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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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◆68話◆第1回経営戦略会議~後編

冒険者市場を市場調査。

この辺りを掘り下げた話はあまり見たことがなかったので。。。

市場規模の調査、想定はマーケティングの基本ですね。

水で口と喉を湿らせた太一は、引き続き冒険者の稼ぎについての考査を進める。

「D級、C級くらいからはパーティー毎の色がハッキリ出てくるから、稼ぎもバラつきそうだなぁ」

「E級よりは全然稼いでるでしょうけど、幅は広そうね。

 ジャン達でだいたい10,000~15,000くらいって話だから、D級はその半分6,000平均くらいかしら?

 B級以上は一気に数が減るし相場も全然分からないから、適当に設定するしかないわね」


B級以上の想定月収を埋めると、次は想定人数の設定に取り掛かる。

クロエによると、レンベックに居る現役冒険者はおよそ3,000人ほどで、ここしばらくは短期的な増減を除き横這いとのことだ。

「で、ザックリの構成比がF40%、E30%、D20%、Cが7%くらいで、そっから上は数えるほど、って感じだったからこれも適当に入れて、と」

必要なパラメータを入力し終えると、合計を計算する。

「ふむ。年間で1.4億ちょい。日本円で140~145億円ってとこか。全部税抜き後の手取りで、貯蓄もしないから総支出が90%と仮定して130億。

 1つの街の1つのクラスターだったら十分な金額かな。どう思う?」

「そうね。町全体、世界全体の経済規模が分からないから相対評価は無理だけど、ひとまず商売する市場規模としては悪く無いわね。

 まぁ、半分くらいが宿代と食費で消えると思うから、実質半分の6~70億くらい?」

「だね。後は、そのうちのどれくらいを取りに行くかだなぁ・・・」


「最低限、兼業冒険者で今の規模以上を稼がないと意味無いから、短期目標はそのラインよね?

 直近の平均が1日550でしょ?ざっくり月16,000として、半分の8,000の粗利を出すのが短期目標ね」

「粗利率がどれくらいかはやってみないと分からんが・・・ひとまず30%とすると目標売上は月27,000、日900か。

 うーーん、どうなんだこの金額??」

「微妙なラインねぇ。宿代抜いた市場規模を65億円と仮定すると、その内の0.5%でしょ?

 そう考えるとハードル高そうではあるけど、別の見方だと、冒険者1人から毎月9ディル売り上げれば良い訳だから、意外に行けそうだし。

 結局やりながらPDCAじゃない?」

「ここからは考えてもしょうがないか。うん!!定量的な目標が出来たことでヨシとしよう!!」

太一は、軽く両頬をパンパンと叩き気合を入れると、売上の話は打ち切り次の議題へと話を進めることにした。


「じゃあ最後はこの街の実態だ。とは言え全部言い出したらキリが無いから、大枠と商売のポイントになりそうな点に絞ろうか」

「まずはさっきも出てたけど娯楽が少ないわね。

 お酒以外だと、音楽は吟遊詩人がいるくらいでしょ?スポーツは趣味ではなく実戦の延長だし、ゲーム類もチェスっぽいのがあるくらいだし。

 あとは物語とか演劇とか寸劇、大道芸の類がチラホラくらいかしら?刺繍とか編み物とか料理とかも有るけど、割と実益寄りよね」

「そりゃ酒場が流行るし、祭りがあると盛り上がるよなぁ。あと意外に賭け事も多くないんだよね。

 別に禁止されてる訳じゃないけど、闘技場含めたトトカルチョ的なのがいくつかと、簡単なカードくらい?」

「競馬みたいなのも無いし、サイコロも無いのよね。地球だと紀元前からあるのに・・・

 神様がリアルにいて、身近に具体的な神の奇跡が起こる世界だから、占いとかが生まれ難かったのかしらね?」


そう。街や冒険者を調べて分かった最大の驚きの1つが、神様がリアルにいることだった。

エリシウムにも宗教はあり、ここレンベックにも神殿や教会もあるが、種類はおそらく“創世教”のみだ。

おそらくと言うのは、太一達がこの街以外を知らないためで、この街に限って言えばおそらくではなく一つだ。

しかし創世教は多神教のため、存外節操がなく日本人である太一や文乃にも忌避感が無い。

そしてその創世教で祀られている神様は実在しているし神の奇跡が起きる。

神の加護がある世界なので当たり前と言えば当たり前なのだが、そうではない世界から来た太一や文乃にとっては大きな衝撃だった。


そんな神の奇跡で最も分かりやすいのが、神殿や教会で行われる創世神による“治癒の奇跡”だろう。

ゲーム的表現をするなら回復魔法、治癒魔法だが、魔法使いには使うことは出来ず、神官などの聖職者のみが使うことができる。

冒険者の中にも治癒の奇跡を使える者がおり、ヒーラーとして人気だ。


「奇跡と言えば、魔法使える人ってあまり多くは無いのね。もっと当たり前のものだと思ってたけど」

「なんらか魔法が使える、ってレベルでも2割くらいって話だね。専門職になると1割切るとかだし。

 まぁ魔法具やら魔装具やらがあるから、身近には違いないけどね」

「あと、お店は専門店がほとんどよね。スーパーとか百貨店みたいなのは無くて、大店でも専門店よね」

「うん。知識とかスキルの伝承が口伝によるところが大きいから、専門化するのかね。

 自分で作ったものを売る、って考え方も強いしね。買い物は基本お店の梯子になるわな」


「あとはそうね・・・物件はほぼ賃貸ね。しかも結構高い」

「家に限らずお店もほぼ賃貸だし、まぁ街から一歩出ると魔物が普通にいる世界だからなぁ。

 安全な場所ってのは貴重なんだろうさ」

「他にも色々分かったことはあるけど、商売に関係してきそうなのはこれくらいかしらね?」

「ああ、まずはこの辺りのポイントを押さえた商売から始めようか」


3C分析をした際に不足していた点を押さえ、太一達はいよいよ具体的な商売の内容を模索していくのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 気になってたお金の部分がいろいろ分かるのすごくいい
[一言] こういうマーケティング分析の話は新鮮でとても面白いですね。 それと、召喚者の家はどうなっているのでしょうか? 所有者が行方不明で、鍵は主人公たちが持っているので、賃貸物件でなければ空き家のは…
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