表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/173

◆66話◆採集依頼

MMORPGでも、採集とか、それを元にした利益計算とか大好物です

ギルドを訪れた太一と文乃は、ワイアットの言った3つの採集依頼を受領すると、再びワイアットの工房を訪れ情報を仕入れた。

ワイアットの話によれば、癒し草はポーション系の基本となる薬草で、ポーションにもハイポーションにも使用するため常に必要だそうだ。

プレーンラグは草原に群生する白いタンポポのような花で、長くて太い根っこがポーションの材料になるらしい。


シルバーベリーは文字通り完熟すると銀色っぽく見える野イチゴの一種だ。

果実自体が銀色なのではなく、表面に生えている細かい起毛が銀色で、それが反射して銀色に見えるそうだ。

本来春に結実するのだが、レンベックは温暖な地域のため旬の時期以外でも真冬でなければ実が生っているらしい。


ちなみにこの世界にも、日、週、月、年と言う概念があり、暦もそれを元に作られている。

1日は地球時間で22時間、それが6日で1週。さらにそれが5週30日で1月。12月で1年という具合だ。

今は5の月の終わり頃、そろそろ夏の走りといったところだ。


閑話休題


いずれの依頼も、期限までは5日あるため急ぐ必要は無い。

太一と文乃は、原則依頼は1日おき、1勤1休と決めている。

なので、採集作業も基本は討伐依頼のついでや、討伐と採集を午前と午後に分けるなどしてこなす想定だ。

ただ、休養日も1日中ボーっとするのも暇なので、散歩がてら近場で採集することにし、今日も早速町近くの草原へ繰り出していた。

狙うのはプレーンラグだ。


「ワイアットさんの話だと、この辺りよね?」

「うん。あの黒い大岩の南側、日当たりのいい浅い窪みがあってそこが群生地の一つだって話」

太一と文乃は、ワイアットから聞いた内容のメモを確認しながら、目的地である黒い大岩を目指していた。

ワイアット曰く、プレーンラグは日当たりが良くある程度保水性のある所に群生すると言う。

レンベックの周りに広がるビシュタール平原は、岩交じりで短い草が生えるエリアと背の高い草が生えるエリアが混在している。

背の高い草が生えるエリアは、背の低いプレーンラグにとっては日当たりが悪いため、岩草原エリアがメインターゲットとなる。

ワイアットが教えてくれたポイントも、岩草原エリアの中にある。浅く窪んでいるため水が溜まりやすく、浅いため日当たりにも影響が無いとのことだ。


「おーーー、あったあった!」

「これは名前の通り白い絨毯ね・・・綺麗だわ」

「こんなポイントが、ほとんど知られてない事が信じられんな。濡れ手に粟だもん」

「情報を形にして残すって文化が、冒険者には希薄なんでしょうね。個人事業主の集まりだから、逆に秘匿することが多いでしょうし。

 命に係わる魔物の情報は、背に腹は代えられないから割と共有されてそうだけど、採集関係は別に死ぬことは無い上みんな興味が無いんだもの」

「なんだかなぁ・・・まぁ俺たちにとっては願っても無い金儲けのチャンスだからいいんだけど」

冒険者の情報リテラシーの低さを嘆きつつ、2人はプレーンラグの採集を始める。


街から近いとは言え、魔物が出ない保証は無いので太一が見張りをして文乃が採集していく。

「必要なのは根っこだけど、プレーンラグのものかどうか確認するために地上部分も必須、ってことだったわね」

「うん。根っこ見ただけでは、さすがに確実に見分けられるかどうか怪しいからね。どう?掘り出せそう??」

「そこそこしっかりした根だから、引っこ抜くだけだと途中で切れちゃってダメね。採集道具を買ってきて正解だったわ」

採集するに当たり、ワイアットの勧めもあって太一達は基本的な採集道具を買ってきていた。

サイズや形の異なるシャベルと大小の鎌にトング、ハサミ、小型のノコギリに加え、採集した物を分けて持ち帰るための布袋などだ。

花を育てる文化があまり無く、採集に対する意識も低いレンベックにおいては需要があまりない商品のため、どれもそこそこ値が張り、総額は200程だ。


「さすがに手で掘るのは限界があるし、こういう道具が無いと効率が悪いしね。

 まぁこういう細かい準備が必要で地味に金がかかる辺りも、採集の人気が無い要因かもしれんな」

「そうね。地味な上面倒ってなると、他に分かりやすい依頼があればそっちに流れるのも道理ね。

