困らないって言えば、困らない、ですよね?・・・鼻毛、伸びますけど。」

ギャル子「ほら、ここに連れて来られたのも何かの縁じゃない?あんたが知らないで化け物に喰われたら、あたしの寝覚めが悪いじゃない?だから教えてあげたの。」

瀬能「あ、ほんと、ありがとうございます。皆さんがその化け物に食べられた時は、ちゃんと供養しますから安心して下さい。」

ギャル子「・・・反対でしょ、反対!あたし達が、あんたが化け物に喰われてもちゃんとお墓を作ってあげるって話よ!わかった?」

瀬能「ああ、そうですか。」

ギャル子「な、なんで、納得してない顔してんのよ!バカなの、ほんと!」

瀬能「じゃあ、戒名は、超絶世美女頭脳優秀友達無限性格最高陽人格女帝でお願いします」

ギャル子「・・・あんた、言ってて恥ずかしくないの?むしろそれ、あたしでしょ?」

瀬能「ああ。自分で言っちゃうあたりが、ギャルですよね?」

ギャル子「友達五人鼻毛女で供養してあげる」

瀬能「鼻毛の所はどうにか、触れないでいただきたいのですか?」

ギャル子「じゃあね、鼻毛女さん」

瀬能「ちょっと、待って下さい、ほんと、やめて下さい!」

ギャル子「・・・。」

イケメン「・・・。」

ギャル子「・・・。」

イケメン「・・・お別れは済んだかい?」

ギャル子「どっちが先にお別れになるか、分かんないけどね?あんたも、あたしも、くそニートも。」

ダンダンダン!ダン!

ひょうきん「聞いてますか?姉さん?」

瀬能「・・・聞いてますよ。もう一人にしてもらえませんか?」

ひょうきん「アタシ、芸っていうのは磨いて光るもんじゃぁないと思っているんですよ。芸ってのは、時間ですよ正直いって。時間。時間かけて自分の体の一部にしていくのが、芸ってもんだと、思うんですけどねぇ。どう思います?」

瀬能「知らないです。私、芸人じゃないんで。じゃ、おやすみなさい。」

ひょうきん「ちょちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ姉さん!アタシはねぇ、別に、死ぬのが怖いってぇ訳じゃないんですよ。芸人ならねぇ、布団の上で死ねねぇと思ってますよ。ただね、面白く死にてぇと思ってるんですよ。面白く。」

瀬能「前座さん。」

ひょうきん「ひとつ目です。」

瀬能「ひとつ目さん。もう無理じゃないですか?潔く死ぬのは私に取られてしまいました、化け物にパクって喰われる、出オチみたいな死に方は政府の人に盗られちゃったんでしょう?もう、面白く死ぬのは無理ですよ?」

ひょうきん「姉さん、アタシは何も無理な話をしている訳でなくて、ただねぇ、芸人として最後は面白く幕を引きてぇと、それだけ、なんですな」

瀬能「前座さん。」

ひょうきん「ひとつ目です。このくだり、いります?」

瀬能「様式美って言うんです、だからあなた、ひとつ目なんですよ!いいですか?こうなったら死なない方が面白いと思うので、最後まで生き残ってみたらどうですか?それか爆発。」

ひょうきん「・・・爆発」

瀬能「古今東西、爆発は伝統芸です。エキシジェンデストロイヤーにはじまり、ハリウッドの映画でも笑いオチ、感動オチ、ま、両方使われてますし。爆発で白髪!クレイジーでもドリフでもごっつでも使われる古典芸能です。爆発、いいですね。爆発で白髪♪」

