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【書籍化決定】万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る【第六回一二三書房WEB小説大賞 期間中受賞】  作者: ぱげ
6章:異世界での起業編

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◆75話◆ギルマスへの報告

「あ、タイチさん! こんな雨の日にご苦労様です。依頼、ではないですね? そちらの方は?」

 ギルド内は、雨が降っていることもあってか幸い閑散としていた。

 暇をしているのか、入って来た太一を見つけてクロエが声を掛けてくる。

 

「ああクロエさん、お疲れ様。ちょっと色々あってね……。こちらはダレッキオ辺境伯様のご息女フィオレンティーナ様」

「フィオレンティーナ・ダレッキオです。急なご訪問で失礼いたします」

「へ、辺境伯様のご息女様でしたか。しし、失礼しました。冒険者ギルド総務リーダーのクロエでしゅ、す……」


 そして噛んだ。急に上位貴族の令嬢を紹介されクロエの挙動がたちまちおかしくなっていく。

「で、こっちが同じく辺境伯様の近衛騎士、アルベルトさん。担がれてる方がクラウスさん」

「ここ、近衛騎士の方までっっ」

 貴族令嬢に近衛騎士が上乗せされ、もはや挙動不審になるクロエだったが、クラウスが気を失っていることに気が付くと急に我に返る。

 

「タイチさん、そちらのクラウスさんの治療最優先で良いですよね?」

「うん。流石クロエさんだ、話が早い。頼める?」

「お任せください。レンベック冒険者ギルドの名に懸けて」

「クロエ嬢、お手数おかけするがよろしく頼む。タイチ殿にも、ここが一番腕が立つと聞いて、世話になりに来たのだ」

「かしこまりました。すぐに医療班を呼んできますので、こちらの治療室へ運んでいただけますでしょうか?」

「了解した」


 カウンター脇にある医務室を案内したクロエが裏に入り、すぐに医療班を連れて戻ってくる。

 治癒師と思われる女性が、鎧と上着を脱がされ、ベッドに横たわっているクラウスの診断をすぐに始める。


「大きな外傷は塞がってますね。骨折と……、少々内臓にも損傷があります」

「クラウスは大丈夫なのでしょうか?」

 心配そうに聞いてくるフィオレンティーナに、治癒師の女性がにっこり笑って答える。


「ええ、問題ありません。この傷ならば、すぐに回復できると思いますよ。現場での初期治療が早かったんでしょう」

「よかった……」

 それを聞いて、フィオレンティーナがようやく安堵の表情を見せ、アルベルトもホッと一息吐く。

 

 一方の太一は、クロエと話をしていた。

「クロエさん、あの怪我の件も含めて大至急ギルマスかサブマスと話がしたい。取り次いでくれないか?」

「かしこまりました。どちらもいらっしゃると思うので、すぐに取り次ぎます」

「ありがとう。助かるよ」

 クロエが軽く会釈をして出ていくが、数分で戻ってくる。


「すぐお会いになるそうです。前回お通しした4階の特別室へご案内します」

「了解した。フィオレンティーナ様、アルベルトさん、すいませんが先ほどの出来事をギルドマスターに報告に行きます。申し訳ないですが、お二方もご同席いただけないでしょうか? お会いする前の状況などは、私には分かりかねるので……」


「承知しました。ご一緒いたします。どうか、クラウスのことをよろしくお願いします」

 フィオレンティーナは、太一の依頼に一つ頷き同意すると、治療をしている女性にあらためてクラウスを託し席を立つ。


「ありがとうございます。では、クロエさん案内をお願い」

「すみません、その前に一つお願いがございます。父が心配するといけないので、一報を入れたいのです。すぐに書面をしたためますので、お手数ですが、ダレッキオ家の別邸まで届けていただけないでしょうか?」

「ええ、もちろん。すぐにお届けさせていただきます」

「助かります」

 

 フィオレンティーナは、クロエから渡された紙にペンを走らせ封筒に入れると、右手の人差し指に嵌めている指輪を封筒に密着させる。

 小さく呪文のようなものを唱えると、指輪と封筒が淡い水色の光に包まれすぐに収まる。

 封筒を見ると、フラップの部分が綺麗に閉じられ、表面に薄っすら紋章のようなものが浮かんでいた。


「魔法具?」

「はい。通常であれば封蝋をするのですが、生憎持ち合わせておりませんので……。簡易な封印の魔法です。ダレッキオ家の者しか封印を解くカギを持っていませんので、封蝋の替わりとして通用するかと」

