◆173話◆戦闘糧食(レーション)
やばい、料理回書くのが楽しすぎる。。。w
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異世界は猫と共に ~システムエンジニアは失われた古代の魔法理論を解析し、魔法具界に革命を起こす
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戦場で温かく美味しいものが食べられるだけで、士気は全然変わってくる。
騎士団などは輜重部隊もいるし、食事を提供する人員もいるだろうが、どうしてもメニューは限られる。
こちらに召喚されて約四ヶ月、毎日食事をしてきて気付くのは調理方法の少なさだ。
魔物という優秀な食材のお陰で、食材自体の質は思ったより高い。
ただ冷蔵技術が発達していないので、流石に魚のように採取地が限られる物や地域差の大きい果物などは流通しないが、肉に関しては地球より質が良いくらいだ。
しかし、調理方法は基本的に焼くか煮るかで、調味料も塩がメインでバターやチーズなどの乳製品と香草類がアクセントになる程度で、代わり映えがしない。
決して不味くは無いのだが、どうしても飽きが来る。
軍の遠征食ともなれば、それはさらに際立つものとなるだろう。
特に、保存食のレパートリーが絶望的に少ないのは致命傷だ。
そこにレーションとして、エポックメイキングなものを導入できないかと考えているのだ。
何もインスタントラーメンに限る必要は無い。
ラーメンを最初に作ったのは、単に太一がスパゲティよりラーメンを食べたかったからに過ぎない。
麺料理が美味しいと分かれば、ラーメンより作るのが簡単な乾麺のスパゲティなども向いているだろう。
魔法で水が出せるので、そこまで水に対してシビアにならなくて良いのもありがたい。
「そこでまずは、このラーメンを始めとした麺料理を普及させたいと思ってます。
ラーメンは作るのに手間が掛かるので、限られたお店になると思いますが、もう一つ考えているスパゲティであれば、かん水も不要なのでそこまで手間は掛かりません。
スパゲティについては、この後レシピを皆さんに提供しますので、それぞれのポジションで広めてもらえればと思います」
「おいおいあんちゃん、レシピを教えちまっていいのか?
新しくて旨い料理のレシピなんざ、料理人の宝だろうがよ」
太一の言葉に驚いたのは、料理人であるドミニクだ。
料理のレパートリーも娯楽も少ないこの世界では、新しく美味しい料理を一つ作るだけで一気に話題となり大金を手に出来る可能性が非常に高い。
貴族達も、招待客へ提供する食事の内容には常に神経を尖らせている。
レシピを公開するということは、それを放棄するということなので、料理人のドミニクからしたら信じられないのだ。
「誰にでも教える訳じゃないですし、皆さんから誰かにレシピを教えるのは、流石に禁止させてもらいます。
ただ私は料理人じゃあ無いので、秘匿しても仕方が無いんですよね・・・
美味しいものはやっぱり本職の料理人の方に作ってもらった方が良いですから」
「・・・・・・。上手いこと言っておるがそれだけでは無かろう?」
何かに気付いたのか、ツェツェーリエがジト目で太一を見ながら問い質す。
「あははー、バレましたか??
