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【書籍化決定】万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る【第六回一二三書房WEB小説大賞 大賞受賞!】  作者: ぱげ
13章:業務拡大編

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171/173

◆171話◆異世界風ダブルスープ塩ラーメンver1.01試食会、始まる

2話続けて飯テロ回

 太一は、椅子を持って来てそのまま厨房で試食を開始する。

 まずはスープを一口飲んでみる。

 

「うん。初めてにしては上出来だな。醤油とか味醂とかが無いから、中華そばっぽいテイストは出せないけど、ちゃんとラーメンだ。と言うか、これダシだけだったら地球のより美味いんじゃないか……? ちょっと別々に飲んでみるか……」

 予想外のダシの美味しさに驚きながら、ポテンシャルを確認するため混ぜ合わせる前のスープに塩だれを合わせて味見してみる。

 

「うおっ!? キジ出汁すごいな……。日本でも雉のダシは美味いって何かで読んだことあるけど、これは多分そんなレベルじゃないな」

 シャープフェザントのガラスープの美味しさに目を剥く太一。


 上品で嫌な癖が無いのに、しっかりと旨味が抽出されたスープは、鶏ガラスープの名店と言われる店のスープよりも美味しいかもしれない。

 一緒に滲みだしている油も、しつこくないのに香りが強い。


「醤油が無いのが本当に悔やまれるなぁ……。まぁ塩でも十分以上に美味いから良いんだけど……。さて、お次はボア出汁だ」

 続いて、やや白濁したボアスープにも塩だれを混ぜてすすってみる。

 

「これも美味いな……。独特の風味はあるけど、タレを入れれば全然気にならないな。むしろそれが良いアクセントになってる。豚骨っぽいのに豚骨じゃあないこの風味は癖になる味だ……」

 ワイルドボアの方も、相当レベルが高い。

 嫌な臭みは気にならず、強い旨味とほのかなクリーミーさが絶妙だ。


「さっきのフェザント出汁もそうだったけど、これ、他の料理にも使えるんじゃないか?? ……っといかん、試食の途中だった。伸びる前に食べないと!」

 あまりの出汁の美味しさに考えが飛んでいたが、試食の途中だったことを思い出し、慌ててラーメンをすすり始めた。


 

「はぁぁ~~~~、美味かった……。まさか異世界で、今まで食べた中で一番美味いラーメンが食べられるとはなぁ……。しかも素人が打った似非中華麺でこの味なんだから、ちゃんとした麺だったらとんでもないことになるな」

 あまりの美味しさに、ものの数分で食べ終えた太一が、満足そうに考察する。


「でも、これで一安心だ。マズイってことは絶対無いから、これでウケなかったら単純に好みが合わないだけだと言えるわな。今夜の試食会が楽しみだ」

 そして試食を終えた太一は、夜の試食会までスープに更なる微調整を加えるのだった。



「皆さん、今日はお忙しい中試食会にご参加いただきありがとうございます!」

 その日の夕方過ぎ。

 業務時間を終了した太一の商館2階の会議室に、10数人の関係者が集まっていた。


 集まっているのは、商会の主要メンバーであり、冒険者試食枠でもあるワルター、レイア、モルガン、タバサ。

 一般市民枠のエミリア、ラルフ、ベティーナに、上流市民枠のワイアット、シモン。


 料理人枠のドミニク、お子様枠のリーゼ、貴族枠でフィオレンティーナ、ピアジオ、そしてどこからか話を聞きつけてやって来たツェツェーリエだ。

 なお、文乃は事前に試食を済ませており、太一と一緒に配膳側に回っている。

 

 顔見知り同士も多いが、ここ最近の事件には関わっていないエミリアやラルフ、ドミニクらは、緊張した面持ちだ。

 当主では無いもののバリバリの上級貴族であるフィオレンティーナやピアジオ、まさかの有名人ツェツェーリエまでいるのだから無理も無い。


「おいおいタイチ、とんでもない所に呼ぶんじゃねぇよ……。あんたの故郷の食い物作ったから軽く試食してくれ、っつうから来たのに、すげぇ人がいるじゃねえか……。こんなんじゃ味なんて分かんねぇよ」


