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【書籍化決定】万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る【第六回一二三書房WEB小説大賞 大賞受賞!】  作者: ぱげ
8章:新体制稼働編

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◆94話◆マジックキャノーラ

この世界の1刻=1時間の設定です

 ワイアットの話によると、マジックキャノーラは、草原の森に近い所に生えているらしい。

 実物を見せてもらった太一の感想は“でかい菜の花”だった。

 高さは2mを超え3mに迫るそうだが、見た目はまさに菜の花だ。サヤの1つは15cmほどあり、ぱっと見細いソラマメのようだ。

 

 群生して生えることはあまりなく、草が疎らな平地にポツポツと生えるらしい。

 サヤの中にある種から採れる油が、モルガンの言う通りマジックポーションの材料となる。

 種を取り出す前のサヤ10本が依頼の納品単位で、報酬は200ディルだ。

 一緒に採集する予定のゴールドベリーが西の森で採れるということなので、まずは西の草原の奥を目指していた。

 

 街道沿いに馬車を走らせることおよそ2時間、草原の向こうに森が見えてくる。

「そろそろワイアットの言ってたポイントだな」

 御者台からワルターの声が聞こえてきた。

「そうですね。森との境は、草が疎らになるからそこに生えるって話でしたよね」

 車内からレイアが返事をする。


 マジックキャノーラが採集出来る草原の端までは20kmほどあるため、太一達は馬車を借りて来ていた。

 太一と文乃は馬車を操れないので、これまでは徒歩か乗合馬車を使っていたのだが、ワルターもモルガンも御者が出来るとのことで、今回は時間に制約のない貸し馬車を利用することにしたのだった。

 

「やっぱ馬車があると便利だな。ウチでも買うことを考えないとなぁ」

「そうね。時間の融通が利くのは大きいわね。貸し馬車も便利だけど、毎回600ディルだと採算が合わないし……」

 今回は二頭立ての幌馬車を借りたので、1日のレンタル料は600ディルだった。

 箱馬車になると高くなり、屋根なしの軽馬車だと安くなる。御者も雇えるが別料金だ。

 今回は人数も多く、中途半端な時間で乗合馬車も無かったため借りているが、これから普段使いするのはちょっと割に合わない。

 

「まぁあると便利なのは間違いねぇな。問題は馬の世話をどうすっかだ。馬車とそれを引く馬自体は金がありゃ買えるが、馬を繋いでおく厩舎がいるし世話も毎日必要だからな」

「確かに、レンベックだと馬が飼えるような家を見つけるのも大変そうだな……。ワルターさん達は以前はどうしてたんだ?」

 C級パーティーまで行くと、マイ馬車を持っているのが普通だそうで、ワルター達ハウリングウルフもマイ馬車は持っていたらしい。


「あん? 俺らは厩舎と厩番がいる宿を定宿にしてたからな。場所代と世話代を宿代と一緒に払ってたな。多分、レンベックだとほとんどのヤツらがそうだと思うぜ?」

「なるほど。確かにジャン達も宿に止めてあるって言ってたな。戻ったら色々調べてみるか。とは言え、馬1頭で10,000ディルとかだし、まだまだ先の話だけど」

 と、馬車談義をしているうち最初の目的地である草が疎らになった草原の端まで来ていた。

 

 街道から少し入った所に生えていた木の下に馬車を停め、馬を木に結んでおく。

 そして、以前ジャン達も使っていた簡易結界の魔法具を準備していく。

「簡易結界がセットで付いてて良かった……」

 貸し馬車屋としても馬や馬車を失うのは痛いので、ほぼ全ての貸し馬車に簡易結界の魔法具が付いて来る。


 もっとも善意では無いので、その分もレンタル料に含まれてくるのだが、買うよりは遥かにマシだろう。

 太一がそんな事を考えていると、ワルターとモルガンがあっという間に簡易結界を設置してしまった。

 

「さてと。4~5メルテになるって話だったよな。そこまで背の高い草はこの辺にゃあ生えてないから、見つけやすそうだ。手分けして探すかい? リーダー?」

「そうだな。3組に分かれるか。ワルターさんとレイア、文乃さんとモルガンさんで組んでもらって良いかい? おれは一人で行くわ」

「りょーかい」

「分かりました!」

「分かったわ」

「承知」


 それぞれが承諾の返事をすると、太一が馬車から棒のような物を取り出し、L字型に組み立てた。

 よく見ると目盛りが付いている辺と付いていない辺があり、太一は目盛りの付いている方を地面に水平に、付いていない方が垂直になるよう地面に置く。

 