ひょうきん「・・・爆発で白髪?」

瀬能「じゃ、そゆことで。私、眠たいんで。じゃ。」

ひょうきん「姉さん、アタシに対して雑じゃありませんか、ええ、まったく!」

イケメン「おーい、座布団ボーイ?・・・集合だ。」

ひょうきん「ええ。座布団は変えますが、ま、それが仕事なんで、ええ、まったく。」

イケメン「話には聞くけど、座布団をひっくり返したり、運ぶのが仕事っていうのは、とても閉鎖的な仕事だね?」

ひょうきん「完全能力主義社会ですから、な、嫌ならやめろって商売なんで、ええ。」

イケメン「分かりやすくていいねぇ」

ヤンキー「でぇ、雁首揃えてどうするんだ?白旗でも揚げんのか?」

ギャル子「ここからはデスゲームじゃないわ、サバイバルゲームよ、生き残るか、死ぬか、どっちかよ」

イケメン「座布団君、もっと分かりやすい、完全能力主義社会だろ?嫌なら死ぬだけの世界だ。」

座布団君「・・・人に話しても信じてもらえなさそうで、落語には良い題材ですな」

オバサン「しばらく様子を見てたけど、化け物の鳴き声はずっと聞こえてるけど、ここには襲ってこなさそうね。」

イケメン「なあ、コックさん、地理についてみんなにもう一回、話してくれないか?」

シェフ「ええ。私、昨日からここで働きはじめたんですが、ここにボートで連れてこられたんです。上陸した時はこの施設の前の浜辺で。施設の裏に森が見えました。それで私を降ろすとボートは行ってしまって、一週間くらいで仕事が終わるから、また迎えに来ると言われました。」

オバサン「・・・来ないわね。」

シェフ「・・・来ないですか。」

ギャル子「・・・来ないね。」

シェフ「・・・来なさそうですね。」

イケメン「ここにいても状況は悪くなるだけだと僕は思うんだ。だんだん食料も減るし。動けるうちに動くのが手だと思う。」

ギャル子「それはあたしも賛成。」

ヤンキー「あのバカが島って言ってたけど、浜辺を見ただけだろ?・・・島なのか、半島なのか、それすらも分からねぇ。」

イケメン「そこなんだよ!僕等が助かるとしたらそこだ。コックさんが言ったように、奥が森になっている。たぶん化け物もここから来るんだろう。仮にここが島じゃなく、半島で陸地に繋がっている可能性がある。生き残るにはこの森を抜けるしかない。」

オバサン「・・・海には逃げられないしね。」

イケメン「コックさん、ボートでここに来た時、近くに島はなかったかい?」

シェフ「・・・私も寝てたんで。」

ヤンキー「寝てた?」

シェフ「気が付いたら寝てて。起きたらボートの上で。長旅で疲れてたのもありましたけど。」

ギャル子「・・・睡眠薬かなんか盛られてるわね。」

ヤンキー「お前、危機感ゼロかよ?」

シェフ「いやぁ、面目ない・・・。」

オバサン「イカダって作れないの?」

ヤンキー「オバサンよぉ、イカダ作るって簡単に言うけど、あれぇ簡単じゃねぇぜ?船体になる木を切ったり、それを繋げたり。繋げるロープだって無ぇんだ。木を切る刃物だって無えじゃねぇかよ。」

