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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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◆165話◆戦争の兆候

新規連載も始めました!(本作の更新も続けます!)

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異世界は猫と共に ~システムエンジニアは失われた古代の魔法理論を解析し、魔法具界に革命を起こす

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戦争をするには、戦うための兵力が必要なのは当たり前だ。

「戦争に必要なもの」と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのもまずは兵力だろう。

しかし戦争は兵士だけでは行えない。

手ぶらで戦場へ向かっても殺されるだけなので、武器や防具での武装が必要になる。

兵士が長期間戦うためには、食料や水はもちろん、寝泊まりするためのテントや毛布も必要だ。

そもそも戦場まで移動しなければならないので、その移動手段も必要になるだろう。


また、兵士は多くの場合働き盛りの男性が主となるだろう。

必要な兵力を職業軍人だけで賄えれば良いが、中々そうは行かないのが実情だ。

そうなると、働き手を奪われた家族に対する生活の保障もある程度必要になる。

他にも負傷した兵士に対する治療のための薬品類や、魔法具を使うための魔石なども必須だろう。

「戦争には金が掛かる」と言われるが、とにかく戦争をするには「モノ」が大量に必要だ。

こうした、戦争に必要となるものや戦時の経済維持にとって重要な「モノ」のことを戦略物資と呼ぶ。


「戦争が起きる前には、当たり前だけどこうした戦略物資の需要が一気に増えるんだ。

 開戦してから集めてたんじゃ遅いから、どうしたってある程度前から時間を掛けて集める必要があるからね。

 一つ二つだったら偶然でも、軒並み需要も値段も上がってるんじゃあ必然だ」

「確かに仰る通りですね・・・

 そう考えると、すでに集め始めてある程度時間も経ってますから、近々戦争が起きるというのも的を射ていますね」

太一と文乃の説明を聞いたフィオレンティーナの表情が曇る。

皇国との戦端が開かれた場合、真っ先に戦場となるのは彼女の領地なのだから無理も無い。


「だから、まずはロマーノ様にこの情報をすぐに上げようと思う。

 とは言え、すでに領地に戻られてるから、ひとまずは宰相閣下に上げてからだけどな」

「ありがとうございます。

 何か私にもお手伝いできることはありませんか?

 せっかく災害から守ったというのに、戦争で被害が出てしまったら何のために守ったのか分からなくなります・・・」

悲痛な面持ちでフィオレンティーナが太一へ訴える。


「ふふっ、そう言ってくれると思ったよ。フィオは文乃さんと一緒に動いてくれ。

 大きくお願いしたい事は2つだ。

 一つは物資集めだ。戦争が現実のものとなった以上、こっちも物資が無いと話にならない。

 戦端から遠い東と北側を中心に物資を集めて欲しい。

 あ、まだ戦争が近いことを知られるのは拙いから、あまり一か所から派手に買わないように気を付けてくれ」

「分かったわ。

 西方の商会はどうする?それとなく注意を促しておいた方が良いかしら?」

「そうだね・・・

 今年は冬が厳しそうだから、少し多めに食料と木材を集めておいた方が良いかも、くらいの情報を流すか。

 例の災害騒ぎの時にでっち上げた、天候予想の魔法具の情報とか言っとけば良いでしょ」

「了解よ」


「で、もう一つは情報収集だ。

 それも、向こうの冒険者ギルドの情報が欲しい。ツェツェーリエさんとヨナーシェスさんには全て事情を話して巻き込もう」

「それが良いわね」

「通常依頼を受ける冒険者の数が減ってる、って話はいただけないからな。

 戦争が始まれば、向こうの冒険者が戦場に出てくるのは当たり前だけど、何もそれだけじゃあない・・・。

 多分向こうの冒険者ギルドには、今頃ろくでもない依頼が出てるに決まってる」

「ろくでもない依頼、ですか?」

少し不思議そうにフィオレンティーナが太一に聞き返す。


「ああ。王国の冒険者たちは、冒険者ギルド発祥の地というプライドがある。

 だからか、こなす依頼も出てくる依頼も、良くも悪くもほとんどが真っ当な依頼だ。

 だけど皇国の冒険者もギルドも為政者も、そんなの知ったことじゃないだろうね。

 こちらの戦力を下げるためだったら、余程のことじゃない限り何でもやってくるだろう。

 例えば、こちらへの潜入工作だったり、村や商隊を襲って物資を奪ったり、とかね・・・」

「そんな・・・」

太一の説明に目を見開くフィオレンティーナ。


「まぁ冒険者ギルドはどの国からも独立した組織、ってのが建前だから、あからさまな依頼にはなっていないと思うけど・・・

 表向き商隊の護衛とかこっちにある森の調査、とか言われたら止めようが無いし、いくらでも言い訳できるでしょ。

 逆にギルマス経由での質問には答えなくちゃいけないから、表向きの依頼の情報は集められる。

 そこからでも色々な情報が収集できるし、こっちも“依頼”は出せるからねぇ」

そう言いながらニヤリと太一が笑う。

「はぁ、また悪いこと考えてるでしょ?」

それを見て文乃が溜め息を吐く。

「いやいや、あくまで真っ当な“依頼”だよ。

 まぁそんな訳で、文乃さんもフィオも、そっちは任せた。

 俺はこのまますぐ宰相の所へ行ってくる。さっき先触れは出しといたから、そろそろ戻ってくるはず」

「分かったわ」

「分かりました」

こうして皇国の動きをキャッチした太一達は、近づく開戦に向けた準備に奔走することになるのだった。


戻ってきた先触れから、午後一で時間が取れる旨の返答を貰った太一は、早速宰相であるユリウスを訪ねていた。

「すみません、突然お時間をいただいて・・・」

「なに、問題ありませんよ。

 それに内容が内容ですからね・・・。逆に会わなかったら私は逆賊ですよ」

太一の謝罪にユリウスが苦笑してそう答える。

「ざっくりと皇国にある不穏な動きについて、と伺っていますが、具体的にはどのようなお話でしょうか?」

「まだ裏が取れている訳ではありませんが・・・」

そう前置きして太一は一連の情報と、そこから導き出された予測についてユリウスに話していった。


「むぅ・・・、なるほど・・・。

 信じたくない話ではありますが、否定する材料が何一つ無いのが事実だと告げているようなものですね・・・」

太一の話を聞いたユリウスが、両のこめかみを押さえながら渋い顔をする。

「はい。私も信じたくはないですが、だからと言って何もしないと言うのも憚られます・・・」

「そうですね・・・

 情報統制はした上で、対策するしかありませんが・・・。

 ふふふ、数が多いので順番に行きますかね・・・」

ユリウスの言う通り、対策しなければならないことは多い。

皇国の物資購入の動きに対してどう対策するか、こちらの戦略物資調達はどうするのか、継続的な情報収集方法はあるのか、対冒険者の対策などなど。

しかもそれに加えて、実際の戦争準備として戦略や戦術といった実戦に対する準備も必要になるし、内通者への対策もせねばならない。


それを受け、その日のうちに国王を加えた極限られたメンバーによる、対皇国戦略チームが発足する。

当然のように太一もそのメンバーに加わることになった。

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― 新着の感想 ―
落合信彦の小説で 「三人が知ったら、もう情報は漏れたものと思え」 とありました。 女房に口を滑らせるかもしれないし、上司から受けた指示から違和感を感じ取る者がいるかもしれない。
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