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◆172話◆大反響

書いててもの凄くラーメンが食べたくなるセルフ飯テロが続く。。。


新規連載も始めました!(本作の連載も続けます!!)

↓よろしければ、こちらもお読みください↓

異世界は猫と共に ~システムエンジニアは失われた古代の魔法理論を解析し、魔法具界に革命を起こす

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「「「!!!」」」

ほぼ同時に麺を食べた3人は、これまたほぼ同じタイミングで目を見開き絶句する。

最初はゆっくりと咀嚼しようとしていたものの、たまらずすぐ飲み込み二口目を掬う。


そこからは怒涛の勢いだった。

スープが飛びはねるのもお構いなしに、ひたすらに麺を掬っては口へ。

二口程麺を食べたらスプーンに持ち替え、今度はスープを飲む。

汗も拭かず、会話もせず、目の前のラーメンに集中力の全てを注ぎ込む。


呆気にとられてそれを見ていた面々の前にも、続々とラーメンが到着する。

普段から美味しいものを食べているに違いない貴族が、ここまで夢中になるラーメンとは如何ほどの料理なのか。

興味津々でスープを一口飲むと、やはり皆一瞬驚愕の表情を見せて動きが止まり、そこからはひたすらに食べる作業に没頭していくのだった。


「うっめぇぇぇっ!!!リーダー、何だよこれ?

 スープもこの麺とか言う奴も、乗ってる肉も全部うめぇ。どうなってんだ!?」

最初に興奮気味に声を出せたのはワルターだった。

他の面々も、手こそ止めないが全員が麺を頬張りながらウンウンと激しく同意している。

「何って・・・ラーメンだよ」

あまりにも中身のないストレートな質問に、苦笑しながら太一が答える。

「んなこたぁ分かってるよ!!

 何をどうやったらこんなうめぇもんが出来るんだ!?なんかヤバイもんでも入ってんじゃねぇだろうな!??」

太一のストレートすぎる回答に、今度はワルターが突っかかる。


「ああ、それは俺も聞きてぇな。

 まずスープだ。どことなくボアの風味がするからボアは使ってると思うが、他が分からねぇ・・・。

 どうやったら臭みも無ぇのにここまで美味いスープになる?

 それとこの麺ってヤツだ。

 俺も麦の粉でパスタを作ることはあるがよ、ただ細くしただけでこんな食感にはならねぇはずだ」

ワルターの発言を引き継ぐ形で、今度はドミニクが口を開いた。

流石に街でも評判の料理人だけあって、内容はワルターとは比べるべくもない。


「企業ヒミツ、と言いたい所ですが、今日集まっていただいた皆さんには、今後もちょっとお手伝いをお願いしたいので、特別に・・・」

ウィンクして人差し指を立てて口元に当てながら太一が続ける。

「まずスープですが・・・ワルターさん、使ってるのはこの前狩ってきて貰ったヤツだよ?」

「あん?狩ってきたヤツって言うと、ワイルドボアとシャープフェザントか??」

「そうそう。他にも野菜とかも少し入れてるけど、メインの旨味はその2つからだ」

「あんちゃん、そりゃ本当かっ!?

 確かにさっき言った通りボアの風味はするし、フェザントの肉は旨味が強ぇんだが・・・」

単純明快な素材に、ドミニクが驚く。

「そうだねぇ。アタシも、ボアもフェザントも串焼きで余ったのをスープにしたりするけど、こんな味になると思えないよ」

串焼き屋として毎日のように肉を扱っているエミリアも首を傾げる。


「確かにその通り。肉だけではこの味にはならないと思う」

「肉以外に何を使ってんだ??」

「骨です。下処理をした骨を長時間煮込んで出汁を取ってるんですよ」

「「「「「「「「骨っ!?」」」」」」」

ほぼ全員の声が重なる。

それを見て苦笑しながら太一が続ける。


「あははは、ええ骨です。

 単に煮込んだだけだと臭みが出たりするけど、ちゃんと手順を踏んで丁寧に煮込めば、素人でもこれくらいのスープは作れるんですよ」

「マジかよ・・・。骨でこんな美味ぇもんが作れんのか・・・」

「何の骨でも良い、という訳では無いと思うけど、色んな骨で試すのも良いと思いますよ、ドミニクさん。

 スープなので、別にラーメンだけじゃ無く色んな料理にも使えますし、後で手順を教えますね」

「いやいや、そりゃありがてぇがよ・・・

 教えちまって良いのか?ツェツェーリエ様達ですら美味ぇと言う代物だぞ?

 こう言っちゃなんだが、隠せば大儲けできるんじゃねぇか??」

「確かにそうかもしれませんが、私は料理人じゃ無いので・・・

 食べたい時にドミニクさんとこで食べられればそれで良いんですよね。

 自分で作るのも手間が掛かりすぎるんで・・・。

 それと、さっきも言った通り今後手伝って貰いたいことがあるので、手間賃の先払いとでも思ってください」

「あんちゃんがそれで良いなら良いんだがよ・・・」

「さっきも手伝いと言うておったが、何をするつもりなんじゃ?」

今度は、スープまで全て飲み干したツェツェーリエが問い掛ける。


「ちょっと待ってくださいね。先に麺の作り方をお話ししますので。

 ドミニクさんの言う通り、小麦粉を塩と水で練っただけでは、絶対こういう感じにはならないです。

 この黄色っぽい色ともちもちツルツルした食感を生み出すには、“かんすい”と言うものを混ぜてます。

 かんすいにも色んな作り方があるはずですが、私が知ってるのは綺麗に燃やした木の灰を熱湯につけて一晩寝かせて、その上澄みを使うやり方です」

「灰・・・そんなもんまで使っておったのか。そりゃ誰も食べたことが無い訳じゃ」

苦笑しながらツェツェーリエが呟く。

「あはは、他のやり方を知ってればよかったんですが、生憎と知らないので・・・。

 ちなみにこの上澄みは、他にも使い道があるんで、それは又後日にでも」

そこまで話してから一拍おいて、あらためて太一が話し始める。


「で、今後の話というのは、これを元に保存食を作りたいんです」

「保存食じゃと?」

「はい。冒険者はもちろんですけど、遠征することの多い騎士や兵士の人にも売れるはずです。

 今ある保存食って、味を度外視しているものばかりなので・・・」

「そりゃこの味の非常食が出来りゃ売れるわなぁ」

冒険者を代表してワルターが即答する。他のメンバーもウンウンと頷く。

「なるほどの・・・」

「騎士や兵にも、ですか・・・」

皇国の事情を知っているツェツェーリエとピアジオは納得しつつ、騎士や兵と聞いてピクリと反応する。


太一が最終的に作ろうと思っているのは、ラーメンはラーメンでもインスタントラーメンだった。

おそらく始まるであろう皇国との戦争は、この後寒くなってから開戦する可能性が高い。

そこに、お湯を入れるだけで食べられる、いわゆるチキンラーメンタイプのものを作って提供しようと言うのだ。

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