イケメン「イカダを作るのは現実的じゃあないね。」

オバサン「・・・ロビンソン・クルーソーって偉大なのね。初めて知ったわ。」

ギャル子「生存率を上げるには、浜辺の海沿いを行くルートもあるわ。」

座布団君「森ルート、浜辺ルート、の二択ですな」

イケメン「コックさん、あんた、どうするよ?」

シェフ「・・・どうするって?言われましても。」

ヤンキー「お前よぉ、こんな所に連れてこられてよぉ、コックだからって言ってさぁ、生きて帰れると思うか?このまま。」

オバサン「それに、見ちゃったしね。」

シェフ「え?」

オバサン「あたし達が殺される現場、見ちゃったじゃない?もう、そりゃ、ねぇ、あんたも殺されるわよ。・・・ご愁傷様。」

シェフ「ええ?えええ?・・・ああ、なんで、こんな仕事、契約しちゃったんだろうなぁ。」

ヤンキー「銃でズドーン!かもしれないし、助けに来ないで餓死するかもしれないし、どっちなんだろうな?」

イケメン「一番面倒にならないのが、やっぱり、化け物に喰われる事だよ。あれに喰われれば政府の手を汚さずに、文字通り、綺麗に掃除してくれる訳だから。」

ギャル子「あの化け物も、システムの一部ってこと?」

イケメン「とてもクリーンなシステムで、笑うしかないね。素晴らしいよ。」

ヤンキー「コックさんよぉ、そういう訳だ。あとは自分で決めな。」

シェフ「・・・はい。」

イケメン「僕は森へ行くよ。・・・政府も、ヘリやボートを使っているみたいだから、森の方が隠れられる。化け物の遭遇率は高いと思うけどね。」

ギャル子「あたしは波辺ルート。森よりは安全だし。遠くまで見える。化け物がいても逃げる時間がかせげるし。あと、何かあってもすぐにここに戻ってこられるし。」

ヤンキー「そういう考えもあるわな。俺は最短ルートの森だ。」

オバサン「・・・あたしも森に行くわ。」

ギャル子「オバサン、大丈夫?虫とかに弱そうだけど。」

オバサン「砂浜で太陽に焼かれるよりはマシよ。あんたこそ、浜辺は逃げ場ないわよ?平気?」

座布団君「アタシも浜辺で。でも、ええ、ギャルさんとは反対方向に進みたいと、ええ、思っております。」

ギャル子「生意気ね、漫才ボーイ!」

シェフ「私も森について行きます。」

イケメン「じゃ。決まった。準備が出来しだい出発しよう。」

ヤンキー「まあ、あれだな。お互い、健闘を祈ろうぜ!」

ギャル子「・・・そうね。」

オバサン「待って。もし、生きて帰れたら、あたしの法律事務所に来て。」

ヤンキー「なんでオバサンの所に行かなきゃなんねぇんだよ?慰労会か?」

オバサン「あんた、底抜けのバカね。生きて帰れたとしてそのままで済むと思う?別のやり方で殺されるわ。だから、国外に亡命しないと。」

イケメン「オバサン、そのルート、持ってるのかい?」

オバサン「あたしはね、一応、人権派弁護士でやってる訳。国際司法、国際警察にもツテはあるわ。理由を話せば、かくまってもらえるハズ。・・・たぶん。」

ヤンキー「・・・大丈夫なのかよ?」

オバサン「国に拉致されるなんて、今まで生きてきて思わなかったわよ?こんなバカな話、誰が信じる?あたしのスタッフだって信じやしないと思うわ。だけど、どうにかしないと消されるわ。」

ギャル子「災難続きじゃない?助かっても、助かっても、どうすりゃいい訳?」

オバサン「特にあんた。アメリカの大学でしょ?空港で確実に捕まるわ。」

ギャル子「えぇ?大学にも帰れないわけぇ?」

オバサン「だから、亡命しなさいよ、って言ってるの!」

ギャル子「はい、はい。・・・覚えておくわ。」

オバサン「はい、これ、名刺。」

イケメン「・・・ニイボリ?新堀法律事務所。」

ヤンキー「生きて、この島だか?なんだかを抜け出す方が先だな。そしたらオバサンの会社に行くと。」

オバサン「・・・生きて、また、会いましょう。」

座布団君「・・・お互いに。」

ヤンキー「おい、お前が言うな、殺すぞ!」

瀬能「・・・。」

瀬能「・・・。」

瀬能「・・・、まだ死なないようです。本当に死ぬのでしょうか。」

瀬能「・・・。」

瀬能「・・・。」

瀬能「・・・お腹が空きました。カップ麺があると言ってましたね。あ、そうそう。先代様にお水をあげないと。お名前も知りませんが、私にデビルウィルスを感染させる為だけにご供養がされないなんて、いたましい事です。あなたもしっかり鼻毛が伸びてますね。・・・私、死ぬのは苦じゃなんですけど、この鼻毛だけは、いただけません。先代様もご苦労なさったでしょうに。なむあみだぶつ~なむあみだぶつ~

