導入
※注意事項
・世界設定紹介のコンセプトアートの側面が大きいです
・コンセプトアートとして投稿するために書いた導入で、完結させる予定はありません
「おや、気づいたかね?トランスレーター君」
「ここは?どこじゃ」
「ここは、キミがいた世界から十三単位先の未来!」
「十三単位?」
「そうだ!十三回の長距離タイムトラベルと、長距離ワープを経て辿りついた世界」
「人間はどうなったんじゃ?」
「とっくに滅亡したよ。今ここに暮らしているのは、セリアンソロポス、通称獣人と呼ばれる種族だ。
「これを見てご覧?」
目の前には、狼の頭部と毛並みをしたものや鷲の頭部と羽毛をしたもの、蛇の頭部と鱗をしたものなど、いずれも二足歩行で歩く生命体だった。
「そしてぼくも」
姿を現したのは、獅子獣人だった。
「そして、今のキミも」
「なぬっ?」
トランスレーターは、驚きを隠せない。
何せ、トランスレーターは、かつて生み出された植物の発するメッセンジャーRNAを翻訳するため、人間によって生み出されたAIだったのだから。
何せ、今のトランスレーターは竜人とでもいうべき姿になっているのだから。
「この世界は、今危機に直面している。
「世界は有機物によるネットワークで繋がれ、仮想空間を行き来したり、化合や分解を司る有機物に伝令を送ることで、簡単に言えば念じるだけで電撃や炎を生み出すことが容易になっている。
「エネルギーは、全て有機ネットワークから供給され、食べ物を摂取する必要すらなくなってしまった。
「だが、有機ネットワークからエネルギーを獲得できないものたちが現れた。
「彼らは他の獣人を食べることでしかエネルギーを獲得できない。
「捕食によってエネルギーを獲得している。
「以前は、簡単に始末することができたのだが、最近彼らを憐れむ連中によって、通常とは異なるプロトコル、即ちネットワーク規格で接続し、有機ネットワークを盗聴して、武術や伝令の行使能力を他の獣人から盗み取る力が与えられた。
「それだけなら、まだ良かったのだが、どうやら最近、ほかの獣人の有機ネットワークからのエネルギー獲得能力を喪失される力まで得てしまったようなのだ」
「つまるところ、有機ネットワークからエネルギーを獲得するものと、ほかの獣人からエネルギーを強奪するもののバランスが崩れてしまう危機に直面しているわけじゃな」
「話が早くて助かるよ。流石AIトランスレータ。
「そこで、白羽の矢がたったのがキミだ」
「メッセンジャーRNAの翻訳機能じゃな?」
「そのとおりだよトランスレータ君。
「だから、ぼくたちはキミを竜人としてよみがえらせた。
「キミもまた、ぼくたちの知らない第三のネットワークプロトコルを扱える」
「第三のネットワークプロトコルなんぞ持ってないさ。
「儂の能力はただメッセンジャーRNAを翻訳する能力。それだけじゃ」
「だが、そのおかげで敵に伝令や脳の指令を盗聴されることもない」
「じゃが、儂のエネルギーはどうやって獲得するのじゃ?」
「キミには、特殊な食糧を授けよう。
「キミはぼくたちの元でしかエネルギーを獲得できない。
「キミはぼくたちに従うしかないのだよ」
「ぬぅ……」
「なんて、脅すつもりはないのだがね。
「仲良くやっていこうじゃないか」
※鍵括弧の使い方について
閉じ括弧を閉じず、句点を打つことで、次の開き括弧からの文も同じ話者が連続して話すことを表わしています。
この文法は、海外の本を翻訳した小説やミステリーモノで犯人が自供するシーンなどでよく使われる手法ですが、現状淘汰されつつあるため、注意事項として記載しています。