 挨拶を終えた太一を捕まえて、ラルフがひそひそと文句を言っている。

 隣ではエミリアもコクコクと何度も頷いている。


「もう、ここまで来てジタバタしないの。ありがとね、タイチ。楽しみにしてるわ!」

 一方のベティーナは落ち着いたものだ。加護持ちだからなのか、ツェツェーリエとも顔見知りのようで普通に会話をしていた。

 

「さて、では早速試食の方を始めますね。今回試食していただくのは“ラーメン”と言う私と文乃さんの故郷の食べ物です。むしろソウルフードと言っても良いかもしれないですね。まぁ、どうしても私が食べたくなったのが発端ではありますが……。ちょっと今後ラーメンを使った新しい試みを考えているので、まずは皆さんの口に合うのかを確かめたいと思ってお声掛けした次第です。難しい事は考えず、食べて色々意見を聞かせてください」


 軽く趣旨を説明すると、太一は準備のため3階の厨房へと上がっていく。

 厨房には、麺を茹でるためのお湯を沸かしたり、スープを温めるなど準備している文乃がいた。


「こっちは準備出来てるわよ」

「よし、じゃあ始めますか」

 そう言って太一は、お湯の中に手打ち麺を次々と投入し始めた。

 

 メニューが1つしか無いので、ものの5分で第一陣のラーメンが出来上がる。

 さすがに14人分を同時に作ることは出来ないので、3~4人前ずつ作っては運ぶのを繰り返す。


「スープの中に、細長いパスタ――“麺”と言いますが、それが入っているので、スープを搦めて食べてください! 時間が経つと麺が柔らかくなって美味しくなくなるので、お持ちした方からすぐ食べちゃってください。追加もすぐ持ってきますので!」

 簡単に説明をしながら、順番に配膳していく。


 本人は気にもしないだろうが、まずはツェツェーリエとピアジオ、フィオレンティーナの貴族組に着丼した。

 

「ふむ。見た目はパスタの入った具の多いスープ、じゃな。嗅いだことの無い匂いじゃが……、何やら食欲をそそる匂いじゃの」

「お兄様、この上に乗っているのは何のお肉でしょうか?」

「ぱっと見、ボアっぽい気がするね。さぁ、時間が経つと美味しくなくなる、ということだし、さっそく頂こうか」


 三者三様に観察しながらも、まずは一口、とスープを掬って口へと運ぶ。

 流石に貴族だけあり、皆綺麗な所作だ。ここだけを切り取って見ると、とてもラーメンを食べているとは思えない奇妙な絵面である。


「む?」

「これは……!?」

「ほぅ」

 スープを一口飲んだ三人が、全員目を見開いて一瞬止まる。

 そして二杯、三杯と無言で飲み進める。

 

「美味いな……」

 ボソリとツェツェーリエが零す。


「ええ、このスープは絶品ですね」

「飲んだことの無い味だが、ずっと飲んでいたくなる味だ」

 フィオレンティーナとピアジオも完全に同意しているようだ。


「ではこの麺、じゃったか? を頂くとしようかの」

 フォークを手に取ったツェツェーリエが、麺を絡めるように掬い取る。


 地球では、日本以外に麺を啜るという文化はほとんど無い。

 そもそも音を立てて食べることは行儀が悪いことである、という考えが根強い国が多いためだ。

 それもあってか、最初は美味く麺をすすれない外国人も多いと言う。

 

 ここエリシウムでも、食事のマナーについては地球に似ている。

 平民はそこまでマナーを気にすることは無いが、貴族ともなるとやはり音を立てて食べるのはマナー違反だ。


 なので、太一はフォークを用意した上で「麺はフォークに絡めて掬うか、巻き取るようにして食べてください」 と事前に説明していた。スパゲティと同じ要領である。

 また、食べやすいように麺の長さもやや短めに仕上げてある。

 

 食べたことの無い細長い麺に少々戸惑いながらも問題無く麺を絡めとった三人が、またもほぼ同時に麺を口にした。



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