さてと、ラーメン、ラーメン。

ラーメンないじゃないですか?なんですか?焼きそばしかないじゃないですか!えっ?カップ焼きそばしかない!え~

ここ、お湯、捨てる場所、ないのに。

大人しくここで余生を送りたかったのですが、仕方がない。あまり外に出たくないですけど、湯切りに浜に出ますか。」

ガラガラガラガラガラ

シャ

~~~。

瀬能「ほんとは砂浜にお湯を捨てたくはないんですけど。」

男E「・・・ようやくお目覚めかな。」

瀬能「えっ?」

男E「お目覚めかね?」

瀬能「・・・。」

ガラガラガラガラガラ・・・・・・

男E「待ちなさい、待ちなさい、君、待ちなさい!」

瀬能「・・・・えっ?なんですか?私、焼きそば食べないといけないんで。失礼します。」

男E「だから、待ちなさい。話を聞きなさいって。」

瀬能「・・・」

男E「蓋を開けるな、ソースかけるな、かきまわすな、食うな、食うな、食うな!」

瀬能「・・・聞いてますから、どうぞ、話、つづけてもらって、どうぞ、」

男E「君ねぇ、人が話、してるんだから、ものを食べないでよ?小学校の頃、先生に習わなかった?」

ガラガラガラガラ・・

男E「はい、はい、はい、わかりました、わかりました、勝手に話しますんで聞いてて下さい。」

瀬能「・・・ズゾゾゾゾゾ」

男E「私ね、神なのよ。」

ガラガラガラ

神「待ちなさい、待ちなさい、ほんと、ほんと、神なのよ、神。そういう目で見ないの。神なんだから。

君が死んだから見えてる、神様仏様の類の幻みたいなものじゃないからね。物理的に存在している神だから。」

瀬能「その神様が私に何の用です?」

神「箸で人を指すな、君ねぇ、躾で教育の質がわかるよ?

いいかい?神って言っても、宗教上の神じゃないから。簡単に説明すると、職業みたいなものだ。古来から続く、神という仕事だ。」

瀬能「・・・ブホ・・・ズズ」

神「むせるから、水、飲みなさい?ね。

それでだね。神である私が君に会いに来たのには、理由がある。君は今回、デビルウィルスにかかった。君は私と同じ、神になったのだよ。」

瀬能「!・・・ブホブホ」

神「ほらほらほら。慌てるから。水。水、飲みなさい。水。

どういう経緯で君がデビルウィルスになったか詳しくは知らないが、私等は、古来より、神である我々と同族になる人間を時代、時代で探している。

神である私等は、国家と歴史の裏舞台に立ち、裏舞台から、国家を動かしてきたのだ。

そう、歴史を作ってきたのは神である私等だと言って、過言ではない。そのチカラが私等にはあり、神として崇められる理由でもある。

そして君も、その神の一員となったのだ。」

瀬能「・・・私が神・・・ですか」

神「そうだ。君も神の一角だ。君もこれから私等と共に国家を、歴史を、作ってゆくのだ。我々の思い描いた、未来の為に。」

瀬能「ズゾゾゾゾゾゾ」

神「また焼きそばを食べるんじゃない。そんなにお腹が減ってるの?

便宜上、デビルウィルスと呼ばせているが、遥か昔、神話の時代から存在する神のチカラ、それがデビルウィルスだ。私等は特別なチカラを持っている。それを見た人間は、自ずと神と例えた。神話の中で、魑魅魍魎とされる鬼や怪物を倒し、国を平定させたとされる神々、あれらは全て私等の事を記したものだよ。

八本足のタコだかヘビだかを酒蒸しにして、真っ二つにした話は、耳にタコができるくらい先輩に聞かされた、タコだけに。大変だったみたい。

それから、ヒミコとかいう女は、切れ長の目でとにかく目力が凄かったって。あの子のおかげで国が大分、一体感が出てきたって。やっぱり今も昔も見た目が大事だね。