「リーダー、そりゃなんだ??」

 始めて見る物体を全員が興味深げに見ており、それを代弁するようにワルターが尋ねる。

「簡易的にだけど、これで時間が計れないかと思ってね」

「ああ、なるほど。簡単な日時計として使うのね?」

 太一の端的な説明に、文乃だけが反応する。


「あん? こんなんでどうやって時間を計るんだ??」

「簡単な話だ。陽の位置と高さは時間によって変わる。当然それに合わせて影の長さも変わるよな?」

「ああ。昼間は影が短いが、夕方になると長くなるな」

「それを利用するんだ。今は午前中で、時間が経つに連れて影が短くなっていく。影が一番短くなった後は、逆に時間が経つに連れて影は長くなる。で、今は影はこの長さだ」

 そう言って太一は目盛りを指差す。


「この影の長さがこの辺りに来たら、ここに戻ってきてくれ。正確じゃあないが、今の時期ならそれでおおよそ2時間くらい時間が経過してることになるはずだ」

「なるほどなぁ。全員が同じ長さの棒と目盛りを持ってりゃ、同じ時間に戻って来れるのか。すげぇな、これ。街に居りゃあ鐘の音で分かるけど、外じゃ無理だしな……リーダーが考えたのか?」


「原理自体は別の人が考えたものだな。俺はそれを応用しただけだ。影が一番短くなる時間を跨いで使う時は注意が必要だし、季節によって時間も変わるけど、まぁ集合時間を合わせるだけなら充分だろう」

「それでも大したもんだ。時間を計る魔法具はクソたけぇからなぁ。これ、冒険者相手に売れると思うぜ?」


「じゃあしばらくパーティーで運用してみて、商品化を考えるか。ま、ものすごく単純な仕組みだから、すぐ真似されるだろうけどな。さて、じゃあそれぞれ別の方向へ向かってくれ。見つけても採集はしないこと。あと見つけても見つけられなくても時間になったら戻ること。いいか?」

「「「「了解」」」」

「おし、じゃあ初仕事行ってみよう!」

 太一がパンパンと手を叩くと、それぞれ別方向へ散っていった。

 

 約2時間後、それぞれが最初の場所へ戻って来ていた。

 結果は上々で、3組とも複数本のマジックキャノーラを見つけることに成功している。

 今は、それぞれから聞き取りを行いつつ、ワルターが周辺の簡易な地図を作っているところだ。


「おし、こんなもんだろ」

「ここが現在地で、目印の木まで15分くらいだったから……うん、半径2メルトル以内に10本以上見つけられた感じか」

「そこそこ見つけられたわね。1人だったら大変だったと思うけど……。1本から3,40個は鞘が採れるから、ローテーションして採れば安定的に稼げそうね」

「ひとまずは行けそうだな。後は、今実がなってないヤツ、理想は芽が出たばかりのも見つけておきたいな」

「そうね。年中採集できるらしいから、芽が出てどれくらいで収穫可能になるか把握したいわね」

「うん。それが分かれば、何箇所ポイントを把握しておけば、尽きることなく採集出来るか計算できる。毎回毎回、実が生ってるのを探すのもきついからな」


「……すごいですね、2人とも。そんな事まで考えて採集なんてしたこと無かったです」

 採集の効率とサイクルについて太一と文乃が話をしていると、レイアが感嘆の声を漏らす。

 

「採集系の一番の問題が“採ったら無くなる”ことだからな。今後採集をメインでやってく場合、採り尽くしちゃうと商売上がったりだから、欲に目が眩んで根こそぎ採るのは絶対やっちゃダメだ。採っても減らない数量を見極めて、資源を守りながら採集していこう」

「すげぇな、リーダー。確かにその量が分かりゃ、無限に採り続けられるってことだもんな。俺だったら、目についたヤツ全部採っちまってただろうな……」


「マジックキャノーラは実が生るまで1年掛からないだろうから、そこまで神経質にならなくても良いかもしれないけど、木に生るような実とかだと、結実するまで5年掛かるとかザラだからな。後から後悔しないよう、今の内からチームのルールとして慣れてもらおうと思ってね。それともう一つ、一気に採らないことには大事な意味があるんだが分かるか?」

「え、まだあるんですか? なんだろ……」

「……価値が下がることを防ぐため、では無いか?」

 太一の質問に、これまで黙って聞いていたモルガンが口を開いた。

 

「おー、モルガンさん正解!」

「やはりそうか……。時折、特定の魔物が一か所に大量発生することがある。魔物を探す必要が無くて楽だから、それに皆が集中する。そうなると素材が余り、買取価格が一気に下がるのだ。それと同じなのでは無いか?」


「うん、その通り。大量に同じものを売ると、その一瞬だけは確かに儲かるけど、その後価値が下がって続かなくなる。採取系は量と価格を安定させるのが最重要だから、皆も覚えておいてくれ」

「おう、分かったぜ」

「分かりました!」

「よし。じゃあひとまず今日は、1本平均の4セットだけ採っていくか。まぁそれでも800ディルになるから、馬車代は稼いだことになるし」


 太一達は、採集したポイントに日付と共に印を付けると、次のターゲットであるゴールドベリーを求めて再び馬車へと乗り込んだ。


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