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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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◆87話◆昼餐会

キリが悪かったので少々長めです

「なんと!タイチは冒険者登録した日に、アヤノも三日でE級に昇格したというのか!?」

「ええ。とは言え、パーティランクを上げるために文乃と一緒に倒したポイントを均等割にせず私に割り振ったおかげですが・・・」

食事を摂りながらまず話題に上がったのは、太一と文乃の冒険者としての来歴だった。

領主自らが元冒険者なだけあって、家族も冒険者については詳しいため、話題としても都合が良い。

「謙遜せずとも良い。無茶なポイントの割り振りは出来ないようになっておるからな。

 それに均等に割っていたとしても、三日後に2人揃って昇格出来た訳なのだろ?誤差のようなものだ」

「お父様、一日とか三日で昇格される方はどれくらい居るのでしょうか?」

フィオレンティーナからもっともな質問が投げかけられる。兄2人も気になるのか、小さく頷いている。


「当日に昇格した、という話は一度も聞いたことが無い。おそらく最速記録だろうな。

 三日、というのもワシは聞いたことが無いな。当日よりは可能性はあると思うが、それでも何年かに1人とかであろう」

「まぁ!!それは素晴らしいですね!!」

「うむ。そもそも、一生E級に上がれない者も何割かは居るのが冒険者だからな」

ロマーノの答えに、フィオレンティーナは我が事のように喜ぶ。

一方、これまで黙って話を聞いていたオルランドの表情は真剣だ。

「中々に厳しい世界なのですね・・・。ちなみに父上は何日くらいで昇格したのですか?」

「ワシか?確か10日くらいは掛かった覚えがあるぞ」

「父上でさえ10日ですか・・・タイチ殿とアヤノ殿の凄さが良く分かりますね」

「そうだな。少なくとも当時のワシより今の2人のほうが強い、ということだな」

「・・・ロマーノ様、そろそろ持ち上げるのは止めてもらえませんか??背中がむず痒くなってきましたので・・・」

「はっはっは、別に持ち上げてなぞおらん。数値に基づく事実だ。

 ところで二人とも武器は何を使うのだ?フィーナを助けてくれた時、タイチは短剣だったと聞いておるが?」

「あの時はまさか街中で魔物に出くわすとは思っておらず、護身用の短剣しか手持ちがなかったんです。

 普段の得物は普通の長剣です。両手持ちなのでバスタードソードに近いかもしれません」

「私は弓ですね。距離や相手によって、ショートボウとロングボウを使い分けています」

「アヤノは弓を使うのか。珍しいな」

「俺と違って、文乃の弓の腕前は一級品ですよ。純粋な戦闘能力で言ったら、文乃の方が間違いなく上です」

「ちょっと、兄さん!」

太一が話の矛先を文乃に向けるためにした発言を聞いて、文乃が太一を睨むが、太一は無視を決め込む。


「ほぅ、そうなのか・・・?」

「ええっ!?そうなのですか、アヤノ様!?そんなにお綺麗なのに・・・」

太一の目論見は見事に成功し、早速辺境伯とフィオレンティーナが食いつく。兄2人も声には出さないが、表情が興味津々である事を隠せていない。

「ええ。100メルテ以内であれば、まず外すことは無いですね。

 我々が異常な速さで昇格出来たのも、文乃の弓があったからこそです」

「100メルテで必中ですか・・・それは確かにとんでも無いですね。領都の弓兵隊長くらいですよ、その腕前は・・・」

「王都騎士団の弓兵部隊でも、そのレベルの者は一割程度だと思います・・・」

タイチから飛び出した具体的な数字を聞いて、兄2人が驚きを口にする。

「ふむ。後からタイチには少し腕前を見せてもらおうと思っておったが、これはアヤノにも見せて貰わねばならんな。

 ノルベルト、裏庭に的も出しておいてくれ」

「かしこまりました」

ロマーノは嬉しそうにノルベルトに準備を命じる。

「グッ」

「??」

それを聞いた文乃が見えない所で太一に肘打ちをお見舞いし、くぐもった声を太一が漏らした。


その後話題は、太一達の商売の話に移っていった。

「冒険者のクセに変わった商売をしている新人がいる、と商業ギルドで少し話題になってたけど、タイチ達のことだったのね」

「え?そうなんですか!?」

こちらの話題に興味を示したのはキルスティだった。領都でもダレッキオ家の商売を仕切っているのはロマーノではなくキルスティらしい。

「ええ。詳しい内容までは把握してないみたいだったけど」

「なるほど・・・あんな小さい規模でも、気にする人は居るんですね」

まさかすでに商業ギルドで話題になっているとは思わなかった太一は、少々困惑顔だ。


「目聡い商人は、新しいものには敏感よ?どんな大きな商売でも最初は小さな規模なんだから、小さいからって気にしない理由にはならないの」

「確かに、それはそうですね」

「ちなみにどんな商売をしているのかしら?」

キルスティの質問に太一は、コンビニ部門、ギャンブル部門、買取部門について掻い摘んで説明をしていく。

「なるほどね。ものすごく画期的と言う訳ではないけど、確かにこれまで誰もやらなかった商売ね。

 それを3つも同時にやるんだもの・・・そりゃ目立つわよ」

太一の説明を聞いたキルスティは驚きつつも呆れ顔だ。

「それにしても上手く考えたものね。

 何でも屋は、時間と手間を僅かなお金で解決させたい人を狙ってるのね?」

「!?はい、その通りです。良く分かりましたね・・・?」

「ふふ、伊達に領主の妻はやってないわよ?

