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万年課長の異世界マーケティング ―まったり開いた異世界広告代理店は、貴族も冒険者も商会も手玉に取る  作者: ぱげ


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109/173

◆109話◆天啓

気付いたら、連載開始から1か月経ってました!!

評価、ブックマークありがとうございます!

ロマーノの言葉の意味を計りかねるユリウスとレイバックの2人が顔を見合わせた。

いや、言っていること自体はごく簡単なことなので、もちろん意味は分かるのだが・・・

長年王国の中枢で、腹黒い貴族とやりあってきた経験が、言葉通りの理解をすることを拒む。

訝しげな表情で、ユリウスがロマーノに問う。

「・・・ロマーノ、それはどういう意味かな?

 何かしらの謎掛けでは無いのなら、近々起きる災害を予言した、という風に聞こえるのだが・・・?」

対するロマーノも、渋い顔で答える。

「ユリウスがそう言いたくなる気持ちはよく分かるぞ・・・

 儂とて最初に聞いた時はそう思ったし、今も客観的に見たら馬鹿馬鹿しいことを言っている自覚くらいはあるからな・・・」

「ロマーノ様、その仰り方ですと、ロマーノ様も人伝にこの話はお聞きになったのですか?」

レイバックが気になった所を聞き返す。

「うむ。つい先日、タイチから聞かされたばかりだ」

ロマーノはゆっくり頷くと、隣に座る太一を見ながらそう答えた。


「タイチ殿が、ですか・・・」

レイバックはそう言ったきり動かなくなる。

ユリウスも眉間に皺を寄せて目を瞑ったまま動かない。

しばらくの間、執務室を沈黙が支配する。

数秒か数分か・・・沈黙を破ったのはユリウスだった。

「ロマーノ。タイチ殿の言ったことをお前が信じ、さらにそれを私達にも信じろ、という事になるが間違いないか?」

鋭い目つきでロマーノを睨みながら問い質す。

「無論、そう取って貰って構わぬ」

ロマーノも少しも動揺を見せずにユリウスの目を見ながらそう答えた。

「・・・・・・そうか。であれば、私は何も言うまい。話を聞かせてもらおう。

 レイバック殿はどうされますか?」

「私も聞かせてください。普通であれば“ご冗談を”で済ませるお話ですが、そうでは無さそうなので・・・」

「分かりました。ではロマーノ、詳しく教えてください」

ユリウスに水を向けられたロマーノは、太一と頷きあうと、ゆっくりと話し始めた。


「まず儂が、タイチの言う事を信じるに至った経緯を話そう」

「そうですね。まずはそこが一番気になるところです」

「ただし、このことは内密に頼む。たとえ陛下に対してであっても、当面は秘匿して欲しい。それが守れるか?」

鋭い目つきでユリウスとレイバックを見据えて確認をする。

「・・・陛下にも、とは穏やかでは無いですね」

「分かっておる。だが、それを約束して貰わねば、話すことは出来ん」

「これから話すことを知っているのは、他に?」

「・・・。儂の家族とツェーリ様くらいだ」

ユリウスもじっとロマーノの目を見据えたままだ。

「分かった。誰にも言わぬと誓おう」

「私も誓います」

「すまんな・・・」

と一拍置いてからロマーノが再度話を始める。

「このタイチはな、加護を授かっておる」

「なんと・・・!」

「それは・・・!!」

「そしてその加護だがな、どうやら天啓を得られるスキルのようなのだ」

「天啓??」

「ああ。そうだな、タイチ」

「はい・・・」

神妙な顔で首肯する太一。もちろん嘘である。

しかし、二つのスキルがあることが露見するのも避けたい。

そこで太一と文乃、そして辺境伯一家が考えたカバーストーリーが、天啓に近いもの、というものだった。


「まだ加護があると分かってそれほど時間が経っていないので、正確な所は分からないのですが・・・」

そう前置きして太一が話し始める。

