異世界で勇者になるために
企画に合わせて考えた作品です。
短編として短話完結!を目指したので過程が抜けた
始まりと終わりだけを抜いてきたような作品になりました…
お気軽に読めるのでぜひご覧ください✨
どうしてこうなってしまったんだろう・・・
いや、いつかこうなることは分かっていた。
分かっていると思っていたけど、分かっていなかったんだな・・・
ざわざわとした教室はいつも通り、誰も彼の存在を気にしていない。きっとこの中で彼のことを考えているのは僕だけだろう。
「静かにするように!先生の話は聞いていたか?
いいかー、さっきも言ったがもう1度言うぞ。
山崎が行方不明になったそうだ、少しでも情報が欲しいと親御さんから連絡が入ってる、何か知ってるやつがいたら俺のところに来いよー」
「誰も知るわけねーじゃんあいつのことなんて!先生だって言われても困るくせになー」
「だよねだよねーあっ!でも私知ってる!ゴミと話す人はこのクラスにはいませーん」
「それなら僕も知ってる。あいつ違う世界に行きたいとかブツブツ言ってたから違う世界にいるんだと思いまーす」
なんだそれーという声と共にクラス中が笑っている。
「まぁ、山崎は確かに変わってるやつではあったがな。しかし学校側としては調査いなくちゃいけない、何かあれば教えてくれと言うことだ。じゃ、これでホームルームは終わりだ」
「はーい!先生またねー」
先生が教室を出て行く、すると教室中は先ほどよりも騒がしくなった。
「ぷっ、あいついなくなったのかよ、うける」
「昨日ってことだよな?昨日はなにしたっけ?」
「昨日は的当てゲームでしょ?・・・・・・・・・びちょびちょぞうきんの!森田くんのコントロール良すぎて顔に当てたからゴミいなくなったんじゃないのー」
「そんなわけあるか。あんなのまだまだ序の口だったのにあいつ逃げちまったし」
「そうそう!教室のドア、バンってしめてね。びっくりしたー!野蛮だよねほんと」
教室の中心で話すやつらの会話は本当に最低だ。1人の人間がいなくなったと聞いて、それがしかも自分達がいじめていた相手なのにまだあんなことを言っている。
きっと彼はいじめに耐えかねていなくなってしまったんだろう。死んでしまったのではないことにホッとした自分が嫌になる。
しかもそれは彼が死んでしまうことに対してではなく、自分のクラスから自殺するやつがでなかったことに対する感情だ。
僕もクズだな・・・。彼の言う違う世界に逃げたいという気持ちは僕も分かる。
彼と僕だけがこの教室で1人ぼっちだった。
たまたま彼であっただけで、僕だったかもしれないんだ。
いじめの主犯である森田くんの席から近かったということだけが僕たちの違い。
1人でいて、休み時間は本を読み、給食はだまって静かに食べる。運動も勉強もそこそこで目立たない僕たちは普通だったら仲良くなれただろう。
「異世界で勇者になるために」これは偶然にも僕たちが読んでいた本。君は堂々と読んでいて、僕だけがカバーで隠して読んでいた。
君は知らないだろうけど本当は話したかった。僕も同じものを読んでいるんだ、他のおすすめある?あの技かっこよくない?
・・・・・・・・・何度も頭で浮かべた彼への言葉。
僕の口からでることはなかったけど。
話しかければ良かった。助けられなくても一緒にいれば良かった。
いじめられているのは知っていた、むしろ教室で行われるそれは全員の目の前で行われていたのに。
あぁ、あの時に、あの時だ、あの時もいけた・・・と頭の中で後悔だけが渦巻く。僕に勇気があったなら・・・
僕が後悔の渦に押しつぶされそうになっていると森田くんたちがこちらをニヤニヤと見ていた。
まさか次は僕-----------------
----------------------その瞬間、光に包まれ僕は意識がとんだ。
起き上がるとそこには古そうな建物の中だった、周りではクラスの連中のなんだここ、どこだ?という声が聞こえる。
そして僕の真正面少し遠く、森田くんたちの前にとても美しい女性がいた。あぁ知ってる、そう思った。これは・・・
「異世界の勇者候補生の皆さんこんにちは。わたくしはこの国の第一王女ハンナ・ジャスティスです。此度は我が国の召喚に応じていただき誠にありがとうございます」
やっぱり・・・
どういうことだと騒ぐやつ、友と抱き合い泣くやつ、静かに周りを観察するやつといる中、王女だという人の目の前にいる森田くんたちが声をあげてやりとりを始める。
それを聞きながら頭では違うことを考える、この人達は信用していいパターンなのかどうか、これからとる行動のパターンを。そして誰が主人公なのか・・・
