◆83話◆個性的なメンバーたち
自己紹介回
食堂スペースへ移動した一行は、テーブルを2つ繋げて座っていた。
「さて、元ハウリングウルフの面々同士は別として、皆お互いのことは何となく知ってるだけだと思う。
なので、軽く自己紹介していこうか。自分の得意分野とか苦手分野を教えてもらえると助かる。
じゃあ、言い出しっぺの俺から」
そう切り出すと、太一が簡単な自己紹介を始める。
「俺は太一。年は21でE級だ。知っての通りフローターズのリーダーでケットシーの鞄の店長だ。
特にクラスは意識したこと無いけど戦闘の時は剣を使ってる。軽戦士が一番近いのかな?索敵は人よりちょっと得意だと思う。
ただまぁ戦闘は弱くはないけどあまり好きじゃ無いな、俺は。
文乃とは兄妹で、一ヶ月ちょっと前に田舎から出てきたばかりだ。冒険者で名を上げるつもりは無くて、商売をして稼ぐのが第一の目的だ。
そのための資金稼ぎとして冒険者をやってるのがホントのところだ。
今回の試みもその一環だな。みんなよろしく頼む」
「次は私ね」
太一の自己紹介が終わったのを受けて、文乃が続いて自己紹介を始める。
「文乃よ。兄さんと同じく21歳のE級。
兄妹と言っても義理の兄妹だから、年が同じでも双子って訳では無いわ。
私の武器は弓ね。ロングボウとショートボウを状況に分けて使い分けてる。弓の腕前はそこそこだと思うわ。
接近戦は出来なくは無いんだけど、お世辞にも得意じゃ無いから、遠距離からのサポートがメインね。
兄さんと一緒で商売を中心に考えてるけど、何をやっていくかは手探りね。これからよろしくね」
「えーーっ!2人とも一ヶ月でE級になったんですか!?それがなんで採集依頼なんか・・・」
太一も文乃も、冒険者になって一ヶ月足らずと知ったレイアが目を丸くする。
「レイちゃん、一ヶ月じゃねぇぞ。こいつら1日か2日でE級になってたはずだ。
ギルド職員たちがちょいとザワついてたんで覚えてる」
「はぁぁ!?何をどうやったらそんなことになるんですか?!」
「おや、それは本当かい?たまげたね」
「カカカ、それは凄まじい」
一ヶ月でE級になっていることを知って驚いている所へ、ワルターが更に驚愕の事実を伝えると、レイアが絶叫する。
モルガンとタバサもその事実にさすがに驚いたのか、目を見開いた。
「あー、まぁ、うん。偶々他のパーティーとゴブリンの群れを上手く倒せてね・・・」
「くくく、偶々でE級昇格が1日で出来りゃあ誰も苦労しねぇっての。まぁ、戦闘でも頼りになりそうなリーダーで良かったぜ。
さて、んじゃ次は俺だな。
ワルターだ。スカウトをやってる。一時はC級までいったが、何だかんだで今はD級だな。メインウェポンは短剣とダガーだ。
斥候系の仕事は一通り熟すぜ。ただあんまり力仕事には向いてねぇな。
知っての通り、モルガン、タバサ含めた6人でハウリングウルフってパーティーを組んでたんだが、3年前にみんないい年だって事で解散した。
それからはソロでのらりくらりやって来た。おっと年は49だ。よろしく頼むぜ」
「次は某だな」
ワルターの自己紹介が終わると、モルガンがゆっくり口を開いた。
「名はモルガン、50歳。今はE級だ。神官戦士をやっておる。いや、やっていたが正解か?