 うん、こんなもんかしら。10本ワンセットで良かったわよね?」

「そうそう。一気に持って帰っても消化しきれないから、3セットを週1くらいで持ってきてくれるのがベストって言ってたね」

「分かったわ。何となくコツも掴めて来たし、サクッと採集しちゃうわね」

「ありがとう。これ1セットで40、3セットだから120か。

 往復の時間込みで正味3時間だから時給40、週1の副業としたら結構美味しいんじゃないか?これ」

「そうね。5週で600だから、月6万円の楽な副業でしょ?初期投資も2回で回収出来るし、やらない選択肢は無いわね」

「後は他の2つ、癒し草とシルバーベリーがどの程度の難易度かだなぁ。どっちも南にある森に自生してるって話だから、ここよりは遠いし」

「徒歩だと森まで片道2時間くらいのはずだから、採集依頼だけでも日帰りでこなせて悪くは無いと思うわ。

 プレーンラグみたいに群生はしていないって話だから、その辺りの手間がどれくらいなのか次第ね。

 まぁ適当な討伐依頼と一緒にやれれば、多少採集に手間がかかっても問題無いでしょうけど」

「じゃあ次回は森に行ってみよう。プレーンラグも1か所だと採り尽くしたり、ライバルが現れないとも限らないから、他のポイントも見つけたいね」

「明日から討伐と採集、1日おきでしばらくやって様子見ね。はい、3セット収穫完了よ」

「ありがとう。じゃあ他にもポイントが無いか探しながら、のんびり帰るか」

「そうね。しかし良い気分転換になったわ。土いじりなんてどれくらいぶりかしら?」

二人は、帰るついでにポイントを探すため、行きとは違うルートを通りのんびりとレンベックへと戻っていった。


翌日は近場で討伐依頼をこなし、その翌日は森へ向かい採集、さらに翌日は討伐、その翌日は採集、と予定通りのルーチンを繰り返した。

そして、最初のハイデン村での討伐を合わせて討伐依頼4回、採集を3回こなした所で、目途としていた宿宿泊10日目を迎えた。

ランクポイントも順調に溜まり、文乃もEランクに昇格を果たしている。


「持ち金は8,200ちょいかぁ。10日前に宿代払った時点の残金っていくらくらいだっけ?」

「3,500くらいね。なのでプラス5,000弱って所よ」

2の鐘の後、朝食を摂りながら太一と文乃はこの10日間の収支について話をしていた。

「最初のゴブリン討伐とか、ハイデンのコボルトとかは、今ならイレギュラーだってのが良く分かるから、それ以降での収支だとどんな感じ?」

「それ以降って言うと、プレーンラグ採集からの6日間ね。えーっと、ざっくり6日でプラス2,200ね」

「売上げだけだと?」

「んーーー、3,300ってとこね」

「1日550か。当初計画が討伐だけで月10,000~12,000ってところだったから、採集込みで1日550なら十分な計画過達だな」

「そうね。このペースでも、ある程度余裕を持った生活が出来るのが分かったし、だいぶ気が楽になったわ」

「うん。やっぱ生活していけることが分かると、安心感が違うね。そこの検証が終わったから、次のフェーズに進めるし」

「次のフェーズって言うと、いよいよ商売を始めるってことよね?」

「ああ。今日、宿泊費をまた10日分支払うと残り6,000ちょっと。最悪手元に1,000は残したいから、軍資金は5,000だ。

 ちょっと商売一本で食っていくには心許ない金額だから、やっぱ当初予定通り兼業で行く感じになるだろうね」

「軍資金を全部溶かしても生活できる程度には、冒険者で稼がないと駄目ね」

「そのための採集依頼だ。ってことで、今日は第1回の経営戦略会議をしよう。

 これまでの冒険者稼業と街の調査で分かったこと、感じたことをベースに経営企画を立てにゃならん」

「じゃあ朝食が終わったら、伊藤さんの部屋に集合で良い?あ、飲み物やら軽食やらも買ってくるわ」

「了解。部屋、片しておくよ」


こうして、いよいよ太一と文乃による本格的な異世界マーケティングが、幕を開けるのだった。

評価・ブックマークいただく → 作者嬉しい → 執筆速度アップ → アナタも嬉しい

まさにWin-Win!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ようやくタイトルの回収にかかりますか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