話は逸れたけど、正に神の奇跡と言っていい、神秘のパワーを私等は持っている。。誰も私等を止める事は不可能だ。いや、反対に人間の文明を進化、発展させてきたのは私等と言っていい。人間に知恵や知識を与え、ここまで引っ張りあげてきたのだ。そう、神の御業だ。

そんな凄い力があるなら、人類、いや、生き物すべてが、その恩恵を受けるべきだと、君も考えるだろう。

だが、違う。

誰でも神に成れる訳ではない。神は試練が好きだ。そう、神に選ばれるには試練を乗り越えなければならない。

デビルウィルスは人間にしか感染しない。遺伝もしない。だから、宿主が命を終える時、別の人間にそのチカラを受け渡す必要がある。そして、君はその試練に打ち勝ち、神のチカラを手に入れたのだ。

君も見ただろう、巨大な猿の化け物を。

えっ?見てない?

あーっ、そう。見てないの?

じゃ、今度、見せてあげるから。呼んでくるから。あれ、ペットだから。

その猿の化け物なんだけど、デビルウィルスの成れの果てなの。

誰でも彼でもデビルウィルスに感染して神になれるとは限らない。デビルウィルスに感染した人間のうち、極一部の人間しか、今の人間の姿を維持出来ないのだよ。

その確立、わずか0.9%以下。何が作用し、神になるか、猿になるか、それは未だに謎だ。偶然なのか奇跡なのか、それは誰にも分からない。神になれる機会を与えられたにも関わらず、多くの人間は猿の化け物になってしまう。自我を忘れて人間を捕食する醜い猿の化け物に成り果てる。

だが、君は試練に勝ったのだよ。神になれる試練に。

君は選ばれた。

神に。

君は神に選ばれた存在なのだよ。とても喜ばしいことだ。

焼きそばなんか食べてないで、もっと喜びなさい。」

瀬能「・・・その、神のチカラがあると、私になにか得点があるんですか?」

神「まあ。だいたい何でも出来るよね?この国を動かしたり、世界情勢に口を出したり、している訳だからさ。流石にこの前、気分で、総理大臣を変えた時は怒られたけどね。ちょっと、ちょっと、ってね。だってさぁ、あいつ、ホクロから毛が生えてるんだよ、嫌じゃない?」

瀬能「・・・あの、私、そういうの合わないで、神、やめます。」

神「え?・・・え?・・・なんて?」

瀬能「私、働きたくないんで。家から出たくないんで。そういうのも無理です。残念ですが。」

神「君、神になれるんだよ?・・・滅多になれない事だよ?」

瀬能「私、今回、勝手に家から連れ出されたからここにいますけど、本来、家から出ない人間なので。神だか猿だか知りませんが、あなたと会う事はなかったはずなんです。それに、あなた、鼻毛が出てるじゃないですか?」

神「・・・鼻毛?これ。」

瀬能「それです。鼻毛です。デビルウィルスにかかると鼻毛が伸びるじゃないですか?抜いても抜いても伸びてくるじゃないですか?私、すでに迷惑してるんですよ?一生、鼻毛で悩まされると思うと、本当に迷惑です!」

神「いいじゃない。これ、神の証よ?」

瀬能「神でもなんでも鼻毛が伸びてるのが嫌なんです。ああ。死にたい。こんな辱めを受けるぐらいなら死にたい。一生、鼻毛が伸びてくる辱めを受けるなら死にたい!」

神「ねぇ?ねぇ?誰も昔の人は鼻毛の事なんか気にしてなかったよ?」

瀬能「・・・そりゃそうでしょう。時代も文明も価値観も何もかも違うんですから。あなた、神なら責任とって下さいよ!鼻毛が伸びなくなるようにして下さいよ!私の希望はそれだけです!」

神「だって。さっき話したじゃん。未だにこの病気は謎なんだって。十中八九、猿の化け物になるんだよ?それがほら、君。助かったんだからさ。神、やろうよ?」

瀬能「嫌です。だったら、鼻毛が気にならない人と神をやって下さい。」

神「ねぇ君、ちょっと、話聞きないさよ!こら、ドア、閉めないで、開けなさいよ、ねぇ、こら、おい!」