ワルターとは違い、ハウリングウルフが解散した後はほとんど冒険者としては活動しておらぬ。
E級を維持できているのは、治癒系の依頼や教会からの依頼を偶に受けていたからだ。
ただ、鍛錬は毎日欠かさず行っておった故、勘を取り戻せればある程度やれるとは思っておる。
武器はメイスかウォーハンマー。重装備故、素早い動きや隠密行動は不得手だ。
それと戦女神の祝福を受けておる故、ある程度治癒の奇跡を使うことが出来る。よろしく頼むぞ」
「次はあたしだね」
モルガンに続き、タバサが自己紹介を始める。
「魔法使いをやっているタバサだよ。
あたしもちょいちょい魔法絡みの依頼を受けてたから、E級だね。年は秘密だよ。
攻撃も補助も一通りの魔法は修めてるけど、得意なのは水属性と土属性だよ。
30年以上冒険者をやって、いい加減疲れたから引き籠ろうと思ったんだけどねぇ・・・
いざ引き籠ってみるとこれがまぁ暇でねぇ。商売を始めようにも冒険者一本だったあたしには、何をやったら良いかサッパリでね。
だから今回の話は、あたしにとっても渡りに船だったんだよ。
たださっきも言った通り、体力的にはしんどいからね。皆とは違って店の手伝い希望だね。
ああ、それともう一つ・・・・・・」
そこで言葉を区切り、タイチ、アヤノ、そしてレイアを順に見てから言葉を続ける。
「あたしは長年魔法を使ってきたから、他人の魔力を感じることが出来るんだがね。
タイチもアヤノもレイアも、魔法の適性がありそうなんだよ」
「「「えっ?」」」
思わず声を上げた3人に、タバサはニヤリと笑いかけた。
「驚いたかい?でも間違いないよ。
タイチとアヤノなんか、一流の魔法使いになれるレベルで魔力がありそうだし、レイアもじゅうぶん実戦で使えるレベルになると思うよ。
どうだい?あたしには弟子もいないし、暇な時に少しずつ魔法の手解きをしてやろうと思うんだが??」
「えっ!?ワタシ、魔法が使えるようになるんですか??ホントに!?」
「ああ、まず間違いなく使えるはずだよ。適性やら何やら、色々調べてからだけどね」
「やります!時間無かったら作ってでもやります!!何ならタバサさんの家に住み込みます!!!」
タバサの思わぬ提案に、レイアが鼻息荒く飛びつき、それを見たタバサも相好を崩す。
「おやおや、本気かい?まぁ部屋は余ってるからね。いつでも遊びに来たらいいよ。
タイチ達はどうだね?」
「是非、お願いします。前から魔法とか魔法具に興味はあったんですが、何から手を付けたら良いかサッパリ分からなかったので・・・
さすがに住み込みは無理だと思いますが」
「はっはっは、そりゃ残念だ。でも魔法に興味があるってのは嬉しいね。
分かった、じゃあこれから時間を見つけてボチボチやっていこうかね」
「「「お願いします」」」
「えっと、じゃあ最後は私ですね!」
タバサからの思わぬ言葉に嬉しさを隠しきれないレイアが、弾んだ声で自己紹介を始める。
「レイア16歳です。昨日までシルバークロウっていうパーティーにいたんですが、辞めてきました!
まだ冒険者歴3ヵ月くらいなんで、当然F級です。
私もタイチさん達と同じで東の方にある小さな村から出て来ました。
上に兄と姉がいて家を継げないのは小さい頃から分かってたので、16歳になったら冒険者になるって決めてました。
だから村にいる時から、衛兵さんから暇な時に槍を教えて貰ったりして、自分なりに備えてたんです。
なので武器はショートスピアです。一応軽戦士ですが、タバサさんの話を聞いて魔法戦士を目指すことにしました!
採集も魔法も頑張るので、よろしくお願いします!!」
「ふむ。槍であれば某も少々心得がある故、時間がある時に手解きしよう」
「ホントですか!?すごい、槍の先生も出来ちゃった!」
「はっはっは、レイちゃんもこれから忙しくなるなぁ。
いっぺんレイちゃんとモルガンと俺で、試し狩りにでも行くか?連携の確認もしてぇしよ」
「はい、是非!!」
「それじゃあ、6の月の間は各自練習してくってことで。
俺と文乃さんは、まだ色々と準備があるから顔を出せなくて申し訳ないけど・・・
あ、タバサさんは早速明日の朝の部から、手伝ってもらってもいいですか?まぁそんな難しいものじゃないですけどね」
「了解だよ。一の鐘の少し後に、馬車乗り場へ行けばいいかい?」
「はい。それでお願いします。
それじゃあ皆さん、あらためて来月からよろしくお願いしますね!」
「はい!」
「おう、こっちこそよろしくな。
ああ、それともう一つ。リーダー、俺たちにはそんな丁寧な口調はいらねぇ。
あんたがリーダーなんだし、正直背中が痒いんだわ」
顔をしかめて背中を掻く真似をしながら、ワルターが笑いながら言う。
モルガンとタバサも笑いながら頷いている。
「そっか。分かった。これからもよろしく頼む」
「おう、それで良い。あらためてよろしく頼むぜ」
「よしなに」
「ああ、よろしく頼むよ」
こうして、フローターズ調達部隊は産声を上げたのだった。