「物心ついた頃から、夢で見たちょっとした出来事が、その後実際に起きる、と言う事がたまにありました。

 ただ、夢で見たことは翌日には忘れていることも多いですし、皆に聞いても偶にある、と言っていたので全く気にしていなかったんです」

「ああ。夢魔の悪戯だな」

夢魔の悪戯。この世界でもいわゆるデジャヴに似た現象は起きるようで、夢魔の悪戯と呼ばれている。

「はい。ところが田舎から出て来て、冒険者ギルドでギルド登録した際に、加護を授かっていることが分かりました。

 オネイロスと言う神の加護で、時々正夢を見ると言うスキルです」

「正夢を見るスキル・・・それが本当であれば、正に天啓と言っても良いですね・・・」

驚きの表情でユリウスがそう評する。夢で未来を見れるということなのだから、確かに天啓と言って良いだろう。

「ええ。もっとも、どういう基準でいつ見るのかは全く分からないんですが・・・

 それに、依然として普通の夢も見るので、どれがスキルの対象のものなのかは、まだハッキリしないのです。

 ただ最近は何となく、スキルの対象である夢が、分かり始めた感じですね」

「なるほど・・・。まだ完全に判断することは出来ない、と・・・」

「そうなりますね。今回の水害の夢は、おそらくスキルの対象だとは思うのですが、絶対という保証はありません・・・」

「これは中々、判断に困る事案ですね・・・」

ユリウスの眉間の皺が、どんどん深くなっていく。

それも無理はないだろう。

確かに無視できない重大な事案であることは間違いない。

何しろ本当だった場合、国の一部が大きな被害に遭うのだ。しかもその場所が、国防の最重要地域の1つと来ればさもありなん。

しかしその反面、一国の宰相が個人の“おそらく”を判断材料として、そんな重大事項に関する判断を下して良いものなのか。

そんな葛藤に苛まれ、すぐには結論を出せない。


そこでロマーノは、あらかじめ用意していた切り札を切ることにする。

「ああそうだユリウス。例のオークだがな、実はあれもタイチの見た夢だ」

「なにっ!!?」

「なんとっっ!!?」

恐らく今日一番であろう驚きの声を上げるユリウスとレイバック。

「加護絡みだけに、これもツェーリ様以外には言っていないがな。

 まぁ普通に考えれば、雨の日のあんな場所に、偶々居合わせることなぞまず無かろう? 出来過ぎとは思わぬか?

 ダレッキオ家は、タイチの加護に助けられたのだ。それ故、今回の件も信じることにした。

 そもそも考えても見よ。タイチが嘘を言っても何も得が無い。

 いや、むしろおかしなことを言う奴だとマイナス評価になるだろうから、黙っていた方が得だな。

 たとえ黙っていて本当になったとしても、別にタイチの腹は痛まんからな」

普通は防げないことが太一の加護で防げた、という前例が有るのと無いのとでは、説得力が段違いだ。

それに、人は前例が無いものは信じようとはしないが、いざ前例があると掌を返したように信じてしまう。

今回も効果は抜群だ。


更に畳みかけるように、タイチが提案をする。

「しかし、たとえ信じていただけたとしても、それを馬鹿正直に全て公開していただくのも問題があります。

 そんな事をしてしまえば、もし本当だったら私は預言者として祭り上げられますし、外れたら戦犯として血祭です。

 そもそも国として、一個人のあやふやな情報だけで動くのはリスクが高すぎます・・・

 そこで、一部のみを公表して、最悪な事態だけは避けられるよう、ご協力をいただきたいのです」

「なるほど。しかしどうやって発表するおつもりですかな?」

食いついた、とタイチは内心ガッツポーズをする。

初めは高いハードルを掲げた後に、それよりはリスクの少ない提案を行う。

交渉事の初歩的なテクニックではあるが、使い方を間違えなければ効果は高い。

「まず、近い内に大きな嵐が来る、ということは公表したいと思います」

そして太一は、用意していた筋書きを話し始めた。

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