ダン!ダンダンダン!ガン!

神「ちょっと、ねえ、君!開けなさいよ、ここ!」

瀬能「・・・絶望的です。この鼻毛が伸びる奇病は治らない。呪いです。呪いでしかないです。デビルウィルス、恐ろしいウィルスです。」



「それでさぁ、瀬能さんが珍しく日焼けしてるから、どうしたの?って聞いたんだよ。」

「はぁ。・・・木崎さんくらいですよ、いくら瀬能さんだからって女性ですよ?なんでもかんでもズケズケ聞くのは、ちょっと。」

「日焼けくらい聞いてもいいだろ?庭で焼いてたの?なんて聞いたのさ、そしたら、船に乗ってたって言うんだよ。クルーザーって言うの?知らないけど。」

「えっ?海に行ってたんですか?瀬能さんが?」

「なんでも海に行ったら帰れなくなっちゃって、船に助けてもらったとか、ファンタジーな事、言ってたな。」

「・・・海上自衛隊とかじゃないですか?海で遭難。自衛隊に救助されるって話、よく聞きますよ?海上保安庁かな?」

「おまけにさ、手なずけた猿を一緒に連れて帰ろうとしたらしいんだけど」

「もう、無茶苦茶だなぁ。え?瀬能さん、海で猿を手なずけたんですか?猿って狂暴ですよ?いろは坂の猿なんて危ないんですから。」

「猿は途中で逃げちゃったって。」

「・・・良かったですね、怪我がなくて。なかなか猿は懐きませんよ。目、見ちゃ駄目なんですって、猿、襲ってくるって。」

「それでな、瀬能さん、船酔いが治らないらしくてまだ頭が揺れてるって。なんかもうボロボロだったな。吐けるもん何もないって。胃液しかないって。」

「可哀そうですね。何か、持って行ってあげた方がいいんじゃないですか?」

「なんにも出来ないから帰ってくれって言われちゃってさ。・・・いつも何もしてないくせにさ。」

「木崎さん、それは言い過ぎ。思ってても言っちゃ駄目です。」

「ああ、そうだな。でさぁ、瀬能さんに、鼻毛出てるよ!って教えてあげたんだよ。」

「ああ!それ!ダメ!木崎さんアウトです!」

「な、なんでだよ!」

「女性に向かって、鼻毛が出てるとか、ご法度ですよ!うちの嫁さんにそんな事言ったら離婚させられちゃいますよ!重大案件です!」

「だ、だってよ、出てるもんは出てるだろ!言ってあげた方が親切だろ?」

「だぁかぁらぁ、鏡見た方がいいよ?とか、化粧ちょっと直したら?とか、気づかせるように仕向けるんですよ!それが男の腕の見せ所です!」

「めんどくせぇなぁ。もう、瀬能さんに言っちゃったじゃん!取り返しつかねぇよ、そういうのは先に教えておけよ!」

「エチケットですよ?男のエチケット!木崎さん、もしかして、ラブホ行こ?なんて直接言っちゃうタイプですか?」

「なんでわかんの?お前、マジシャン?セロ?」

「瀬能さんが怒ってなければそれでいいですけど。僕の問題じゃないし、木崎さんの問題だし。」

「怒ってなかったんだけどさ、鼻毛が伸びる体質になっちゃったんだって。そんなんあるんだな?」

「あるみたいですよ?神の血筋をひく一族。男系か女系かっても揉めてるロイヤルファミリー。あの血筋って嘘か本当か耳毛が伸びる家系らしいんですよ。鼻毛が伸びる家系があってもおかしくはないですよね。」

「ああ。それと男の薄毛っていうの?河童みたいなの。あれも遺伝らしいな。」

「男は頭と、真ん中の息子だけですよね、悩みは。嫁にも言われますもん。息子のことで。」

「瀬能さんもさ、鼻毛の事、心配するより、ズボンなり履いて欲しいよな。流石にパンツでウロウロされると目のやり場に困るよ。」


※本作品は全編会話劇となっております。ご了承下さい。

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