今言ったことも嘘じゃないですけど、私は材料を売ることで儲けようと思ってるんですよ。
皆さんには、料理がある程度話題になったタイミングで、“ケットシーの鞄で麺が買える”という情報を流して欲しいんです。
それまでに量産体制を作っておくつもりです」
「やはりの。そんなことじゃろうと思っておったわ」
少々呆れ顔のツェツェーリエ。
「私も商売人ですから。完全にタダではばら撒きませんよ」
はっはっはーと笑いながら太一が当然とばかりに言い放った。
こうして、まずはパスタのレシピを伝え、各方面でそれを普及していくこととなった。
ドミニクは通常の料理屋として、エミリアは屋台料理として、ツェツェーリエ達はギルドの食堂で、それぞれ商品として展開する。
ピアジオは騎士団へ持ち帰ってもらい騎士団の食堂での提供を後押ししてもらい、フィオレンティーナには辺境伯家を起点に貴族界への浸透をしてもらう。
そしてワイアットやシモンにも、顧客や知り合いの貴族や大店の店主等に噂を流して貰う予定だ。いわゆる“口コミマーケティング”である。
看板馬車以外に広告媒体の無いレンベックにおいては、流行を決めるのはやはり口コミが主流だ。
通常は平民か貴族のどちらかで流行ったものが、少し遅れてそれ以外へ伝播するのだが、今回は全レイヤーで同時展開することで、流行るまでの期間を短縮する。
そしてラーメン試食会から10日。
レンベックの話題は、目下スパゲティ一色になっていた。
冒険者ギルドに併設されている食堂では、ラーメン試食会の翌日から早速スパゲティの提供が開始された。
初日はシンプルに、ニンニクのような香味野菜と葉野菜、それにキラーラビットの肉を細かくしたものを合わせたオイルパスタだった。
お試し価格で限定30食を提供した所たちまち完売。
運良く食べることが出来た冒険者が口々に美味いと言ったため、食べられなかった冒険者が暴動を起こす寸前だった。
幸い、売れ行きを見ていたツェツェーリエとヨナーシェスの“教育”により、騒ぎは一瞬で鎮静化したが、翌日よりスパゲティは100食を提供することが決まった。
それ以上は、生パスタの生産が追い付かないため提供数は増やせず、すぐに幻のメニューと言われるようになってしまった。
黒猫のスプーン亭でも、翌日の夜よりスパゲティの提供が始まった。
こちらは、ドミニクが元々煮込み料理が得意だったこともあり、ボア肉とトマトのような野菜を煮込んだボロネーゼ風のメニューだった。
半分以上が常連客なため、初日はまず彼らに振舞われたのだが、舌の肥えた常連も大絶賛だったようだ。
そしてギルドの食堂と同じく、翌日よりレギュラーメニュー化することとなる。
常連客の知り合いへの口コミと、ワイアットやシモンから噂を聞いた大商人のお抱え料理人が試食に来たりしてジワジワと売り上げを伸ばしているそうだ。
王城の騎士団の食堂でも、一気に大量に作れるスープ系のスパゲティが作られた。
栄養価も考えて、いわゆるクリームスープスパのような一品で、嵩増しに芋も入れられている。
騎士団に入るような者は、ほとんどが貴族家の出身で皆舌が肥えている。
騎士団に入ったことで、実家にいた頃と比べると質素な料理を食べることになるし、別にそれに不満を漏らす者はいないのだが、元々美味しい物好きなのだ。
やはりここでもスパゲティはたちまち人気となり、一日置きに提供されることがすぐに決まった。
貴族家については、ダレッキオ家が所属している西方派閥へレシピが伝えられた。
直接秘伝のレシピを教えてもらったダレッキオ家以外は、流石に初日に食卓に上るようなことは無く、一週間ほど料理人が試行錯誤をしてメニューを開発したようだ。
流石はプロの料理人の中でも一流の者ばかりなので、その家独自の様々なバリエーションが開発される。
領地を持つ当主は、その美味しさに目を付け、例外なく領地の特産品を使ったメニュー開発を命令したとのことだ。
そしてエミリアの屋台では・・・
「はーい、焼きスパのボアのせ2人前お待ちどうさん!
こっちの兄さんはラビットのせだったね!!
ベティ!あと何食ある?」
「ん~~?今焼いてる分が10で残りも10だから。合わせて20よ!」
「ありがとっ!ラルフ!!残り20だから、並んでるお客さんに確認してきて頂戴!!」
「分かったよ!ったく、何で俺が客を捌いてるんだ??」
「アンタんとこのエールとワインも一緒に売れてんだから、お互い様よっ!!」
ベティーナとラルフを巻き込んで大忙しだった。
元が串焼きをメインで売っていたので、普通のスパゲティだと相性が良くない。
考えたエミリアは、ナポリタンのような炒めたスパゲティを作り、その上に串焼きを乗せて売ることを思いついた。
トマトっぽい野菜のピューレと、スパイシーな香辛料を絡めた焼きそばのような焼きスパは、腹持ちも良く肉との相性も良いため、人気を博する。
3日目には調理が追い付かなくなり、ベティーナへ昼時と夕方に救援を依頼、提供数が増えると今度は客数も増えていった。
すぐ隣でエールやワインを売っていたラルフの店も、並んでいる人や料理を買った人が買うため大幅に売り上げ増。
「いやぁ、おかげさまでウハウハだぜ」
とか言いながらニヤついていたラルフに行列の整理を押し付けて今に至っていた。
こうして、一気に複数のスパゲティが各所で売り出され話題となったことで、レンベックに空前の麺類ブームが訪れるのだった。
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