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◆40話◆冒険者稼業、始めました

新規連載も始めました!(本作の更新も続けます!)

↓よろしければ、こちらもお読みください↓


異世界は猫と共に ~システムエンジニアは失われた古代の魔法理論を解析し、魔法具界に革命を起こす

https://ncode.syosetu.com/n3803ik/

翌朝太一は、朝一の鐘の音で目を覚ます。

昨夜ファビオたちから聞いたのだが、この街では大鐘楼の鐘の音で時間を知るのが常識なようだ。

朝、午前、昼、午後、夕方、夜の6回、それぞれ音色の違う鐘が時を知らせている。

1日が22時間のため、地球時間そのままの感覚からはややずれるが、それぞれ5時頃、8時頃、11時頃、14時頃、17時頃、21時頃の6回だ。

先ほどの鐘は朝の鐘、通称一の鐘と呼ばれている鐘なので朝の5時頃に起きたことになる。

地球基準で考えるとかなりの早起きだが、照明器具が当たり前になっていないエリシウムでは、明るくなったら行動を開始するのが当たり前だ。


簡単に身だしなみを整えて食堂へ下りていくと、泊まり客の半分以上がすでに朝食を摂っていた。

「おはよう、文乃さん。早いね」

その中に文乃を見つけると、挨拶をしながら向かいの席へ座る。

「おはよう。私もついさっき起きたとこよ。伊藤さんこそ早いじゃない」

「昨日はそこそこ早めに寝たし、ファビオたちを待たせるのは悪いからさ」

文乃も挨拶を返し雑談をしていると、テレーゼが朝食の載ったお盆を片手にやってきた。

「ああ、おはようさん。タイチも起きたんだね。ほら、朝食だよ。パンとミルクのお代わりは1回までだよ」

「テレーゼさんおはようございます。美味しそうな朝食ですね。いただきます」

「ああ、良く噛んで食べるんだよ」

太一の言葉に笑顔を浮かべながらテレーゼは厨房へ戻っていく。

運ばれてきた朝食は、サラダと炒めた卵、チーズに黒パン、ミルクとリンゴが半分というメニューで中々のボリュームだ。

早速太一もミルクを一口飲み、サラダから食べ始める。


サラダを食べ終える頃には、ファビオも起きて来て太一達のテーブルに座る。

「よぉ、タイチもアヤノも早いな。昨日はちゃんと寝れたのか?」

「ああ、しっかり寝たから大丈夫だ。今日はよろしく頼む」

「眠れたなら良かった。二の鐘が鳴る前にはジャン達も来るはずだから、朝飯食ったら着替えてのんびりしててくれ」

言葉を交わすうちにファビオの朝食が運ばれてきたので、あらためて三人は雑談しながら朝食をとった。

3人ともパンとミルクをお代わりしつつ朝食を食べ終えると、太一と文乃の二人は着替えるため一旦自室に戻る。

とは言え、冒険者用の装備など持っていないので、ベティーナに選んでもらった動きやすい方の服に着替えただけだが。

着替えて戻って来た2人が再びファビオと話をしていると、30分ほどでジャン達3人がやってきた。


「やあ、おはよう。2人とも朝は弱くなさそうで良かったよ」

「うーーい、おはよーーー」

「・・・・・・」

爽やかに挨拶をしてくるジャンと比べて、女性陣二人は顔色が優れない。ナタリアに至ってはまだ半分寝ている状態だ。

2人を見て何とも言えない顔をしている太一と文乃に気付き、ジャンが説明をする。

「アンナは宿に戻ってからも飲んでてね・・・まぁ二日酔いみたいなものだから。

 ナタリアは朝はいつもこんな感じなんだ。2人とももう少ししたら調子が出てくるから心配しないで」

大丈夫かと心配になる太一と文乃だったが、そんな状態ながら装備はしっかり身に着けている二人を見て、ひとまずは大丈夫と判断する。

「さて、昨日話した通りまずは買い出しだね。2人とも予算はどれくらい?」

「武器やら防具やらの相場が分からんから、何とも言えないんだよなぁ・・・文乃さんどう思う?」

「そうね・・・金貨一枚は手元に残しておきたい所だけど・・・

 ねぇジャン、初心者向けの常設討伐依頼の報酬っていくらなの?」

「一番安全なキラーラビットが、素材買取まで含めて1匹20ディル前後、定番のゴブリンは1匹25ディルってとこだね。