 一見、何でも売ってるのがポイントと見せかけてるけど、この商売は無駄な物を仕入れたら成り立たないわ。

 多少お金を出してでも欲しい、絶対に必要な物を売るっていうのが本質ね」

「お見事です。私の故郷には“砂漠で水を売る”という言葉がありまして、それを地で行っている感じです」

「砂漠で水を売る・・・素晴らしい言葉ね。

 絵合わせは賭け事だから、やり方さえ間違えなければこれも失敗は無さそうだし。

 買取屋も、売る方からしたらこれまでの依頼の時に、ほんのちょっと気を付けるだけで飲み代が稼げるんだもの、嬉しい話よね。

 2人とも本当に大したものよ。よくこんな商売思いついたわね?」

「元手が心許ないので、大きなリスクを負えないですし、既にある商売を真似しても資金がある店には体力的に勝てませんからね・・・必死に考えましたよ」

ベタ褒めしてくるキルスティに、はははーと乾いた笑い混じりで太一が答える。


「考えないのよ、多くの人は。で、人がやってる事とか自分がやれそうな事をやって失敗するの。

 でも、あなた達はそうじゃ無い。腕も立つのに商売の才能まであるなんて・・・旦那じゃなくても勧誘するわね、これは。

 アナタ、絶対この二人との縁は切らしちゃだめよ?」

「キティがそこまで言うのは珍しいな・・・

 むろん言われなくてもそのつもりだったが、商売の才能まであることが分かったら尚更ウチに仕えて欲しくなるな」

「申し訳ございません。今の所、お仕えすることは出来ません・・・。

 ですが、一つご提案と言うかお願いがございます」

話の流れで、ここで切り出すべきと判断した太一が話を始める。


「お嬢様をお助けした褒美を頂ける、とお聞きしました。

 大変図々しいとは存じますが、モノやお金の代わりに、一つお願いを聞いていただきたいのです」

「ほう?願いとは何だ?まさか娘をよこせと、とは言わんだろうな??」

態度を改めた太一をギロリと睨みながらロマーノが問い掛ける。

「ちょっと、お父様!急に何を言い出すのですか!?」

それを聞いたフィオレンティーナの顔は真っ赤だ。

「それも非常に魅力的なお願いですね・・・しかし平民である私にお嬢様は勿体なさすぎます・・・」

「ふむ、そうか・・・まぁタイチであれば考えない訳でも無いがな」

「お父様っっ!!」

まさかの公認発言にさらに慌てるフィオレンティーナ。太一も困惑顔だ。


コホンと軽く咳払いをして、あらためて太一が切り出す。

「あまり揶揄われますと、お嬢様に嫌われますよ?

 端的に申し上げますと、私たち二人をロマーノ様の派閥の末席に加えていただけないか、と言うのがお願いになります」

「ふむ、派閥にな・・・」

「ええ。今後我々の商売を模倣する者が必ず出てまいります。

 全てを防ぐことも出来ませんし、するつもりも無いのですが、そう簡単には真似されないように手を打ちたいのです。

 真似をするだけならマシですが、妨害をしてくる輩も出てくるかと思います。

 まだいくつか商売のネタは持っていますので、今後のことを考えても有力な貴族の方の後ろ盾をいただけないかと考えておりました」

「なるほどな・・・確かに商売をする上で貴族の後ろ盾が有るのと無いのとでは、大きく違うな。

 だがなぜワシなのだ?無論キティも言ったように、ワシらからしたら願っても無い話ではあるが・・・

 偶々知り合いになったというのはあるだろうが、そこまで急ぐことでもあるまい?」

「確かに仰る通り、まだ急ぐ必要は無いのですが、遅いよりは早い方が良いのも事実。

 何より、私の信頼する方々から、ロマーノ様なら間違いないと太鼓判を頂いておりまして」

「ほう?ワシを推薦する者がおったか」

「はい。お1人はロマーノ様も良くご存じのツェツェーリエ様。

 もう御一方はご存じかどうか分かりませんが、錬金術師のワイアットさんと言う方です」

「なに!?ツェーリ様はともかく、ワイアットがか?」

太一の口からワイアットの名前が出てきたことに余程驚いたのか、思わずロマーノが聞き返した。


「はい。ワイアットさんからは、冒険者時代にご縁があったと伺っておりますが?」

「ああ。古くからの知り合いだが・・・そうか、すでにワイアットとも知己であったか。

 ふふふ、そうかそうか。良かろう。ケットシーの鞄、だったか?本日よりワシが正式に後見となろう。

 帰りには正式な書面も渡すゆえ、持って帰ると良い」

「ありがとうございます!それと、もう一つ。ロマーノ様で無くてはならない理由がございます。

 こちらは大変申し訳ございませんが、まずロマーノ様のみにお伝えさせていただきます。

 ツェツェーリエ様より書状を認めていただきましたので、ご確認ください」

太一は懐からツェツェーリエからの書状を取り出しロマーノに手渡した。


「ふむ、確かにこれはツェーリ様からのものだな。どれ・・・・・・っっっ!!!!」

途中まで読み進めたタイミングで、ロマーノの顔が驚愕に包まれる。

「・・・・・・タイチ、これは真か?」

「はい。ご存じなのは、ツェツェーリエ様とヨナーシェス様だけです」

「ふふふ・・・くっくっくっく、なるほどな・・・確かにこれならワシが適任だろうな。それにしても、そうか。そなたら2人がな・・・」

「アナタ、随分嬉しそうですね。そんなに良い事が書いてあったのですか?」

ツェツェーリエからの書状に目を通し上機嫌なロマーノに、キルスティが問い掛ける。

「ああ。これ以上ない幸運だ。フィーナには悪いが、オークに感謝する必要があるくらいにな」

「まぁ、そこまでですか!?」

「ああ・・・」

ロマーノはそこで一旦言葉を区切ると、ニヤリと笑いながら太一と文乃を見やると、言葉を続けた。


「二人とも、ワシと同じだ」

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