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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ
11章:異世界広告代理店編

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◆138話◆テラスでの戦い その1

その人物を視界に入れた途端、その人物からの矢印が太一の目に飛び込んでくる。色は黄色。こちらを警戒している色だ。

そうこうしている間に、その人物からさらに矢が放たれる。

「くそっ!文乃さん、捉えた!1時の方向距離およそ100。あの建物の上にいる!!」

「了解!!」

言われた方向を確認すると、即座に矢を番える。

「見えた!射るわっ!!!」

そのまま手元が霞んで見えるほどの速さで3本の矢を連射する。

調整も何もしていない弓での早撃ちながら、2本が見事相手に命中し、倒れるのが見えた。

こちらにも最初に飛んできたものと合わせて3本の矢が飛んできていたが、幸いにして盾で弾くか誰もいないテラスに転がっていた。

飛んできた矢を確認しようと、太一が転がっている矢に手を伸ばした瞬間だった。

鏃に付いていたと思われる黒い宝石のようなものが割れた中から、黒紫色の光が溢れ出す。

「なんだっ!?」

慌てて手を引っ込める太一。


溢れ出た不気味な光は、やがて幾重もの弧を描くように漂うと、空中に魔法陣のようなものが浮かび上がる。

それを見た太一と文乃は驚愕に目を見開く。

「文乃さんあれって・・・」

「似てるわね、例のじーさんの時のヤツに・・・」

小さな声でそんなやり取りをしているうちに、他の2本の矢からも同じような光が魔法陣を描く。

皆が驚愕の表情で見ていると、魔法陣の中に人影のようなものが見えた。

はっきりとは分からないが、人であるならかなり大柄だ。3mには届かないが、2.5mほどあるだろう。

その影が、徐々に実体を現していく。

「ま、まさかっ・・・!!!」

ワルターの表情がさらに驚愕のものへと変わっていく。

「文乃さん、撃っちゃって!!!どう考えてもロクなもんじゃない!」

「分かったわ!!」

言うが早いか、1体の影に向けて文乃が矢を射る。

しかし・・・

「なっ!すり抜けた!?」

「くそっ、実態を現すまでは干渉できないのか?なんて都合の良い・・・

 文乃さん、まだ矢はある?」

「15本ってところね」

「残り10になるまで、定期的に射ってもらって良い?当たればラッキーだ」

「分かったわ」

「ワルターは何本矢が残ってる?」

「・・・あ、ああ・・・」

「おい、ワルター!どうしたっ?」

「オ、オーガだ・・・なんでこんな所にオーガが・・・」

驚愕の表情のまま、呟くようにそう零すワルター。


「オーガだって!?」

その間にも、影の実体化はどんどん進んでいき、はっきりとその威容が確認出来るに至る。

オークよりもやや細身ながら、十分筋肉質で二回りは大きいそれの頭部には、特徴的な二本の角があった。

3本射ってすり抜けていた文乃の矢が、4本目にしてついにその頭部に突き刺さった。

その瞬間

『ガアァァァァァーーーーッ!!!!』

咆哮と共に、空中から現れたそれがズシン、とテラスに降り立った。

「文乃さん、顔面に集中砲火!!!!

