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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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◆80話◆仕入調整

街中でオークに遭遇し辺境伯の娘を助けた翌日、太一と文乃は雨上がりの街の中をワイアットの店へ向けて歩いていた。

昨夜のうちに一連の出来事を文乃に共有し、後ろ盾についてはひとまずダレッキオ辺境伯に相談してみることを決めた太一と文乃は、本日は文乃のまとめた内容を元に、仕入れの独占契約を結ぶため仕入れ先を回る予定だ。


「やあタイチにアヤノ。2人で来るのは珍しいね。ああ、タイチ、昨日は大活躍だったそうじゃないか?」

「おはよう、ワイアットさん。耳が早いな・・・と言うか、緘口令が敷かれてるはずだけど、誰から聞いたんだ?」

「ふふ、長年冒険者をやっていると、色々コネも出来るものだよ。で、今日はどうしたのかね?仕入れかね?」

「仕入れと言えば仕入れだけど、今日はちょっと相談があって」

ワイアットからの質問に、太一に変わって文乃が答える。


「ふむ、どんな相談かね?」

「私たちが馬車乗り場でやっているお店だけど、近いうちに模倣する人が出てくるはずです。

 まぁ、思い付きさえすれば誰でも出来る商売なんで当たり前ですが・・・

 そこでワイアットさんには、ウチ以外に似たような商売を始めた店が出てきても、ポーションを卸さないで欲しいんです。

 代わりにウチも、ワイアットさん以外の所からはポーション類は仕入れないし、一定以上の数量仕入れることを約束します」

「ほほぅ、そう来たか・・・

 君たちの店も、大分知れ渡ってきているからな。確かに真似する輩は出てくるだろうな」

「ええ。ただ店が増えたところで客が増える訳でも無いんですよね、この商売は。

 なので、仮にワイアットさんが他の店にも卸すようになったら、単に分散して卸すだけなので、手間だけ増えて儲けは変わらないでしょ?

 どうです?ウチと専属契約を結びませんか?

 もちろん直接の小売りだったり、ウチみたいなお店以外への販売については、これまで通りで問題無いですよ」

「なるほど、確かにその通りか・・・君らには調達でも世話になっているしな。良いだろう。専属契約を結ぼうじゃないか」

「ありがとうございます」

「なに、私にも利があるのだ。何も問題無いさ。それに、どうせその先の事も考えているのではないかね?」

「と言うと?」

「ダレッキオ家の庇護下に入るのではないかね?」

さも当然であるかのように、ワイアットが太一に問いかける。


「!!なぜそれを・・・」

「ふふ、先ほども言っただろう?色々コネもあると。と言っても今回は偶然だがね。単に、冒険者時代の彼と知り合いだったというだけさ。

 ちなみに私も、彼の庇護下に入っているようなものだね」

「・・・なるほど、そういう事か。まだ庇護下に入るとも決めてもいないし、入れてもらえるかも分からないけど、相談はするつもりだよ」

「彼のことだから、悪いようにはしないと思うがね。まぁ、そういう事だ。これから同じ派閥の仲間になるかもしれないんだから、専属契約など何の問題も無いよ」

「じゃあ、こちらの契約書にサインをお願いね」

「ああ。・・・これで良いかね?」

「ええ、問題無いわ。これで契約成立ね。あらためてこれからもよろしくお願いね」

「こちらこそ、よろしく頼むよ」

無事専属契約を取り付けた二人はワイアットと握手を交わすと、店を後にし他の店へと向かう。


「しかし、ワイアットさんがダレッキオ閣下と知り合いだったとはな・・・」

「驚いたわね。タダ者じゃない感はあったけど、やっぱりタダ者じゃ無いわ。あの感じだと、多分ギルマスとも知り合いよね?」

「間違い無いだろうなぁ。そもそもあの話を自分の意志で誰かに喋っても良いのって、ツェツェーリエさんくらいだし」

「まぁおかげで話が早かったりはするんだけど・・・」

「なんだかなぁ。お釈迦様の掌の上って気がしないでもないけど、まぁ、いっか。とりあえず専属契約を進めよう」

道中そんなことを話しながら、次はヴィクトルの店へと向かう。


「おうタイチにアヤノじゃねぇか。2人で来るのは珍しいな?」

と、ここでも二人で来たことを珍しがられながら、矢などの消耗品についての専属契約を問題無く結ぶ。

その後も食品や雑貨類など、全ての仕入先について無事専属契約を結ぶことができ、宿に戻って来た。

なんだかんだで仕入先も増えてきたため、昼を挟み陽が傾き始めていた。

「よし、これでコンビニ事業はしばらく大崩れはしないだろ」

「そうね。ポーションを製造できる工房は5軒も無いし、ワイアットさんの所以外は素材が品薄なはずだから、最悪ポーション目当ての客のついで買いでやっていけるでしょ」

「さてと、じゃあ次は素材採集部門含めた従業員の勧誘だな」

「最初は誰でも良いって訳じゃ無いから、ちょっと時間がかかりそうね」

「まぁ仕方が無いわな。ひとまず買取の常連さんから声かけてみよう」

のんびり夜の部の準備をして、日が暮れ始めた頃に屋台を引いていつもの広場へと向かう。


前日が雨で休業していた冒険者も多く、いつも混雑する広場はさらに活況を呈していた。

絵合わせ部門はもちろん、買取部門も客が多い。

「タイチさん!待ってました!今日もお願いします!!」

開店早々やって来たのは、いつも元気な常連客のレイアだった。

「お、レイアちゃん、いらっしゃい。今日は沢山あるね」

手元を見ると、一抱えくらいある籠を持っている。

「今日は足場が悪かったので、狩りは早めに切り上げたんですけど、その代わり採集に時間を割けたんですよね~。

 あと、昨日は他のメンバーはお休みだったんですが、私は近場でちょこっとプレーンラグを採ってたんです」

「雨の中採りに行ったんだ。がんばるねぇ」

「なんか最近、採集が楽しくなってきちゃって・・・この籠も軽くて便利だから買っちゃったんですよ。えへへ」

話をしながら、籠から採って来た物を嬉しそうにレイアが並べていく。


「えーと、シルバーベリーが13個に癒し草が7本、プレーンラグが14本です!」

「ありがとう。うん、どれも丁寧に採集してあって綺麗だ。さすがレイアちゃん」

「ありがとうございます!」

「全部で34個だから、68、キリの良いとこで70でどうだい?

 ってあれ?プレーンラグは14本だったら自分で常設依頼受けて即納品できるけどいいの?

 これだけで40ディルになるしポイントも稼げるよ?」

「ええ、知ってます。でもいつもお世話になってるんで良いんです。依頼を受けて報告するのも手間ですしねー」

「まぁレイアちゃんが良いならウチは構わないけど・・・

 じゃあせめてこの10本はセットで30で買い取るよ。残りは24個で48だから合わせて78。切り上げで80で」

「やった、増額だ!今夜はワインも飲んじゃおう」

「そうだ、レイアちゃん。ウチのお店専属の採集チームをやるつもりはないかい?」

嬉しそうに買取り金を財布にしまうレイアに、太一はそう切り出した。

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