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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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◆147話◆ハイデン村にて

「お久しぶりです、アヤノお姉様!またお会いできて嬉しいです!!」

「うふふ、久しぶりね、クリスタ。元気にしてた?」

文乃の手を握り嬉しそうに挨拶するクリスタ。

もしクリスタに尻尾があったなら、はち切れんばかりに振られていたことだろう。

「今日はどうされたのですか?タイチお兄様は見当たりませんが・・・?」

少し落ち着いたクリスタが、回りを見渡しながら問い掛ける。

「ちょっと以前あったコボルトの件を詳しく調査したくてね。

 村長に一声掛けようと思って寄ってみたのよ。

 兄さんは別件で手が離せないけど、代わりに優秀な仲間と一緒よ?」

「そうだったんですね!

 そちらがお仲間の皆さんですか?」

「そうよ。運河の星ステラカナルというパーティーで、全員C級の凄腕よ?」

「まぁっ!!それは素晴らしいですわ!」

冒険者、それも実力のある女性冒険者に強い憧れを抱くクリスタは、文乃の後ろで興味深そうに様子を見ている2人の女性がC級と知って目を輝かす。

ステラカナルは、アンナだけでなくファビオもC級への昇格を果たしており、これでメンバー全員がC級となっていた。

ちなみに、太一と文乃も一連の件でD級への昇格を果たしている。


ステラカナルの面々とクリスタが互いに挨拶を交わしていると、館からニコラスが戻ってきた。

「お嬢様、御屋形様より挨拶が終わったら皆様をお屋敷へ案内するようにとのことです」

それを聞いたクリスタは、ハッとした表情をしてから慌てて頭を下げる。

「す、すみません皆さま。こんな所で長時間立ち話をしていまい・・・。

 ご案内しますので、馬車にて奥までお進みください」


一行が再び馬車に乗りこんでいる間に、クリスタも館の玄関へと戻る。

馬車停めで馬車から降りると、村長のハインツが出迎えてくれた。

「久しぶりだな、アヤノ。以前は世話になった。その後の活躍も聞いているぞ?大活躍ではないか」

「ご無沙汰しています、ハインツさん。

 兄が色々と巻き込まれやすい体質のようで・・・お陰様で暇だけはしていませんね」

笑顔で迎えてくれるハインツに、文乃が苦笑いしながら答える。

「なに、2人なら問題なかろう?