王女との話が進み、どうやらステータスを表示するように求められている。ここは口に出せば自分で見れるらしい。
森田くんたちが「ステータス オープン」というと目の前にウインドウみたいなものが表示された。そこに書かれていることを王女と話している。
勇者候補、賢者の可能性、聖女のごとき、サポーター・・・といった単語が聞こえる。それを見ていた周りのやつらも同じようにステータスを出していく。
僕も・・・と思い、なんとなく「ステータス」と口にした。
名前/ユウキ・クドウ
年齢/14
性別/男
職業/勇者候補生,異世界人,思考者
ギフト/輝く勇気,鑑定
内容に思うところがいくつもあるが、このウインドウ他の人よりも薄い気がする。そして王女以外のこの部屋に最初からいた人達が僕たちを、いや僕たちのウインドウを見ている気がする。
僕もそっと近くの人のウインドウを覗くと見ることができた。
名前/ユウタ・ササキ
年齢/14
性別/男
職業/勇者候補生,異世界人,先導者
ギフト/蛮勇,鑑定
名前/マミ・コバヤシ
年齢/15
性別/女
職業/勇者候補生,異世界人,トラッパー
ギフト/支える勇気,鑑定
何人かを見るとある程度統一されたことがあるのは理解できた。職業2つは固定、残りの1つがその人の特徴を造語として表したものだろう。
ギフトも鑑定は固定、もう1つは全員なにかしらの勇気ということ。勇者候補生というのにもきっと関係するのだろう。
なんとなく状況は分かったが、これはまずいパターンな気がする。
僕がステータスというだけで見れたにもかかわらず教えられたのはステータスオープン。これは僕らの能力を見るためだろう。
さっきから周囲の人たちの何人かの視線が僕に集まる。一向にステータスを出さない僕を怪しんでいるのだろう。
だが気づいてしまった以上見せるのが怖い。説明もなく勝手にこちらの情報を見ようとするところが信用できない。
するとその中から1人、体の大きな騎士のような人が近づいてきた。
「おい坊主、お前はステータスの確認をしないのか?」
僕よりも圧倒的に高い背、1発で人を殴り殺せそうな筋肉、腰にある剣、全てが怖い。ここはおとなしく出すべきか?
・・・いや、ここは違う。きっとこう言うべきだ、ああ言ってもいい、でもこう言った方がいいかもしれない・・・僕は頭の中がグルグルするのを感じた。
そして--------------------------------------目の前が真っ暗になった。
ふと目が覚めると映し出されたのは天井、体は縄で縛られている・・・なんてこともなく布団の中。
どうやらきちんと介抱してもらっているみたいだ。
周りには誰もおらず状況は分からない。とりあえずまずはこれだけはやっておかなければと自分のステータスを出して更に鑑定をかけていく。
ほうほう・・・・・・・・・。だからか、どうやら思考者というのは僕の考えすぎる性格をよく捉えてくれているらしい。
職業/勇者候補生・・・(勇者となれる素質をもつ者),異世界人(異なる世界より召喚された者),思考者(思考することで様々な未来を切り開く者)
ギフト/輝く勇気(勇気をもって行動するとスキルを得やすくする),鑑定(物や人の情報をみる)
気になるのはスキルを得やすくするという点、こう書かれている以上はスキルもあるのだろうがステータスでそれは表示されていない。
まだまだ分からないことだらけだなぁ
色々考えた方が良い気はするかな・・・
そう思って布団から見える範囲の物に片っ端から鑑定をかける。するといきなり体が重くなった。
うぁ・・・気持ち悪い、、、これもしかして魔力切れとかか?
スキルといい、ステータスに表示されない隠しステータスとかあるのかも-------そしてまた目の前が真っ暗に
またまた目が覚めると誰もいない。どうしようか・・・とふと周囲を見渡すとベッドサイドの机に果物が乗っている。見てしまうといきなり空腹を感じてしまう。
食べていいのかな・・・でもこの前はなかったから僕の為に用意されたのだろう。とりあえず鑑定をかける。
リリゴ・・・名称/果実,状態/良好
ん?状態?前は物の名称しか分からなかったのに。もしかして・・・
以前に鑑定をかけたものにも鑑定を再度かけてみると以前よりも分かる情報が増えていた。
つまり、おそらくはスキルなどと同様にギフトには熟練度やレベルといった何かがあるのかもしれない。
部屋中に鑑定をかけていると、またきた----------------------気を失うのも慣れてきたなぁ
こうして僕は何度も何度も部屋中の物を鑑定しては気絶を繰り返していた。誰にも会わないのは何故だろうか?