 ワルターさんは、あの建物の上で倒れてる奴の回収に向かってくれっーー!!」

言い終わる前に、剣を構えた太一が滑るように最初に実体化したオーガへと切り掛かっていった。


右目のやや上に矢を受けたオーガは激高していた。

実体化したと思ったらいきなり矢が刺さっていたのだから無理も無い。

金属製と思われる棍棒を振り回そうと振り被る。

そこへ再び、狙いすました文乃の矢が飛んで来る。

アジャストを終えたのか2本の矢が立て続けに右目へと突き刺さった。

『ゴガァァァァッッ!!!!』

激痛に吠えながら刺さった矢を引き抜くと、思い切り金棒を横薙ぎに振り回した。

「そんな大振りでっ!!」

金棒と地面の間を身を屈めてすり抜けた太一は、そのままオーガの足の間をすり抜けざまに左膝の内側を思い切り斬りつける。

まるでゴムタイヤを切ったような感覚に顔をしかめつつオーガの背後へ抜けた太一の後ろで、ドオンという派手な音を立ててオーガが倒れ込んだ。

どうやら先ほどの一撃は、しっかりダメージを与えていたことに太一は安堵する。

先のオークとの戦いで、妙に硬かったことを覚えていたため、防御の薄そうな部分に対しても力を込めてしっかり斬りつけたのが奏功したようだ。


「止めは任せますっ!!」

ようやく状況を把握し、臨戦態勢を整えつつある近衛騎士にそう告げると、残り2匹に目をやり戦況を素早く判断する。

現在このテラスにいるのは、国王陛下、宰相、近衛が6人+ピアジオ、ピアジオと一緒に武器を持って来た騎士が2名、それに自分と文乃だ。

近衛騎士の役目はただ一つ。国王を守ることだ。少なくとも4名は王の回りを囲まねばならない。

大事を取るなら6名だが、守勢に回り過ぎても攻勢部隊が抜かれた後ジリ貧になるので、中々悩ましいところだ。

そうなると、太一、文乃、ピアジオ、そして騎士2名で、無傷のオーガを後2匹相手取らなくてはならない。

援軍が来るかもしれないが、いつになるか分からない援軍を当てには出来ない。

そう考えていると、国王から声が掛かる。

「タイチよ!この場の指揮権は、余の名において其方に任せる!存分の槍働きに期待しておるぞ?」

「っ!!!は、拝命しました!!」

こんな状況だというのに、王はまたしてもニヤリと口角を上げる。

「そうだタイチ。ユリウスはこう見えて結構な魔法の使い手だ。

 戦力に加算して、精々扱き使うが良い!」

「陛下・・・」

右手で額を抑えながらユリウスがかぶりを振る。

「まったく・・・タイチ殿、私は風と土の魔法が専門です!何かあればご用命を」

「分かりました!」

思わぬところで戦力が増えた。しかも貴重な魔法使いだ。

あらためて策を練り直すと、早速指示を出す。


「まず近衛の方6名は、陛下をお守りしながら手負いのオーガに確実に止めを刺してください!

 その後は引き続き陛下の警護を最優先にお願いします!」

「「「「はっ!」」」」

「ピアジオさんと私、それと文乃さんで右側のオーガをやります。作戦は後で。

 宰相閣下と、騎士の方2名は左側のオーガの足止めをお願いします!

 騎士の方が牽制しつつ時間を稼ぎ、その隙に宰相閣下のストーンウォールやディグの魔法で動きを止めてください」

「「ははっ!」」

「なるほど。了解しました」

「文乃さんは引き続き目を狙って欲しい。ある程度警戒してるだろうけど、文乃さんの速さなら抜けるはず。

 あ、右側だけじゃなく左側のヤツにも多少散らしてくれると助かるかな。

 それと、矢は使い切らず、保険で2本残しておいてほしい」

「分かったわ」

「ピアジオさんは、俺と一緒に突っ込みます。

 どちらかが攻撃されている時に、攻撃されていない方が隙をついて攻撃する感じで。

 ぶっつけなんで、あまり複雑な連携は無理でしょうし・・・」

「確かにそうですね」

「あと、かなりアイツら外皮が堅いんで、斬るより突いた方が良いかもしれません。

 切る場合は、さっきみたいにきちんとした間合いじゃないと切れないと思います」

「承知した」

短く作戦を伝えている内にも、後方で実体化した2体のオーガがこちらを視認、向かってきていた。


「さて、いつまでも話してる訳にも行かないですね。

 文乃さんの射撃と共に作戦開始です。よいですか??」

「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」

「分かりました」

「了解です」

「では・・・5秒後に撃ちます。4、3、2、1・・・」

シュッ、という風切り音と共に、左右のオーガにそれぞれ2本ずつ矢が向かって行く。

それを合図に、皆が一斉に動き出す。

こうして、テラスでの戦い第二ラウンドのゴングが鳴った。

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― 新着の感想 ―
風と土の魔法が専門なら砂を出して風で吹きつければ。目に砂が入ればラッキー、入らなくても砂から目を守る為に攻撃は減るはず。
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