 ちなみに採取系の定番は薬草採取で10束30ディルかな」

「相場はそれくらいなのね・・・ちなみにジャン達なら一人でゴブリンは倒せるのかしら?」

「そうだねぇ、3匹くらいまでなら同時に相手してもまず負けないかな。

 ナタリアは魔法がメインだから、不意打ちされると逃げる事になるかもしれないけどね。

 魔法は強力だけど、使うのには集中する必要があるからね。ちょっと不意打ちに弱いんだ」

「なるほど・・・私達も1対1なら勝てると仮定、1日1人4匹狩って100ディルだから、宿泊費を考えるとそれ位が最低ノルマでしょ。

 でも3日に1日くらいは休みたいからもう少し稼がないと駄目で・・・

 うん、伊藤さんやっぱり金貨一枚は最低限残さないと、あっという間に宿無しになりそうよ」

ジャンの話を聞いて、何やらぶつぶつと呟きながら試算していた文乃が結論を述べる。


「宿無しは嫌だなぁ。そうなると大体2500ディルくらいが予算上限かな」

「キャンプ道具は買わないし、2500あればまぁ2人分揃えられると思うよ。

 ちなみにタイチは武器は何を使う予定?アヤノは弓って話だったけど」

「少しだけ剣術をかじったことがあるから、剣かなぁ」

「剣なら種類も多いから大丈夫だね。弓もスタンダードだから大丈夫。

 珍しい武器だと種類も少ないし、値段もその分高くなっちゃうからね」

「まぁ需要の少ないものは高くなるわなぁ」

「そういうことだね。よし、じゃあまず武器を見に行こうか。防具は実際に使う武器を持った状態で合わせたほうが良いしね」

「なるほど、勉強になるな。ジャン先生、よろしくお願いします」

「はっはっは、任されたよ。さ、行こうか」

買い物の方針を決めた一行は、ジャンの案内で冒険街へと歩いていくのだが、ギルドに登録へ来た時と比べると非常に人通りが多い。


「やっぱり朝は依頼を受けに行くから人が多いのね」

「それもあるし、暗い時間の探索は危険だからね。何日もかかる依頼も、夜は帰れるなら帰って、明るくなってからまた続きをやるのが一般的だね」

人が多いことで少々歩きづらくなった通りを15分ほど歩くと、剣と斧がクロスした看板が下がった店の前でジャンが足を止める。

「さぁ着いた。ここは僕らがずっとお世話になってる武器屋、いや武器鍛冶屋かな。質と金額のバランスがいいんだ」

そう言って店の扉を開け中へ入っていく。

「らっしゃい・・・なんだジャンか」

「なんだとは随分だね、ヴィクトル。せっかく将来有望な若手のお客を二人も連れてきたのに」

奥から出てきたのは、立派なひげを蓄えた浅黒い肌の一人の男だった。


背は文乃よりもさらに頭一つ分ほど低いが、丸太のような腕をはじめ全身筋肉の塊のようだ。

「ほう、お前さんが人を連れてくるとは珍しい」

「初めまして。タイチと言います。こっちは妹のアヤノ」

「アヤノです。はじめまして」

太一は“多分ドワーフだよな”と思いながらも、違ったらややこしい話になるので聞くことはせず、大人しく挨拶をする。

「おう、ワシはヴィクトル。見てのとおりドワーフで鍛冶屋をやっとる」

ヴィクトルは低い声でそう答えると、太一に右手を差し出した。

“やっぱりドワーフだった!”と内心思いながら、差し出された手を右手で握る。

「あっ」

それを見たジャンが小さく声を漏らすと、ヴィクトルがニヤリと笑いながら右手を握り返す。

評価いただく → 作者嬉しい → 執筆速度アップ → アナタも嬉しい

まさにWin-Win!!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまで読んで自分も我慢出来なくなったのでカキコ。 妹をさん呼び、兄を苗字呼び、これ周りに人がいる時にフツーにやってるよね?どゆことなの?
[一言] 他人の前で、太一が妹なのに「文乃さん」と呼称してるのはギリOKだとしても、文乃が太一を「伊藤さん」って言ってるのは完全アウトじゃねえの?と
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