 そちらの方々がステラカナルの方々だな。お初にお目に掛かる。

 ハイデンの村長をやっているハインツだ。文乃の知り合いとあらば大歓迎だ」

「お初にお目に掛かります、ハインツ様。ステラカナルのリーダーのジャンです。

 こちらはメンバーの、ファビオ、アンナ、ナタリアです。以後お見知りおきを」

ステラカナルはジャンが代表して挨拶をし、簡単にメンバー紹介を行う。

C級パーティーともなれば、この辺りは慣れたものだ。

「立ち話も何だ、入ってくれたまえ」

一行は、ハインツに促され屋敷の応接室へと入っていった。


「して、先日のコボルト大量発生の原因調査、ということだが?」

応接室でお茶を飲み、ひと段落したところでハインツが切り出す。

「はい。

 同時多発的にコボルトやゴブリンが大量に現れたのは、偶然では無く何か原因があるはずだ、というのがギルドの見解でして。

 また同じようなことが起こると大変なので、状況が落ち着いている今の内に調査を進めることになったんです。

 余り間を開けると、痕跡やヒントが無くなってしまうかもしれませんし」

国王暗殺未遂事件との因果関係を探っている、と正直に言う訳にもいかないので、用意されたカバーストーリーを話す文乃。

「なるほど。

 確かに討伐してもらった後は、収穫やらが忙しくて何も調査しておらぬからな・・・」

「はい。魔物絡みだったら、村の方が調査するのは危険ですし。

 聞き込みをさせて貰いつつ、周辺を調査するので、念のためご一報入れさせてもらった次第です」

「わざわざすまんな。よろしく頼む。

 ああ、そうだ。案内にゼップを付けよう。前回も一緒だったし、話が早かろう」

「それは助かります。

 土地勘がある訳でも無いですし、大分効率が違いますからね」

「なに、アヤノたちには世話になったからな。手伝えることがあったら言ってくれ」

「ありがとうございます」

「では、ゼップを呼びに行かせるから、もう少し待っていてくれ」

こうして案内役を手に入れることが出来た文乃達一行は、本格的な調査を開始した。


「さて、どこから手を付けようかしらね・・・

 ねぇゼップさん、コボルトたちって普段どっちの方から来てたか分かる?」

「うーーん、追い掛けてったりしたことねぇからなぁ・・・

 去年までだと、やっぱ溜池んとこで見ることが多かったな。

 逆に薪割場の辺りで見かけることはほとんど無かったはずだ。

 薪用の木を切りだすのに林に入ることは良くあるけど、林の中でも見たことはねぇな」

「そうなると、薪を取る林に居ついてるってことは無さそうね。麦畑の方はどう?」

「収穫時期前後にはちょいちょい見掛けるな。

 つっても、広い麦畑で万遍無く見るから、うろついてるだけなんじゃねぇかな」

「収穫時期だけって話だし、流れてくる方じゃ無くて、流れ着く先って感じかしら?

 となれば、まずは溜池周りから洗うのが良さそうね」

一先ず溜池にアタリをつけて、調査を開始する。

確かに以前討伐した時も、最も数が多かったのが溜池周りだったので、妥当な判断だろう。


「どう?アンナ。何か痕跡とか不自然な所は無いかしら?」

「んーー、今の所見当たらないかな」

溜池へと辿り着いた一行は、文乃、アンナ、ゼップのチームとジャン、ファビオ、ナタリアのチームに分かれて調査をしていた。

溜池の手前から、それぞれ右回りと左回りで半周して、向こう側で落ち合う算段だ。

「こっち側は池の周り以外にそんなに木も生えてないしねー。

 獣道と言うか魔物が通ってる道のようなものも無いし、溜池の奥側の方が可能性は高そう」

「ありがとう。じゃあ、軽めに探索しながら奥へ急ぎましょうか。

 ただ、前来た時はもう少し先でアンブッシュされたから、一応気を付けてね」

文乃がこちらへ来てから初めて陥った命の危機が、ここで起きたコボルトによるアンブッシュだった。

ファビオの話だとコボルトレンジャーの可能性が高いとのことだった。

「統率してる感じは無かった、って言ってたもんねー。

 しかし40匹以上いてリーダー種が居ないってのは、やっぱちょっとおかしいよね・・・

 他の所も似たような状況だったみたいだから、なんらかの原因がありそう」


そんな話をしながら溜池の反対側まで辿り着く。

文乃たちの回った右側には、これと言った痕跡は見つからなかった。

ジャン達のチームはまだ来ていないようなので、アンナはこの辺りの調査も始める。

「んん?んーーーー?」

溜池へと水を引き入れている水路の回りを調べていたアンナが首を傾げる。

「どうしたの?」

「これ、多分コボルトが歩いた跡だと思う。

 だいぶ下草が伸びて来てて分かり辛いかもだけど、背の低い木の枝が不自然に折れてる」

そう言われてよく見てみると、確かに水路の脇の枝が不自然に折れている。

幅は2m程で、上流側へとずっと続いていた。

「折れたり曲がったりしている向きが、全部上流からこっち向きだから、行き来したんじゃないね」

「なるほど・・・少なくともこの上流からコボルトが来たのは間違いなさそうね。

 どこまで遡ってるか分からないけど、ジャン達と合流したら上流方面を調べてみましょう」

ほどなく合流した一行は、水路沿いに上流へと足を向けた。

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