◆81話◆リクルーティング
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「え?専属のチームってどういうことですか??」
太一からの突然の勧誘にレイアは首を傾げる。
「知っての通り、ウチの店は俺と文乃さんの二人だけでやってるよね?
まぁ絵合わせは良いんだけど、何でも屋の方と買取屋のほうは、そろそろ人を雇ってお願いして、他の事も始めたいと思っててね。
特に力を入れたいのは、素材の採集なんだ。色んな種類の調達依頼があるけど、人手が足りず手を出せなくて・・・
それで、ウチのお店専属の調達部隊を作って、色々な所へ採集、慣れたら採掘とかにも行ってもらうことを考えてるんだ」
「へぇ、なるほど・・・」
「採集をする人がそもそも少ないから、今はどうしても討伐のついでで採集するか、安全な近場でしか採集できないでしょ?
でも、最初から採集が目的のチームが作れたら、遠出して珍しくて高額な物も採集できるようになると思うんだ。
だから、ウチに持ち込んでくれる人にまずは声をかけてるって訳」
「採集のために遠出する・・・それはちょっとワクワクしてきますね!!」
「もちろん雇うからには、固定の給料と、採って来た物に応じた歩合給も払うつもり。
それと大きなメリットとして、採集場所を部隊内で共有することだね。場所を開拓すればするほど、採れるものが増えて儲かるはず。
ただ、デメリットとしてギルドポイントの稼ぎは悪くなっちゃうから、そこだけは了承してもらわないといけない」
「よお、タイっちゃん、面白そうな話してんな。俺にも聞かせてくれよ」
太一が一通り説明を終えたところで、別の男が声をかけて来た。
「あ、ワルターさん。聞いてたんですね。丁度良かった、ワルターさんにも声をかけるつもりだったんですよ」
「ワルターさんこんばんわ~」
「おう、レイちゃんこんばんわ。この年寄りに声をかけてくれるたぁ嬉しいねぇ」
ワルターはレンベックでも最古参と言って良いベテラン冒険者だ。年齢は50位だと聞いたことがある。
数年前までC級パーティ“吠える大狼”のスカウトとして活動していたが、多くのメンバーが寄る年波には勝てず、数年前にパーティーが解散。
その後も引退せず一人で冒険者を続けている。ソロになったことで流石にランクはD級になったが、それでもD級を維持している辺りが元一流だ。
「途中から聞いてたけどよ、タイっちゃんとこ専属で採集チーム作るんだって?」
「ええ。ウチのお店兼パーティー専属の採集チームって感じですね。
これまで手が出せなかったような調達系のものも、専属のチームを作る事が出来ればこなせるようになると思うんですよね。
で、その実績がある程度知られてくれば、指名依頼で割の良い仕事も増えると睨んでます」
「相変わらず面白れぇこと考えてんなぁ、タイっちゃんは。条件次第で、俺みてぇな暇してる年寄りは乗ってくると思うぜ?
ちなみに、どんくらいの給料を考えてんだ?」
「役割や実力・貢献度にもよりますけど、2勤1休で最低固定給が1500。依頼報酬に換算して月1500を超えた分の6割が歩合給、ってトコですね。
例えば、1チーム4人で月10000ディル分採集できたとすると、4000ディルが歩合給計算の対象になります。6割なので2400がチームに対する歩合給、一人頭は600になります。
1500足す600の2100が、個人の手取りって感じですね。
あ、採集の途中で討伐した分については、全部持ってってもらって大丈夫ですし、ある程度自衛できるような訓練も考えてます」
太一が、考えている待遇をさっと説明する。
それを聞いたワルターは右手を顎に当てて目を細める。
「ふむ・・・当たり前だが一人でやるよりはちょいと目減りはするが、悪くねぇな」
「え?そうなんですか?バラの物は溜まらないとお金にならないから、多少安くてもありがたかったんですけど、採集専門で割り切るなら個人の方が良いんじゃ??」
「まぁ表面だけ捉えるとそうなるわな。だがな、色々と問題があるんだわ。
そもそも採集を好んでやる奴が極端に少ねぇから、割り切ったらソロでやることになる。ソロってのはリスクがでけぇんだよ。
いける場所なんて知れてるから報酬なんざすぐ頭打ちだ。おまけに怪我でもしてみろ?そのままお陀仏だぜ??」
「むむ、確かに・・・」
「あとな、今でこそ近場で比較的安全な調達依頼があるけどよ、いつ無くなるかなんて分かったもんじゃねぇ。
仮に俺らがやらなくても、何人かは確実にタイっちゃんの話にのるわな。そしたら近場の依頼なんて全部無くなるぜ?
でもチームだったらソロでは無理な依頼もこなせるし、安全性も大違いだ。
あとは固定給があるのもでけぇ。素材が少ない時期でも、怪我してしばらく動けなくても最低ラインが保証されてるから、安心感が違うわな。
で、一番でけぇのは、さっきタイっちゃんも言ってた“情報共有”だ。
チームで動いて報酬も山分けだろ?ソロだと隠すような美味しい情報も共有した方が儲けに繋がるから、どんどん情報が集まる。
多分、半年もしたらソロでやるのと比べて相当差が付くはずだ。もはや同じ採集とは言えないくらいにな」
太一が説明しようと思っていたことのほとんどを、ワルターが代弁してくれる形になった。
「あはは、ワルターさん詳しい解説ありがとうございます。
ただ、ソロである程度の戦闘力がある人なら、実入りは確実に減るので、いいことばかりじゃ無いですけどね」
「まぁな。ただ逆に言やぁソロでもやれる戦闘力が無けりゃ、話に乗った方がいいってこったな。
ってことでタイっちゃん、俺はこの話乗るぜ~」
「え?そんなあっさり決めていいんですか?いや、私としては嬉しいですが」
「おう。この年で安定して稼げるってのはありがてぇ。何よりタイっちゃんとやってりゃ飽き無さそうだしな。
ちなみに、募集人数はどんくれぇだ?」
「5人までですね、ひとまず」
「了解。2人くれぇアテがあるんだが、声掛けても大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。その分の枠は空けておきます」
「ありがてぇ。遅くとも2、3日で結果は出るから、少し待っててくれや」
「分かりました。お願いします」
「レイちゃんはどうすんだ?」
「私もお願いします!ただ、パーティーメンバーに話をしないといけないので、私も2、3日待ってもらうかもしれませんが、いいですか?」
「もちろん大丈夫だよ。パーティーは抜ける時の方がトラブルが多いって言うし、急がなくてもいいからね」
「ありがとうございます!」
「丁度もうすぐ7の月だし、キリの良いところで7の月から始めるってことにするか」
「そりゃ分かりやすくていいな。了解だ」
「分かりました!!」
無事常連客の勧誘に成功し、調達部隊の立ち上げは急激に動き始めるのだった。