 フィオレンティーナは太一の問いに答えると、封筒を控えていたギルド職員へ手渡す。


「こちらをよろしくお願いいたします。お待たせいたしました。参りましょう」

「こちらです」

 クロエを先頭に、アルベルト、フィオレンティーナ、太一の順でカウンター脇の階段を上っていく。


「タイチ殿、ギルドマスターとはひょっとしてツェツェーリエ様のことか?」

「はい。ご存じなんですか? アルベルトさんって冒険者じゃなく近衛騎士なんですよね?」

「伝説のような方だからな……。依頼を受けて、対魔物との戦闘方法を国中の騎士団に教えて下さるのだ。この国の騎士なら、ほとんどが知っているはずだ。私も何年か前、教えを受けたことがある」


「そうだったんですね。さすが現役のS級、大人気だな……」

「そんな方に当日の面会を取り付けられるタイチ殿も大概だと思うがな……」

「うーん、私の場合は本当にたまたまのご縁ですけどね」

 雑談をしているうちに4階へと辿り着くと、一行は長い廊下を奥へ向かってさらに進んでいった。

 

 廊下の突き当りにある特別室の前に着くと、クロエが扉をノックする。

「開いておるぞ」

 間を置かず、一ヶ月ほど前に聞いた懐かしい声が扉の中から聞こえてきた。

「失礼します」

 クロエが緊張した面持ちで扉を開けて入室する。


「おおタイチ、久しぶりじゃの。その後は調子はどうじゃ?」

「ご無沙汰してます。おかげさまで順調だと思いますよ」

「ふむ、それは良かった」

 まずは笑顔のツェツェーリエと挨拶を交わす。


「タイチさん、お久しぶりですね。討伐依頼だけでなく、調達系の依頼も受けていただいて助かっています」

「いえ、こちらこそ安定して稼げるので助かっています」

「色々と新しい事を始めてるそうじゃないか。また今度話を聞かせてくれたまえ」

 続けて、同じく笑顔のヨナーシェスとも挨拶を交わす。流石にサブマスターだけあって、太一達の依頼達成状況は把握しているようだ。

 

「本日は急にお時間いただいてすみません。つい先ほど、少々厄介そうな事件がありまして……。私の知っている範囲だと、こちらにお知らせするのが一番かと思いお時間をいただいた次第です。こちらは、その事件の当事者でもあるダレッキオ辺境伯様のご息女フィオレンティーナ様、そして同じく辺境伯家の騎士アルベルトさんです」


「ツェツェーリエ様、ヨナーシェス様、初めまして。ダッレキオ辺境伯が長女、フィオレンティーナにございます。この度の不躾なご訪問ご容赦ください。そちらのタイチ様に危ない所を助けていただきまして、その後もこうしてご厚意に甘えさせていただいております」


「ふふ、フィーナは覚えておらんかの。まだお主が小さい頃、ちょいとロマーノの騎士団と遊んだことがあってな、その時に、お主とも少し遊んだんじゃが。そっちの騎士はどうじゃ? もうだいぶ前にはなるんじゃが」

「仰る通り、私がまだ騎士団に入って間もない頃、ツェツェーリエ様に魔物との戦闘についてご教示いただいております」

「そうか、やはりあの中におったんじゃな」

 アルベルトが道中で言っていた通り、やはり騎士団とは馴染みがあるようだ。


 しかしそれより太一が気になったのは、さらっとフィーナと愛称で呼んだことと、おそらく辺境伯その人をロマーノと呼び捨てたことだった。

 

「そうだったのですね。ご高名なツェツェーリエ様に遊んでいただいたというのに覚えておらず……。大変失礼いたしました」

「よいよい。ほんの2つか3つの頃じゃろうて。さて、挨拶はこの辺にして早速本題に入るかの。至急報告したいことがあるとのことじゃったが」

 ひとしきり挨拶を交わすと、ツェツェーリエが席に着くよう促し、全員が座った所で太一が話を切り出した。


「ええ。まず結果を端的に言うと、街中にオークらしき魔物が出現、フィオレンティーナ様以下3名が襲われているところに遭遇し、交戦の末倒しました。念のため首も持ってきています」


 太一が手短に話をし、首の入った袋をテーブルの上にゴトリ、と置いた。


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― 新着の感想 ―
簡潔かつポイントを押さえたお手本のような第一報。 お袋みたいな年齢になると話が回りくどく要領を得ないので、何を伝えたいのか解らないことが多いです。 本人は必要な情報を全て伝えようとしているのかもしれま…
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