◆100話◆ケットシーの鞄のバージョンアップ
ついに100話到達!
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異世界は猫と共に ~システムエンジニアは失われた古代の魔法理論を解析し、魔法具界に革命を起こす
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ワイアットに試作をお願いして3日が経った。
その間にも2回、西の森へ繰り出し採集を行っているが、幸いにもあの日以降クリムゾンベアには遭遇していない。
今日がその2回目の採集実施日で、太一達一行は報告を終えた後、珍しく黒猫のスプーン亭で食事をとっていた。
「しっかし、あっという間に最低保証は稼いじまったな・・・
稼げるとは思ってたけど、月の後半になると思ってたんだがなぁ」
エールを飲みながら、ワルターがしみじみと言う。
「ほうれふね。ほんはにはへへふほは・・・」
リスのように頬をパンパンにさせたレイアがコクコクと頷きながら何か言っている。
「・・・レイちゃん、せめて口ン中のもん飲み込んでから喋ろうぜ」
苦笑するワルター。詰め込み過ぎたのか、慌ててレイアは水を飲んでいる。
「んむぐ・・・ふぅ。
いやぁ、あまりにここの料理が美味しかったんで。てへへへ。
でもほんとワルターさんの言う通り、こんなにすぐ稼げるとは思ってもみませんでした」
「うむ。まだ2種類だけでこれだからな。
同じような場所で採れる物が増えれば、さらに効率も良くなろう。
程々に魔物も出る故、体が鈍らないのも良い」
赤ワインを飲みながらモルガンも満足げだ。
モルガンの言う通り、西の森での採集中には、ちょくちょく魔物に遭遇していた。
初日はクリムゾンベア以外ほとんど魔物に会わなかったが、あれは異常事態だったのだろう。
フォレストボアやゴブリンを何度か仕留めているため、レイアのランクポイントもE級が射程に入って来た。
「順調なようで何よりじゃないか。
張り切って魔物を倒すような年でもないんだ、ほどほどが一番だよ」
「まぁなぁ。そういうタバサはどうなんだ?何でも屋をやり始めて10日くらい経つだろ?」
「こっちも驚くほど順調だねぇ。常連が出来たのには、ちょっと驚いたけどね」
「常連?値段が高いのにか?」
「ああ。Cランクの連中だよ。多少高くても、必要なもんはなんでも揃えられるだろ?
だから、試しに予約を取って見たんだよ。他にも言ってくれりゃまとめて売ってあげるよ、って。
そしたらそれが妙にウケちまってねぇ」
商品の事前予約が入るようになった。これには太一も驚いた。
そのうちフォロワーが出てきたら、予約と配達を導入するつもりだったのだ。
それが、タバサが自ら考えて予約を取るようにしたのだ。
普通に商品のラインナップを広げると、不良在庫になる可能性がある。
絶対的な商品点数が少ない今のビジネスモデルでは、回転率の悪化は致命傷となる。
しかし予約制ならば何も問題が無い。朝しか店を開けないため、仕入れも余裕だ。
太一と文乃が冒険者兼業で回していたら、仕入れをする時間が無かったのだが、タバサにお願いしたことでそれも解決されている。
意図してか否かは分からないが、中々の商才だろう。
「タバサさんに店を任せて良かったなぁ、やっぱ。
あ、無理なく売り上げが増えたら、その分は歩合にするから、引き続きお願いね」
「おや、歩合にしてくれるのかい?そりゃ有難いねぇ」
「そりゃするよ。自分で考えて結果も出てるんだもの。
あー、でもこれから予約が増えると仕入れが大変になるか・・・。
もう一人雇う?んで、夜の部もタバサさんに全面的にお願いする、と」
「ふむ。それも悪か無いね。
夜の部をやるなら、腕っぷしの強そうなのを雇いたいね。
賭け事だし夜は酒も入るからね。あたしのようなか弱い乙女だけだと絡まれるかもしれないし」
どの世界でも、やはり賭け事と用心棒はセットなのだろうか。
「確かになぁ。熱くなってなきゃ、タバサさんに喧嘩売るようなバカはそうそういないだろうけど。
ちょっと冒険者ギルドで相談してみるか」
「ダレッキオ辺境伯に口利きをお願いしても良いかもしれないわね。
腕っぷしが強いだけだと商売には向いていないから、ある程度学のある人ってなるとね・・・
辺境伯なら元冒険者だし、色々と伝手がありそうじゃない?」
「うん、文乃さん、それだわ。ちょっと聞いてみるよ。顔出したら喜ぶだろうし」
「ああ、そうだ。夜の部の話が出たからついでに。
絵合わせなんだけど、ちょっと手を加えようと思ってるから意見を聞かせて欲しい」
「お?それまた金の匂いがしそうだが・・・何を変えるんだ?」
「今のはそのまま残しておいて、掛け金を2倍にしてサイコロを4つに増やしたやつを追加しようと思ってる」
「なるほど。掛け金が2倍ってのは分かるぜ。単純に当たった時の儲けが増えるからな。
まぁその分負けた時の損もでかい訳だが・・・。
で、サイコロを増やすのはなんでだ?何か意味あるのか?」
「サイコロ3つと4つ。全部同じ絵を揃えるのは、どっちが簡単だと思う?」
「あん?どっちって、同じじゃ・・・いや、同じじゃないな。
今までだったら3個同じのが出て終わりだったのが、さらにもう一つも同じじゃないと駄目だから・・・」
「その通り。4個になるとさらに難しくなるんだ。
その代わり、全部同じだった時の賞金を今の10倍から30倍に増やす」
「おいおい、30倍も出して大丈夫なのか?サイコロは1個しか増やさないんだろ?」
「それだけじゃない。3つ同じだった場合にも3倍の賞金、全部バラバラだった場合にも1.2倍の賞金を出す」
「まだ賞金が出るのか?そりゃ金がある程度あるヤツは、掛け金が倍でもそっちをやるだろ」
「そうですね。私もお金があったら4個の方をやると思います」
「なんでだ?」
「え?なんでって・・・サイコロが一つ増えただけなのに、賞金が3倍なんですよ!?そっちの方が得じゃないですか」
レイアの言葉に、太一はニヤリと文乃を見る。
「やっぱりまだ確率論は成立してないね。
いいか、ワルター、レイア。サイコロ4つで全部同じ絵を揃えるのは、サイコロ3つより6倍難しいんだ」
「えっ!?」
「なんだと!?」
太一の言葉に、絶句するワルターとレイア。話を聞いていただけだったモルガンとタバサも目を丸くしている。
「そうやって、得なように見えるのがポイントなんだよ。
ちなみに他の賞金を合わせても、サイコロ4個の方が儲かる計算だ」
「マジかよ・・・。どういう理屈か分かんねぇけど、えげつねぇな、リーダーは」
「どうなるか不安だったけど、この感じなら大丈夫そうだな。
まだしばらくは今のままで行くけど、もうちょっと後か、真似する奴が出てきたら、サイコロ4個版を投入しよう。
あんまやりすぎると大変なことになるし、賭け事で大金を儲けようとは思ってないから、この程度にしてるけど、やろうと思ったらもっとアコギなことも出来る。
皆も賭け事は程々にな」
悪い顔で言うタイチに、文乃は呆れ顔で、他のメンバーは神妙に頷くのだった。
サイコロ3つのぞろ目は約3%、4つのぞろ目は約0.5%です