放置はされてはいるのだろうけど、僕が起きていることもあるのは分かっているのか定期的に食事は机の上にあったりもする。
今この部屋の外の状況はどうなっているか分からない、だけどこのままで良くないということは分かる。
現在の僕のステータスに「運動不足(筋力低下)」という表示があるのだから。
そろそろここを出るべきだろう、そう心に決めてベッドから足を下ろした。立ち上がろうとした瞬間にドアが開いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「やっと起きたのか」
僕が初めて気絶した時に話しかけてきた騎士だった。僕はとっさにその男に鑑定をけた。
名前/アルフォンス・サクシード
年齢/38
性別/男
職業/ジャスティス国 第二騎士団 団長,サクシード家次期当主,求道者
ギフト/武に愛された者
スキル/剣術S,体術A,火魔法A,風魔法C,威圧A,計略B,マナーB ・・・etc
能力/力S,素早さS,体力S,魔力B,幸運B
僕の貧弱ステータスと比べるのもどうかとは思うがきっとめちゃくちゃ強い、この人からしたら僕なんてライオンと猫、いやネズミくらいかもしれない。
「----ぁっ、ゴホっ」
ずっと話していなかったせいか声が出せない。無理に出そうとして咳き込む。
「あぁ、無理して話さなくていい。それにしてもずっと眠っていたのかと思っていたのだが・・・」
彼が僕の目をじっと見てくる。なんだ?睨まれている?いや見られてる・・・?もしかして鑑定か!
気づいたところでどうすることもできず、彼は鑑定が終わったようだ。
「ほうほう、召喚の際の後遺症かなにかで寝ていたのかと思っていたのだが魔力の上昇といい魔力切れで昏倒し続けていたのか」
「・・・っあ」
どうすればいい、どうするべきだ?逃げる?無理だ素早さが全然違う。かといって今この場で上手く扱える力もない。
でも、このままじゃいけないんだよな・・・
俯いてしまった僕に優しそうな声をかけてくる。
「俺は今君のステータを鑑定した。君の職業、鑑定の上がり具合から見ても君はずいぶん慎重な性格らしい。あの場で倒れたのも俺の追求から逃れるための計算か?」
「・・・ちっちがう」
とても小さくでた僕の声も彼は聞こえたらしい。
「違うのか?そこまで計算だとしたらかなり有能かと思ったのだがな」
豪快に笑った彼の顔は本当の笑顔に見えてつい、ずっとこわばっていた体の緊張が少しだけほどけた。
彼は信頼できる、なんとなくそう思った。きっと僕の新しいスキル、直感も影響しているのだろう。
気持ちを切り替えろ、勇気を出せ、俺の勇気のレベルはまだ0だ。1つ、まずはここで1つだけでいいんだ、もう悔やむだけなんて嫌だと思っただろう。
「ち、ちがうとおもいま・・・す。しょ、職業の影響で・・・あ、頭が・・・」
僕の小さくてつたない言葉も彼はしっかりと聞いてくれる。
「あぁ、思考者?とかいうやつのか。俺にはさっぱり分からんが・・・」
「か、考えていることが多くて・・・頭がパンクした感じ・・・だと思います、です」
「パンク・・・?とやらは分からんがまぁあれはあの場で偶然なったという訳か、まぁいい。君は見込みがある、俺が指導しようと思って起きるのを待っていたんだ。他の奴らは先に進んでいるぞ」
指導?この人が僕を?それに他の奴らというのは・・・クラスのやつらか?・・・まだ僕は何も分かっていないんだな。
勇気をだすと決めたんだ、やれるだけやろう。どうなったとしてももうここにいるだけじゃダメなんだ。
「あ、あの、色々とお聞きしたいことがあります・・・。僕のこと、貴方のこと、他の人達や今いるこの世界のこと、どうしてこんな状況なのか、お聞かせ願えないでしょうか?
お願いします-------------------
-----------------------こうして僕の異世界生活は始まった。
僕が勇者になるのか、それとも他のヤツが勇者になるのか、僕はその他の職業になるのか?
ここからが俺の勇者を目指す物語のはじまりだった--------そして・・・
「な、なぁ山崎!俺も「異世界で勇者になるために」読んでるんだ。良かったらその、話さないか?」
「え?ぼ、ぼくと・・・?でも、僕と話してると・・・」
「大丈夫!1人だと怖いこともさ、誰かと一緒だと頑張れるんだよ!俺も最近知ったんだけどさ、俺の話聞いてくんない?」
「う、うん!」
俺が書いた「異世界で勇者になるために」は誰かの心に届くだろうか、君にも届いているといいな。
もう1つの人生で学んできた俺の様に、人生をやり直せる人がでるように
1歩踏み出す勇気が出せるように・・・
読んでいただきありがとうございます!
こんな話楽しそう!という思いだけの作品ですが誰かにちょっといいかも…と思ってもらえたら嬉しいです。