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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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◆23話◆まさかのお宝発見

「え?じゃあ着の身着のままで村を出てきたの?着替えも持たず??呆れたわねぇ・・・さすがにそれは無いわよ、タイチ。

 特に年頃の女の子に、そんな事させちゃ駄目ね」

「はっはっは。貧乏だったし、元々家は出るつもりだったから、普段の生活は出来るだけ切り詰めて、資金に充ててたんだ。

 だから、服なんてもう着られたら良いってレベルだった。

 流石にボロボロのまま街をうろつけないから、隠せるようにローブだけ用意したけど」

「それにしたってもう少しやりようはあったでしょうに・・・

 でもそのローブ、かなり上質よ?私の目は誤魔化せないわ」

「え?このローブが??」

「ええ。それ魔法の品よ?汚れ防止と簡易自動修復、あと軽度の体温調整の3つが付与されてる逸品だわ。

 新品で買ったら金貨10枚は下らないでしょうね。と言うかそもそもこのレベルは、まず市場には出回らないわね」

「えぇぇ、マジかぁ・・・村にたまに来てた魔法使いのじーさんが、餞別だって言ってくれたんだけど、そんな事一言も言ってなかったなぁ」

(やばいやばい。あのじじぃ、マッドだけど実力は相当なものだったのか。

 こりゃアクセサリー類も迂闊に人目に付かないようにしないと駄目だな・・・)


内心で冷や汗をかきながら語る太一を見て、エミリアが溜め息を吐く。

「妹さんの服だけじゃなく、アンタの服も何着か見繕ってもらいな。

 わたしみたいに見る目が無い人間の方が多いけど、世の中には目端の利く奴ってのはいくらでもいるからね。

 そんな高い物、おいそれと着て街ン中を歩くもんじゃないよ」

それを聞いたベティーナも同意して話を続ける。

「エミリアの言うとおりね。アタシほど完璧に見抜ける人間は、この街に数人程度でしょうけど、

 高価な物だと分かる人間はそこそこいるからね。似たようなローブを見繕うわ」

「大丈夫でしょ。高い服を着てたら、何か問題なのか?別に身包み剝がれるって訳じゃないんだろ?」

「「・・・・・・」」

「マジか。剥がれるのかよ・・・」

「平和な村だったのね、タイチの故郷って・・・

 流石に白昼堂々人目の多い所でやる奴はいないけど、後をつけられて人気の無くなった隙にやられる事も多いわ。

 だから普段は着ないほうが良いわね」

「分かった。ちなみにベティは何でこのローブが凄いことが分かったんだ?着てた俺でも全くわからなかったのに・・・」

さらっとベティーナの事を愛称で呼ぶ太一。

太一の事を気に入ったベティーナに、愛称で呼ぶよう強くお願いされていたのだった。

ちなみに、それを聞いたエミリアから、自分の事も呼び捨てするようにと強くお願いされる一幕があった。


愛称で呼ばれたベティーナは満足そうに頷くと、パチリと右目を瞑って答える。

「アタシにはね、ちょっと変わった神様の加護があるのよ」

「ちょっとベティーナ!その事は!!」

それを聞いたエミリアが慌てて止めに入るが、ベティーナは優しく微笑みながら二、三度頭を振って続ける。

「ありがとうエミリア。でもね、タイチには知っておいてもらいたいの。

 長年呪縛に囚われていたアタシを初めて解放してくれたタイチには・・・

 それに、こんな見た目の私を普通って言い切る男よ?これ以上何か増えてもきっと変わらないわよ」

「確かにタイチなら悪用する事も無いとは思うけど・・・」

「えぇぇ、そんな重大な事なの?聞きたくなくなってきたなぁ」

「ふふ。タイチは加護って聞いたことある?」

「物語に出てくる話くらいは。普通の人には無い特別な能力が身に付くんだっけ?

 英雄って呼ばれる人は皆、強力な加護を持っていたとか何とか」

「そう、その加護よ。持ってる人はほとんどいないけど、お伽話なんかじゃない現実の話よ。

 で、アタシはたまたまその加護を持っていたの・・・」

少し悲しげな表情で、ベティーナが自分の加護について話し始めた。


「アタシが加護に気付いたのはこの性癖のせいで家を追い出されるように飛び出した後だったんだけどね・・・

 アタシの加護はね、アラクネと言う服の神様の加護なの。

 服とかの着るものや、布・革製品、糸とかの原料なんかも含めて出来栄えや効果、価値なんかが見ただけで完璧に分かるの。

 ここにある服たちは、全てその力で目利きしたものよ」

「それはまた、とんでもない力と言うか目利きだな・・・

 絶対に騙されないし、お宝も絶対に逃さず損をしない。服屋に限らず、商売する人なら誰でも欲しがる力だ。あぁなるほど・・・。だから隠してるのか」

「タイチ、あなたは賢いわね・・・

 そうよ、私のこの力を知って近づいてくる人が沢山いたわ。

 当時の私は、性癖のせいで極端に友人が少なくてね・・・力のためだけに寄ってくる人間と分かっていても無下には出来なかった。

 一度大きな犯罪紛いの事件に巻き込まれそうになってね。それでやっとその危うさに気が付いて、慌てて住んでた街を出たの。

 そして辿り着いたこの街で、今度は誰にも言わずにひっそりと商売を始めて今に至るのよ。

 幸いこの街で友達になれたエミリアやラルフはとても良い人だったから、この力を知っても今まで通り付き合ってくれてるの」

「分かった。この話は墓場まで持ってくし、悪用もしないと誓う。

 あーー、今度妹を連れてくるから、会って大丈夫だとベティが判断したら話しても良いかい?

 理由を言わずにローブがやばいって言うのもおかしな話だからさ」

「ええ、もちろんよ。でもタイチの妹だもの、きっと素敵な子に違いないから、会うのが楽しみよ」

「ああ、俺が言うのもなんだけど、俺なんかよりよっぽど賢くて良い奴だからさ、きっと気に入るはずさ。そうだ、一つ気になったんだけど聞いても良いか?」

「どんな事?分かる事なら何でも教えるわよ?」

「加護ってのは突然目覚めるものなのか?

 家を出てから気付いたって言ってたけど、見ただけで価値が分かるような能力だったら、持ってたらすぐに気付きそうなもんだなと思ってさ」

「ああ、そのことね。

 加護は基本的には持って生まれるものだと言われてるわね。

 ただ、持っているだけではその力は正しく使うことは出来ないの。だから、加護を持ってることに自分で気づくことは、あまり多くは無いらしいわ」

「なるほど。そうなると、どこかで調べるのか?いやそれだと、他の人にバレるか・・・」

「調べる、というのは合ってるわね。加護を調べる方法は大きく3種類あるの。

 一つ目は加護を調べる魔法具を使うこと。

 二つ目は教会で神託を受けること。

 そして三つ目は、冒険者ギルドに登録することよ」

指を1本ずつ立てながら、ベティーナは加護の調べ方についての説明を始めた。

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